ポジティブシンキングで人生をムダにしないための5つのポイント
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どうもポジティブシンキングが苦手でして。
「ポジティブシンキングを勧める人=うさん臭い人が多い」ってイメージもありますが、何より自分の性格的に無理やり明るいことを考えるのがムリ。そこで読んでみたのが、オリバー・バークマン「解毒(The Antidote)」という本であります。
正統派のポジティブ心理学の研究をもとに、世にはびこる安直なポジティブ自己啓発をディスっていく内容で、根暗で人見知りな私には胸のすく一冊。本書からポジティブシンキングを「解毒」するためのポイントを5つまとめてみました。
1・ポジティブに考えてはいけない
「どんな時もポジティブに!」は自己啓発の基本であります。が、心理学者ダニエル・ウェグナーの「シロクマのリバウンド効果」によれば、ネガティブな思考や感情を無理やりポジティブに変えるのは逆効果。ネガティブから目をそらそうとすればするほど、否定的な感情に頭が支配されることが立証されております。
参考:シロクマのリバウンド効果(皮肉なリバウンド効果)|ブログ|税理士吉田久子事務所
この現象をクリアするためにバークマンがオススメするのが仏教の考え方。ネガティブな感情や思考をおさえつけずに、そのまま認めて波が去るのを待つという2,500年前にお釈迦さんが開発したメソッドであります。当ブログでも何度か書いている「マインドフルネス」に通じるテクニックですねー。
参考:1回20分の瞑想を週に4回やるだけでも脳の機能は良くなるようだ
2・大きな夢や目標を持ってはいけない
「目標を設定しろ!」「大きな夢を持て!」なんてのもよく聞く話ですが、これまた逆効果。有名なのは2009年にハーバードビジネススクールが出した論文で、これによると目標設定は視野を狭くするし、モラルを下げちゃうし、モチベーションも低くするしで、もうケチョンケチョン。バークマンによれば、エベレスト登山で遭難するケースの大半が「目標設定にこだわりすぎた」のが原因なんだそうな。さらに言うなら、目標設定にこだわる人は「夢にあふれてる」わけじゃなくて、単に「先行きが見えない不安」に動かされているケースが多いのも問題。根っこの動機が“不安”なので、目標設定をしても逆に創造性が縛られるだけ。
3・仕事を楽しもうとしてはいけない
「情熱を持って仕事を楽しもう!」などとよく言われますが、楽しくもないのに無理やり楽しもうとしてもムダ。やはり「シロクマのリバウンド効果」が起きて、仕事のつまらなさが際立っちゃう。どうしても情熱が持てないときは、まず「仕事への情熱がない自分」を細かく観察したうえで、“それはそれとして”仕事を進めるほうが得策。これもお釈迦さんのテクニックの応用ですね。
4・自尊心にこだわってはいけない
「自信を持て!」は自己啓発の定番フレーズですが、「自尊心」という概念自体に疑問を持つ心理学者も少なくないとか。そもそも自尊心の高さにこだわると、失敗を許さない心持ちにおちいりがちなうえ、自信を保つための努力でメンタルがすりきれてしまいがち。論理療法の創始者であるアルバート・エリスは、 自尊心を「感情を乱す最悪の敵」と呼んだうえで、「あくまで行動と自己を切り離しつつ、それぞれの行動が良かったか悪かったかを考えろ!」と説いたそうな。納得。
5・ネガティブな人を避けてはいけない
「ネガティブな人からは距離を取れ!」「ドリームキラー(夢に否定的な人)を近づけるな!」なんてこともよく言われますけど、これはかなりのミスリーディング。心理学者のジュリー・ノーレム博士によれば、最悪の状態を考えることで逆に未来に対する不安は減るので、必ずしもネガティブ思考が悪いわけじゃない。これは「防衛的ペシミズム」と呼ばれる現象で、セネカやエピクテトスといった古代ギリシャの哲学者たちも使ったテクニック。
あと「防衛的ペシミズム」は、ビジネスの世界では「エフェクチュエーション」って名前で理論化されていて、事業が成功するかどうかより「どれだけ失敗に耐えられるか?」を最初に考えた方がいいんだそうな。知らんかった。
念のためのまとめ
そんなわけで、ポジティブ思考の副作用についてまとめましたが、一方でポジティブな態度がもたらす利益を立証した研究もたくさんあるので念のため。この本が攻撃しているのは、あくまで威勢のいいフレーズでテンションを上げて、一時的になんだか凄いことができそうな気分にさせるだけの「アドレナリン産業」であります。
私のイメージでは、アンソニー・ロビンズがセミナーでやってる「火渡り」とかが典型例(笑)
性格的に向いていない人が、こういったタイプのポジティブに振り回されないようにしたいものです。