どの抗うつ薬がもっとも効きやすくて副作用も少ないのか?ってのを調べたメタ分析の話
https://yuchrszk.blogspot.com/2020/06/blog-post_24.html?m=0
「抗うつ薬って本当に効く?」って議論は昔からあって、「実は思ったより意味がなくない?」とか「薬のなかでも効能に違いがありすぎる!」とか、いろんな意見が存在しまくりでどう考えていいかわからんのですよね。これは過去数十年にわたって続いてる長い議論でして、いまも結論は出てなかったりします。
といったところで、ランセットに「どの抗うつ薬がベストなのか?」を調べたメタ分析(R)が出てましたんで、軽くメモしときましょう。
まずは研究の概要をざっとまとめておくと、
- 21の抗うつ薬の有効性と副作用レベルをチェックしている
- 522の二重盲検試験を検討して、そのうちのいくつかはプラセボとの比較で、残りはヘッド・トゥ・ヘッド試験(ある抗うつ薬と別の抗うつ薬を比較した試験)だった
- これらの試験には116,477人の患者(平均年齢44歳、62%が女性)が参加しており、そのうちほぼ半数が北米で、27%がヨーロッパ、7%がアジア人だった
- 参加者のほとんどが中等度から重度の大うつ病に悩んでおり、治療期間の中央値は8週間だった
- 以下の抗うつ薬の効果がチェックされている
- アゴメラチン(Valdoxan)
- アミトリプチリン(Elavil)
- ブプロピオン(Wellbutrin)
- シタロプラム(Celexa)
- クロミプラミン(Anafranil)
- デスベンラファキシン(Pristiq)
- デュロキセチン(Cymbalta)
- エスシタロプラム(Lexapro)
- フルオキセチン(Prozac)
- フルボキサミン(Luvox)
- レボミルナシプラン(Fetzima)
- ミルナシプラン(Savella)
- ミルタザピン(Remeron)
- ネファゾドン(Serzone)
- パロキセチン(Paxil)
- レボキセチン(Edronax)
- サートラリン(Zoloft)
- トラゾドン(Desyrel)
- ベンラファキシン(Effexor)
- ビラゾドン(Viibryd)
- ボルチオキセチン(Brintellix)
みたいになってます。抗うつ薬の比較研究としては最大クラスなんで、なかなか信頼性が高くてよろしいのではないでしょうか。
で、その結論を紹介しとくと、こんな感じです。
- すべての抗うつ薬はプラセボよりも有効でだが、エスシタロプラム、パロキセチン、ミルタザピン、セルトラリン、アゴメラチンはドロップアウトが少なく反応率も高い。トラゾドン、レボキセチン、フルボキサミンは有効性が劣っていた
- もっとも副作用が少ないのアゴメラチン、シタロプラム、エスシタロプラム、フルオキセチン、セルトラリン、ボルチオキセチンであり、副作用が多めなはアミトリプチリン、クロミプラミン、デュロキセチン、フルボキサミン、レボキセチン、トラゾドン、ベンラファキシンだった
- 以上をふまえた上で、大うつ病性の治療にはアゴメラチン、ボルチオキセチン、エスシタロプラムが第一候補になるかも?
って感じになります。わりと明確な結論が出ましたね。
ただ、この結果をもって「最強の抗うつ薬が決まった!」と判断するのは無理がありまして、と申しますのも、
- 成人のみに焦点を当てているので、子供にはどうだかはわからない
- うつ病をひとくくりにしているので、いくつかのサブタイプには意味がない可能性も高い(例えば、「遺伝の問題で鬱になった人」と「子供時代のトラウマで鬱になった人」を同列に並べていいのか、という)
- この研究で使われたネットワークメタ分析だと、どのような患者の反応がいいのか?逆に副作用が出やすいか?みたいなとこは判断できない(まぁ仕方ないとこでもありますが)
みたいな問題は依然として残るんですよね。まだまだ課題は多いなーという。
まぁいずれにせよ、今回の研究が現時点でもっとも総合的なのは間違いないので、この結果をもとに主治医にご相談いただくのもいいかもしれません。どうぞよしなにー。