ココナッツオイルで悪玉コレステロールが増える!という嫌なメタ分析が出てた件
いまはオリーブオイルをメインに使ってる私ですが、あいかわらずココナッツオイルも愛用しております。現時点ではオリーブオイルよりは研究例が少ないものの、ほかの油よりも酸化に強い特徴がありまして、よろしいのではないかと。
と、そんなことを考えてたら、近ごろ「ココナッツオイルの健康効果をガッツリ調べたぞ!」ってなメタ分析(R)が出てて勉強になります。
これがどんな研究だったかと言いますと、
- 過去のココナッツオイル研究から、他の油との違いを調べた16件を抜きだす
- ココナッツオイルが、善玉および悪玉コレステロール、中性脂肪、炎症などにどのような影響を与えるかを調べる
みたいになってます。全体的な実験の質はやや低めではありますが、まぁ類例がないのでよろしいのではないでしょうか。
でもって、そこで得られた結論をざっくり紹介すると、
- ココナッツオイルを使うとLDLコレステロール(悪玉)が10.47 mg/dLほど上昇する!
- ついでにHDLコレステロール(善玉)は4.00 mg/dLほど有意に上昇する!
- ほかのベジタブルオイル(大豆油とか)と比べて体重増加が起きるってことはなさそう
みたいになってます。善玉が増えるのはいいけど、悪玉もそこそこ増える傾向があるんだ、と。ココナッツオイル好きにとっては、やや気になっちゃうポイントですねぇ(LDLを悪玉と断定するべきか問題ってのもありますが、ここではさておきます)。
で、この結果について個人的にどう思ったかと言いますと、「うーん、この研究だとココナッツオイルの実力を測りかねる」ってのが正直なところです。というのも、今回のメタ分析にはいくつかの難点があるもんですから。
具体的には、
- 全体的にサンプル数が少ないので検定力が十分じゃないよなー
- ココナッツオイルの利点と欠点を調べるにあたって、コントロール群がないテストも多い
ってあたりもポイントではありますけど、なかでもツラいのは、
- エクストラ・バージン・ココナッツオイルと加工ココナッツオイルの区別をつけてない!
ってとこじゃないでしょうか。厳密に言えば両者を区別してるのは全体のうち2件だけなんですよね。
エクストラ・バージンはココナッツミルクやカーネルを押しつぶして得られたオイルで、ほぼほぼ未加工の状態。いっぽうで加工バージョンは、加熱・脱色・脱臭などのプロセスを経てできあがったオイルになります。つまり、加工されたココナッツオイルは、エクストラ・バージンよりも酸化しているし、大事なポリフェノールも減っちゃってるんで、両者を同列にするのはちょい無理があるよなーとか思うわけです。
ひるがえって、エクストラ・バージンと加工オイルの影響を調べた先行研究を見てみると、
- 2018年のRCTだと、エクストラ・バージンのココナッツオイルは健康な男女のLDLコレステロールに影響がなかった。HDLは上昇した(R)
- 2017年のRCTだと、32人の健康な男女にバージンココナッツオイルを調べたが、総コレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪に影響がなかった(R)
みたいなものが結構ありあまして、どうなのかなーって気がするわけです。
というわけで、LDLの数値が気になる方にはあえてココナッツオイルをおすすめしませんが、エクストラ・バージンのココナッツオイルが酸化に強い優良油なのは間違いないんで、個人的には今後も普通に使っていくつもりだったりします。