筋トレ前のストレッチは本当に必要なのか?問題
筋トレ前のストレッチは必要なのか?
昔から「ストレッチってどこまで必要なの?」って問題があるわけです。意外に思われる方もいるかもですが、実は「運動前には必ずストレッチをすべし!」ってアドバイスは、そこまでまだ確立した話でもないんですな(アスリートとかは別として)。そのへんの問題については、以前に「そもそも運動前のストレッチは必要なのか?」に軽くまとめてますんで、合わせてご参照ください。
さて、そこでおもしろかったのが近ごろでた論文(1)であります。これはカンピーナス州立大学の研究で、「筋トレ前のストレッチって必要?」って問題について調べたんですな。
というのも、過去のデータでも「ストレッチのせいでパワーが減るんじゃない?」(2)とか、「ストレッチの直後は筋トレの回数が落ちるんじゃない?」(3)みたいな見解が出てまして、どうも旗色が悪い感じだったんですよ。
「いきなり筋トレ」と「ストレッチ+筋トレ」で効果を比べた
そこで今回の研究では、20代の男性9人を対象に「筋トレにストレッチは有りか無しか」を調べております。といっても、この人数だと統計的にはイマイチなんで、参加者には「片足だけの筋トレ」を指示して左右の足でどんな違いが出るかをチェック。ひとりのサンプルで二度おいしいやり方で検定力を上げております。
トレーニングのプログラムは、
- いきなりの筋トレ
- ストレッチ後の筋トレ
の2パターンに分類。片足のニーエクステンションを1RM80%ぐらいの負荷で4セット、週に2回ずつやってもらったそうな。もちろん筋トレの負荷はそろえた状態で、ストレッチのあるなしで成果に違いが出るかをみております。
実験の期間は10週間。すべてが終わったところで、筋肉(外側広筋)や筋力の増え方、トレーニングの変化などをチェックしたところ、こんな結果になりました。
結局、筋トレ前のストレッチは有りか無しか
発見1.ストレッチをすると筋トレのボリュームが減る
第一に、筋トレ前にストレッチをした場合、参加者のトレーニングボリューム(セット数 × 回数 × 負荷)は全体的にガツンと下がっております。細かい数字を出すと、
- いきなり筋トレ:1日の回数=36.9 ± 8.1回 1日のトレーニングボリューム(kg)=894.8 ± 168
- ストレッチ+筋トレ:1日の回数=30.3 ± 6.1回 1日のトレーニングボリューム(kg)=707.4 ± 129
といったところでして、だいたい15〜20%ぐらいボリュームが減ってるんですよ。言うまでもなく、筋トレではボリュームが多いほうが筋肉は増えますんで、この時点でかなりストレッチは不利な状況に追い込まれましたね。
発見2.ストレッチは筋力の発達をジャマしない
続いて筋力アップについてですが、こちらは特に目立った差はなし。ニーエクステンションの1RMは、ストレッチをしようがしまいが変わらなかった、とのこと。具体的には、
- いきなり筋トレ:12.7 ± 7.4%
- ストレッチ+筋トレ:12.9 ± 8.1%
ほど筋力がついておりました。筋力に関しては問題なしってことで。
発見3.ストレッチは筋肉を増えにくくする
最後に筋肉量ですが、こちらは明確な違いが出てました。具体的には、
- いきなり筋トレ:12.7 ± 7.2%
- ストレッチ+筋トレ:7.4 ± 3.7%
って感じでして、ストレッチせずに筋トレをしたほうが、だいぶ筋肉が増えてるんですよ。って、まぁストレッチなしのほうが全体的なボリュームが大きいので、当然といえば当然の結果かもしれませんが。
そんなわけで、どうやら「筋肉を増やしたい!」って方にはストレッチは不向きな模様。一方で筋力アップにはボリュームよりも1回の負荷のほうが大事なんで、さほどの違いは出ないみたい。もちろん、これはかなり小規模な実験なんで即断はできないものの、過去のデータなんかも見てると、それなりに信憑性はありそう。筋トレ前のストレッチは控えたほうがいいかもですねー(筋力アップが目的なら別ですが)。