記憶力を鍛えれば自動的に健康になれるんじゃないの?説
ワーキングメモリが自動的に人を健康にする
「記憶力がいい人は自動的に健康に?」みたいな論文(1)がおもしろかったんでメモ。
これはミネソタ大学の実験で、「ワーキングメモリと心的飽和」の関係を調べたものです。ワーキングメモリは、超短期的な記憶を頭のなかにキープする脳の機能で、たとえば一時的に買い物リストを覚えといたり暗算をするときなんかには必須。
また「心的飽和」ってのは、ざっくり言えば「もう十分です!」とか「もう飽きたぜ!」みたいな気分になること。娯楽にせよ食事にせよ、飽きるぐらいに堪能した状態ですね。
ワーキングメモリが良い人は飽きっぽい
研究チームは4つの実験を行っていて、おおよそのデザインはこんな感じです。
- 被験者のワーキングメモリレベルをチェック(Simon Electronic Memory Gameを使ったらしい)
- 絵を見たり音楽を聞かせたりして、どれぐらいで心的飽和が起きるかをチェック
要するに、ワーキングメモリの性能と飽きやすさには関係があるのかを調べたわけですな。その結果について研究者いわく、
ワーキングメモリのキャパシティは、物事の飽きやすさと相関していた。ワーキングメモリの機能が高い人は、機能が低い人よりも素早く心的飽和を起こす傾向があった。
本質的に、ワーキングメモリの性能が高い人は、体験をより良く記憶することができる。そのため、ワーキングメモリが良いほど、一度の体験を大きく味わうことになるのだ。
とのこと。たとえば同じ音楽を聞く場合でも、ワーキングメモリが良い人は歌詞のフレーズやメロディが頭に残るので、そのぶんだけ体験の質が高くなり、結果として飽きやすさにもつながるんだ、と。なるほどねぇ。
心的飽和が人を健康的なライフスタイルに向かわせる
さらに研究者いわく、
ワーキングメモリのキャパシティが大きな人は、情報をより深く処理することが可能となる。体験の細部をより多く記憶し、それが心的飽和を生み出しやすくなる。この心的飽和の感覚が、ワーキングメモリのキャパシティが大きい人を飽きっぽくさせる。
もし私たちがワーキングメモリの能力を伸ばすことができれば、食事をしてもすぐに心的飽和を覚えるため、不健康なライフスタイルに向かわずに済むかもしれない。
とのこと。心的飽和は食べ過ぎの防止に使えるんじゃないかって話でして、食事をじっくり味わう「マインドフルイーティング」の技法と重なるとこがありますねー。瞑想を心的飽和の観点から見たことがなかったんで、なかなか新鮮。
さらには、
食べ過ぎの大きな原因は心理的なものだ。それならば、記憶のプロセスへの介入は、食事のコントロールに役立つかもしれない。たとえば、最後に食べた食事を思い出してみるだけでも、より早く心的飽和を起こせるだろう。
というわけで、わざわざワーキングメモリを鍛えずとも、心的飽和を起こせる可能性が示唆されておりました。これぐらいなら手軽でいいっすね。
まとめ
以上の話をまとめると、
- ワーキングメモリが良い人は飽きっぽい
- この飽きっぽさを良い方向に活用するのが大事
- ワーキングメモリが悪い人は娯楽を長く楽しる分だけお得とも言える(笑)
といったところでしょうか。ほかにもワーキングメモリの重要性はいろいろ出てまして、 「ネガテイブな感情に飲み込まれないためにも必要」なんて話もあったりします。人生の幸福感を高めるって意味では、やっぱワーキングメモリが高いほうがいいんでしょうねぇ。