「根拠のない自信を持とう!」ってアドバイスはどこまで正しいのか?
なんでも、意識が高い系の惑星では「根拠のない自信を持とう!」というアドバイスが幅を効かせているんだとか。自信さえ持ってしまえば能力はあとからついてくるって発想だそうな。つまり、
- 根拠のない自信を持つ
- 気分がポジティブになる
- モチベーションがわく
- 能力がつく!
って流れを想定してるわけですね。うーん、うさん臭い。
というわけで思い出したのが、2007年にロイ・バウマイスター博士が出した論文(1)であります。バウマイスターさんは名著「WILLPOWER 意志力の科学 」の作者で、この人が手がけた実験はどれもおもしろくてオススメ。
「根拠のない自信を持った生徒」は成績がダダ下がりに
で、この実験でバウマイスター博士は、テストで悪い成績を取ったばかりの学生たちを集め、以下の2グループにわけたんですね。
- 次のテストまで「お前はできる!本当は能力がある!」と先生からはげまされる
- 次のテストの日程や範囲などの情報をニュートラルに伝える
要するに、「根拠のない自信を持った生徒」と「自信をなくした生徒」の能力をくらべたんですな。
その結果は、「根拠のない自信を持った生徒」の惨敗。「自信をなくした生徒」よりも成績が悪かったどころか、自分たちの過去の平均点すら下回っちゃったんだそうな。具体的には、過去の平均が59点だったのが、39点まで下がったというから相当なもんです。
こういった現象が起きたのは、
- 生徒に根拠のない自信を植え付ける
- 生徒が自分の才能に安心しきる
- 何もしなくなる
- 成績が下る!
って仕組みが働いたから。現実よりも能力があると勘違いした結果、努力をしなくなっちゃうんですな。
「根拠のない自信を持った人」が身につくのはナルシシズムだけ
また、1998年の有名な実験(2)でも「根拠もないのに自信がある人たち」について調べてまして、その結果は、
- 自信があっても成績は良くならない
- 不健康な習慣(タバコ、大酒、薬物など)も減らない
- ひとつだけ数値が高かったのはナルシシズムのレベルだけ
って感じだったらしい。なんかボロボロですね。
というわけで、「根拠のない自信」が実際の能力に結びつく可能性はかなり低め。能力が高い人たちに自信家が多いように見えるのは、ロンドン大学のプレミュージック博士が言うように、
並外れた成功者たちが自信を持っているのは、彼らが並外れて有能だったからだ。重要なことは、高い自信を持つことではない。高い能力を持つことだ
ってのが原因なんでしょう。まあ非常に当たり前の話なんですが。