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酒は百薬の長?いやいや、実はたった1杯でも寿命に悪影響かもよ!というメタ分析

Drinking 925288

酒は1日2杯ぐらいなら本当に問題がない?

「酒は体にいいのか悪いのか?」ってのは難しい問題で、「1日2杯ぐらいなら心臓病のリスクを下げてくれるよ!」みたいな話は誰でも一度は聞いたことがあるはず。

 

 

といっても近年ではこの説にも異論がありまして、たとえば2016年に出たメタ分析では「酒の健康効果は実際はないんだ!(あったとしても超少ない)」って結論になってたりするんですよ。従来の統計には穴があって、実は酒の健康効果は過大に見積もられ過ぎてたんじゃないか?ってことですね。

 

 

もっとも、これはあくまで「健康効果がないっぽい」って話でして、まだ「酒のリスクはどれぐらいなのか?」って問題については未知数だったんですよ。果たして、昔から言うように「1日2杯ぐらいなら本当に問題なしなの?」といったところはよくわからなかったんですな。

 

 

しかし、新たに出たメタ分析(1)では、「酒は1杯でも寿命を縮める!」って結論になっててビビりました。

 

 

酒は1日2杯ぐらいなら本当に問題がない?

これはワシントン大学の研究で、1990〜2016年のあいだに行われた694のデータセットを使ったもの。世界195の地域から集めたサンプルを使ってまして、心疾患のリスクはもちろん、酒と癌の発症率や事故死の可能性までふくんだ内容になっております。酒の健康調査というと、だいたい心疾患との関係だけをチェックしたものが多かったんで、今回のは質量ともにとても良い内容になってるんじゃないでしょうか。

 

 

さて、そこから得られたもっとも大きな結論が、

 

酒による健康への悪影響を最小化するためには、1週間の酒量をゼロユニットにしなければならない。

 

だったんですな。つまり、週に1杯の酒を飲むだけでも、なんらかの悪影響が出ちゃう可能性はあるんだ、と。うーん、そうだったのか。

 

 

ちなみに、ここでいう「酒の1ユニット」はアルコール10g分ぐらいの意味。具体的には、週にビール1缶、グラスワイン1杯、ウイスキーのワンショットでもヤバい計算であります。こわっ!

 

 

酒の健康効果はデメリットをカバーできない

さらに、その他の知見としてましては、

 

  • 50歳以上になると、酒は癌リスクの大きな原因になる。あとは事故、自傷、肺結核などとも関連がある
  • 全年齢において、酒によるダメージは、おもに心疾患か癌の形で現れる
  • 「1日2杯の酒」で心疾患と糖尿病リスクの低下も見られたが、その他の健康リスクをカバーできるほどのインパクトはない

 

なんて結果も出ております。確かにアルコールが健康に良い側面もなくはないんだけど、あまりにも影響が小さすぎて意味がないというんですな。

 

 

では、酒を止めるとどうなるかと言いますと、

 

  • 酒を長期にわたって止めると、40歳までに寿命が1〜2年増える

 

みたいな感じ。これをどう見るかは個人の価値観でしょうが、私は「思ったよりインパクトがあるんだなぁ……」って感想を持ちましたね。

 

 

まとめ

研究者いわく、

 

この研究から得られる教訓は、「健康に良い」と思って酒を飲んではいけないということだ。そして、酒を飲むことを選んだ場合は、今後の寿命と幸福のためにアルコール量を最低限に減らすようにすべきだ。

 

とのこと。この研究については「健康リスクの定義の幅が広すぎじゃない?」という疑問もありましょうが、少なくとも「思ったより酒は健康に良くないし、どちらかといえばデメリットが多い」ってのは確実ってぽいですかねー。

 

 

もっとも、コミュニケーションやストレス解消のために酒を使う人もいるでしょうし、そこの人生の収支をどう見るかは難しいところではあります。ちなみに、わたしは5年ぐらい前に酒を止めちゃいましたけど、特に後悔したことはないですねぇ。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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