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ポジティブ思考は成功のチャンスを減らしてしまう



ちょっと前にThe New Yorkerに出た「ポジティブシンキングの無力さ」ってエッセイが面白かったのでメモ。 

 

 

以前にも紹介したオリバー・バークマン「解毒(The Antidote)」に書かれていた、



将来にたいして楽観的な態度を保ちつづけようとすると、ものごとが上手くいかなかったときのショックが大きくなる。ポジティブ思考な人は事前の準備をおこたりがちで、よりストレスを感じることも多い。



という指摘をもとに、過去に行われた3つの研究を紹介する内容になっております。これら実験によれば、ポジティブ思考は成功のチャンスを減らしてしまうそうな。


ポジティブ思考な人ほど給料が低い

1件めは2002年の論文[1]。ニューヨーク大のエッティンゲン博士が、83人の学生たちに卒業したあとのキャリアをポジティブにイメージしてもらったんですな。で、2年後にふたたび調査をしたところ、ポジティブなイメージをした学生ほど企業からの求人が少なくて給料も低かった、と。



おもしろいことに、この現象はほかの場面でも起きていて、ポジティブだった人ほど非モテだし、大学の成績もよくないし、ケガからの回復も遅かったんだとか。さんざんな結果っすね。

 

ポジティブ思考な人ほど目標を達成できない

2件めは2011年の論文[2]。研究者が学生を2つのグループにわけまして、一方のグループには「最高の週末」を想像してもらい、もう一方には「普通の週末」を想像してもらったんですな。



1週間後、学生たちを再調査したところ、「最高の週末」を想像した学生ほど、設定した目標をこなせなかったらしい。研究者いわく「ポジティブ思考は、あたかも自分がゴールに近づいたかのような感覚をあたえてくれるんで、逆に目標を達成するモチベーションが下がっちゃう」のが原因。以前にも取り上げた、ハーバードの「目標設定は悪影響だ!」って論文と同じことを言ってますね。



ポジティブな時代には経済が悪化する

で、3件めは、ニュースサイトでも騒がれた2014年の論文[3]。2007年から2009年の新聞報道を調べたら、ポジティブな経済予想が載ったあとは株価が下がり、ネガティブな予想のあとは株価が上がる傾向があった!っていうすごい研究であります。ここまでマクロな話だと、さすがに変数が多すぎてうのみにできない感じですが、それでもかなりおもしろいデータですね。



まとめ

そんなわけで、ポジティブ思考がボロボロな結果に。まぁ研究者いわく「ポジティブシンキングは一時の痛みをやわらげる役になら立つかも?」とのことで、「◯◯で人生が変わった!」とか「本気で願えば成功する!」とか主張するビジネス書や自己啓発本は、いっときの鎮痛剤がわりに読まれているんでしょうかね。痛みを散らすだけで原因物質は消さないという点で、貼り薬におけるサリチル酸メチルみたいなものですな(わかりにくい例え)。



関連記事



参照
  1. Gabriele Oettingen, et al. The Motivating Function of Thinking About the Future:Expectations Versus Fantasies (2002)
  2. Gabriele Oettingen, et al. Positive fantasies about idealized futures sap energy. (2011)
  3. Gabriele Oettingen, et al. Positive Thinking About the Future in Newspaper Reports and Presidential Addresses Predicts Economic Downturn. (2014)

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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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