同僚の給料額がわかったほうが社員のやる気は出るぞ!みたいな話
他人の給料を知るべきか問題
人様に「年収どれぐらいですか?」と聞くのは一般的に無作法とされていて、多くの会社でも「同僚はいくらもらってる?」ってあたりは公開しないケースが多いわけです。そのほうが要らぬ対立を生まないだろう、と。
ところが、新しい論文(1)では「他人の給料をガンガン知らせようぜ!」って結論になっててちょっとおもしろい。
他人のサラリーを知った状態と知らない状態で差は出るか
これはコーネル大学の研究で、146人の男女を対象にしたもの。まずは全員に4人ずつのチームを組んでもらい、「みんなでアナグラムのパズルを解いてね」と指示したらしい。
パズルが解けたチームには賞金を出したんですが、その際に「金額は各自の働きに応じて変わる」と伝えたうえで、
- 同じチームのメンバーがいくらもらえるのかがわからない
- 同じチームのメンバーがいくらもらえるのかが知らされる
って2つのグループにわけたんだそうな。同僚のサラリーを知らない状態と知っている状態で、パフォーマンスに差が出るかを調べたわけっすな。
他人のサラリーは「能力」のシグナルとして働く
それでどんな違いが出たかというと、
- 他人がもらう額を知ってる場合 → 自然と高額をもらってるメンバーに助力を頼むようになる → 全体のパフォーマンスがあがる!
- 他人がもらう額を知らない場合 → 能力が低いメンバーにも助力を頼むようになる → 全体のパフォーマンスが下がる
みたいな感じだったんですな。支払額が「能力」のシグナルとして働くので、誰にアドバイスを求めればいいかがわかりやすくなったみたい。
研究者いわく、
能力給による支払いシステムのもとで支払い額を非公開にした場合は、少なくとも短期においては、同僚の能力の判断に障害が起きる
とのこと。要するに、たいていの人は「給料の額」で他人の能力を推し量っており、この判断材料がないと誰に仕事を任せていいかがわからなくなるんだ、と。非常にわかりやすい話ですな。
基本的には他人のサラリーを知ったほうが生産性はあがる
また、同論文で参照されてた2013年の実験(2)でも、やはり「同僚の給料は透明にせよ!」って結論になってたりします。こちらは2,000名のビジネスマンを調べたデータで、
- 同僚の給料を知らずに働くとモチベーションは下がる
- 同僚の給料を知ったほうがよりハードに働きがち
って傾向がみられたそうな。他人の給料を知ってると、シンプルに比較の心理が働きだすのが原因っぽい。
研究者いわく、
支払いの非透明性は、不公平感を助長する可能性がある。マネージャーは、少なくとも部分的には給料を透明にすることを考えてもいいだろう。
とのこと。あくまで従業員の不公平感がポイントだって話なんで、何も考えずに給料をすべて透明にしたらエラいことになりそうではありますが。