8週間のマインドフルネストレーニングで学生の「感情が豊かになった」よー、という実験
「マインドフルネスってどうなの?」みたいな話はずっとありまして、「言われてるほど効果がないんじゃない?」ってデータがある一方で、「それなりのメリットはあるよ!」という質が高い報告もチラホラ出てたりとかいたします。いずれにせよ、どれだけマインドフルネスが使えるかは未知数といったところ。
そんな状況下、「マインドフルネスで脳が変わった!」って論文(1)がちょっとおもしろい感じです。
「.b」(ドットビー)プログラムを8週間受けたらどうなるか?
これはイギリスのバンガー大学による実験で、40人の学生(16〜18歳)が対象。まずは全体を半分に分けまして、
- 8週間のマインドフルネストレーニングを受ける
- 何もしない
って感じで過ごしてもらったんだそうな。ここで使われたトレーニングは、以前にも紹介した「.b」(ドットビー)ってやつでして、イギリスのマインドフルネス団体が子供の教育ように開発したプログラムであります。くわしい話は「世界の学校で使われるマインドフルネス学習プログラム「.b」とは?」を参照くださればと思いますが、ざっくり言えば、「人間の心は2種類あるんだよー」とか「怒りと友達になろうねー」とか、メンタル改善の基本を少しずつ学んでいく感じです。
トレーニングは1回50分で8セッション。すべてが終わったあとには全員の「ストレス度」「共感能力」「幸福度」などをチェックして、さらにはEEGで脳波を測るテストまでしております。具体的にどういうテストかと言いますと、
- 学生たちに大量の顔写真を見てもらう(このうち20%は「幸せそうな顔」で、80%は「普通の顔」。残り20%は「悲しそうな顔」)
- 「幸せそうな顔」か「悲しそうな顔」が出てきたら、すぐに決められたボタンを押す
- その瞬間を脳波でチェックする
って感じです。なんでこんなことをしたかと言いますと、メンタルが沈みがちな人が「幸せそうな顔」や「悲しそうな顔」を見ると、そうでない人にくらべて、ERPsと呼ばれる脳の反応速度が少し鈍るんですよ。なので、この反応に変化が出ていれば「マインドフルネスで脳に変化が!」と言える(かもしれない)わけです。なかなか珍しいタイプの実験っすね。
マインドフルネスグループは感情の反応がスピーディになった
さて、それでは学生たちにどんな変化が起きたかと言いますと、
- マインドフルネスグループは、何もしかなったグループに比べて共感能力に変化がなく、ストレスレベルも変わらなかった
- ただし、マインドフルネスグループは「主観的な幸福度」が上昇した
- 脳波のデータでは、マインドフルネスグループは「幸せそうな顔」や「悲しそうな顔」への素早い反応をキープし続けた
って感じです。ストレスなどは変わらないものの、どうも脳の反応はひそかに変わってたらしい。おもしろいもんですなぁ。
それはつまりどういうことか?
研究者いわく、
暫定的な結論だが、今回の結果は「マインドフルネスの練習」が社会的な刺激への注意を維持する可能性を示したと思われる。マインドフルネスのトレーニングは、自分の感情に対して批判や判断をせずに好奇心を保ち続けるよううながすからだ。
とのこと。一般的に、鬱状態の人ってのは「他人の感情」への反応が鈍る傾向がありまして、ポジティブな感情にもネガティブな感情にも心が動かない傾向があるんですね。となると、マインドフルネスグループが「幸せそうな顔」や「悲しそうな顔」への反応をキープし続けたってのは、もしかしたら「学生のメンタルが強くなったと言えるんじゃない?」と研究者は考えてるわけっすな。
まだ推測の部分が多くてなんとも言えないんですけど、ちょっとマインドフルネスの効果に期待が持てそうな結論ではないでしょうか。個人的にも「.b」(ドットビー)のプログラムは受けてみたいもんですが。