「日焼け止めが皮膚がんの原因に!」はどこまで正しいのか?
日焼け止めと皮膚がんに関するご質問をいただきました。
いつも興味深くブログを拝見しています。鈴木さんも日焼け止めについて書いていましたが、こんな記事を見つけました。
日焼け止めは危険!皮膚がん、ホルモン異常、生殖機能低下の恐れ
日焼け止めのガンの危険性があるというのですが、鈴木さんはこの記事に関してどう思われますか? ご意見を聞かせてください
とのこと。日焼け止めの成分が皮膚がんを引き起こす!って話ですね。
北緯40度より上に住む人は日焼け止めで皮膚がんの発症率が上がる
まずは上の記事中にあった「パラアミノ安息香酸」と「プソラレン」ですけども、どちらも普通に使うぶんには問題ないと思います。なにせ、どちらの成分も「マウスの肌に大量に塗ったらヤバかった!」ぐらいの話でして、ヒトの肌に使って皮膚がんが増えたってデータは出てないんですよ。
なので、そこらへんに関しては心配しなくていいんですが、かといって「日焼け止めは問題なし!」ってわけでもないのが難しいところです。
ここで紹介したいのが、2007年の論文(1)。日焼け止めユーザーを対象に、メラノーマ(悪性の皮膚がん)の発症率を調べた研究であります。過去に出た18件の実験をまとめたメタ解析でして、かなり信頼性の高いデータになってるんですね。
その結果は、
- 北緯40度より上の地域に住む人は、日焼け止めを使ったほうが皮膚がんは起きやすくなる
- 赤道に近い地域になるほど、日焼け止めを使ったほうが皮膚がんは起きにくくなる
なんと、地域によって日焼け止めと皮膚がんの関係が真逆になっちゃうんですね。日本で言えば、秋田県秋田市がだいたい北緯40度。ちなみに、このデータでは人種の差もちゃんと考慮に入ってまして、肌の色は皮膚がんの発症率と無関係であります。不思議ですねぇ。
住む地域によって日焼け止めの効果が変わる理由
では、なぜ住む地域によって日焼け止めの効果に差が出るんでしょうか?
ご存じのように、紫外線はUVAとUVBの2種類にわかれております。どちらも皮膚がんの原因にはなるものの、UVAのほうがメラノーマの発症率は大きいんですね(2)。ところが、たいていの日焼け止めはUVBのブロックがメインで、UVAを防ぐ効果は甘かったりします。
また、本来ならUVAは日焼けによって防げるんですが、日焼け止めを塗ってしまうと肌が黒くならないため、UVAのブロック効果はさらに低くなっちゃう。その結果、日焼け止めを塗るほどUVAが吸収されてしまう現象が起きるんですね。
ただし、赤道の近くは日差しが強く、このエリアに住む人たちは自然と肌が黒くなりがち。そのため、もともとUVAに対する備えができるので、結果として日焼け止めを使ったほうが皮膚がんの発症率は低くなるわけです。
いっぽうで緯度が高いと日差しが弱いため、肌が白いまま日焼け止めを塗るケースが多め。そのせいでUVAを多く吸収してしまい、皮膚がんの増加につながっちゃうんですね。
日焼けによる皮膚がんを防ぐためには?
以上の話をまとめると、
- 皮膚がんはUVBよりもUVAによって起こりやすい
- しかし、日焼け止めはUVAのブロック効果は低い
- ある程度は肌が黒いほうがUVAは防げる
といったところ。つまり、皮膚がんの増加をふせぐには、
- 一気に肌を焼きすぎずに少しずつ肌を黒くしていく
- 肌が健康的な小麦色になった段階で日焼け止めを使う
- 日焼け止めは、PA(UVAをふせぐ効果を表わす数値)が高いものを選ぶ
みたいな感じになるでしょう。また、日焼け止めの成分としては、酸化チタン、酸化亜鉛、アボベンゾン、メキソリルSXなどが入っていればOKかと思われます。
以前にも書いたとおり、まったく日焼けしないのも皮膚がんの原因になるので、容量を守って正しく太陽の光を浴びたいもんです。