賢者になる方法
賢者になるには?
ここんとこ心理学の世界でよく聞くのが「賢者」の研究であります。
「賢者」の定義は研究者によってわかれてますけど、ざっくりしたイメージで言うと、思わず「この人は分別があるな〜」とか「大人だな〜」とか言いたくなっちゃう人がいるじゃないですか。こういった人たちのことを「賢者」と呼んでおります。
つまり、たんに知性が高いだけじゃなくて、「TPOにあわせて知識を正しく運用できる状態」と言いますか。仏教の「智慧」にもやや近い感じ。もちろん「賢者タイム」とは何の関係もありません。
ってところで近ごろウォータールー大学から出た論文(1)では、「どうすれば賢者のような行動が取れるか?」ってとこを考えてくれていておもしろかったです。
賢者レベルを左右する3つのポイント
実験では参加者に日記をわたして、9日間にわたって「日々のトラブル」や「仕事のストレス」なんかを記録しつつ、それらにどう対処したかをくわしく書いてもらったんですね。
その後で全員の「賢者レベル」をチェックしたわけですが、この論文では以下の3ポイントを採点の基準に使っております。
- 知的謙遜=自分の知識の限界を理解し、世の中の不確実性を知り、自己の偏見やバイアスに敏感な状態
- 自己超越=自分中心ではなく、引いたところから物事を考えられること
- 視点の統合=他者の視点からさまざま視点をまとめて考えられること
バイアスなしで現実的な対処ができるかどうかが大事なわけですね。
- どんな人でも必ず「賢者」になる瞬間がある
- ある場面では「賢者」だった人も、別の場面ではグダグダになることが多い
つまり、どんな人でも特定の場面では「賢者」になりえるんだ、と。研究者いわく、
誰もがつねに賢者でいられるわけではない。そのため、ある人物が仕事で賢明な行動をしているからといって、それで判断するのは危険だ。
とのこと。確かに「賢者レベル」が平均して高い人は存在するものの、別の場面では大失敗を犯すことも多いそうで、いちがいには言えない模様。
賢者レベルを上げるにはどうすりゃいいの?
こうなると「賢者な行動を取るにはどうすりゃいいの?」ってとこが気になりますけど、残念ながら本論には具体的な指南はなし。ただし、同じ研究者が2012年に行った実験(2)だと、
- トラブルを他人事のように考える:「自分はどうすればいい?」ではなく「(自分の名前)はどうすればいい?」って感じで三人称を使ってみたりとか
- 「◯◯だったらどうする」思考:「ブッダだったらどうする?」とか考えてみるパターン
- 友人がいる状況で考える:ひとりで行動するよりも、周囲に人がいたほうが賢明な行動を取りやすい
などで賢者レベルが少しだけ上がることがわかっております。 要するに、自分から距離を置いてメタ認知を働かせるのが大事ってことですな。
そんなわけで、いまのとこは「自分を他人のように扱う」能力を鍛えてくのがよさげ。もちろん、これは自分を雑に扱えってことではなく、自分に対して大親友のように接するって意味ですので間違いませぬよう。