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より良い意思決定を行うための「WRAP」プロセスを使ってみる

Warp
 

「決定力!」って本を読みました。著者は「アイデアのちから」と「スイッチ」でおなじみのハース兄弟。前2作はかなりの名著でしたが、これもやっぱり面白かった。この兄弟は面白い本しか書けない病気なんでしょうな。

 



 

 

より良い意思決定をジャマする4つの敵

この本のテーマは、ずばり「より良い意思決定の方法」。意思決定に関しては私たちの脳は欠陥品!専門家の分析も当てにならない!と言い切ったうえで、ハース兄弟はより良い意思決定のジャマをする4つの敵をあげます。



1・視野の狭さ
選択肢の幅を実際よりもせまく見積もってしまう傾向のこと。別の選択肢があっても視野が狭くて見逃しがち。



2・確証バイアス
いったん「こういうことだ!」と思ったら、その考え方にマッチしたデータばかりに注目してしまう傾向。集まるデータに偏りが出るので、どんなに細かく分析しても時間のムダになっちゃう。



3・一時の感情
難しい状況になるほど、一時の感情が強くなってしまう傾向のこと。感情に引きずられて、間違った選択をしがち。



4・自信過剰
たいていの人は、実際の能力よりも「自分は正しい決断ができる」と思い込んでいる。



うーん、どれも耳が痛い。どの問題も、自分が罠にハマってることにすら気づけないあたりが難しいっすね。

 

 

より良い意思決定を行うための「WRAP」プロセス

では、意思決定をジャマする4つの敵を倒すにはどうすべきか? ここで登場するのがハース兄弟の読者にはおなじみのゴロ合わせ。今回は「WRAP(ラップ)」なるプロセスにまとめられてます。



例として「13,800円の新しいiPhoneガジェットを買うべきか?」という、いま私がまさに直面している問題に適用してみましょう。




1・選択肢を広げる Widen your options
ハース兄弟によれば、「13,800円の新しいiPhoneガジェットを買うべきか?」という問いの立て方がそもそもの間違い。「買う」と「買わない」の2択しかないので、自動的に視野がせまくなっちゃう。



そこで本書のテクに従って問いを広げてみると、「13,800円を他のことに使うべきか?」って感じになる。本なら10冊は買えるし、映画も7〜8本は見られちゃう。ひょっとしたら、そっちのほうが有効な使い方なんじゃないか、と考えてみるわけですねー。



もちろん、選択肢を広げれば必ず大丈夫!とはいきませんが、ハース兄弟いわく「二択で決めた際の失敗率は52%だが、選択肢を広げると32%にまで下がる」ことがわかっているとか。これは試してみるしか。




2・リアリティテスト Reality test your assumptions
新しいiPhoneガジェットを買うとき、大抵の人はいろんなサイトのレビューをチェックすると思います。この際、ついつい良いことしか書いていないレビューばかり見てしまうのが確証バイアスの罠。



例えばAmazonのレビューだったら、☆が1つのものも読んでみる。それがヒドいレビューだったとしても、何かしらのヒントは得られたりする……かも。



他にも、ちょっと客観的になって「このガジェットを買ったうちの何人が、実際にダイエットに成功して健康になれるか?」を想像してみるのも良い方法とのこと。




3・いったん距離を置く Attain distance before deciding
デザインがかっこいいiPhoneガジェット!超欲しい!」と思っても、即断せずにとりあえず待ってみる。もし親友がフィットネスに興味を持ったととき、このガジェットを勧めるかどうか?を想像してみるのもアリ。




4・失敗に備える  Prepare to be wrong
これだけ熟考しても、決断が失敗に終わるのはよくあること。そこで、あらかじめ「最悪の結果」と「最高の結果」を想定し、その幅のなかで13,800円という価格はどのレベルの結果が出れば妥当かを考えておくとよし。



この意味では、私にとって「最悪の結果」は「今よりも不健康になる」ことなので、少なくとも13,800円を払う選択は「最悪」ではないってことになりますか。当たり前ですが。

 

 

まとめ

さすがハース兄弟といいますか、いつもながら大量の研究をよくここまで実用的にまとめたもんだなと思います。WRAPプロセスを知ってるだけでも、決断の際の指針ができて心理的に超ラク。



上で取り上げた技術の他にも、本書ではさまざまなテクニックを扱ってますので、興味がある方はぜひご一読を。前作の「スイッチ」とも一部でテーマがかぶってますんで、あわせ読みするとさらによさげ。

 

credit: Judy ** via FindCC


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。