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メンタルの安定に役立ちそうなデータいろいろ#3:自然すごい、筋トレもそこそこすごい、太極拳とかCBTもすごい

 

「過去に類似の話を紹介したけど、さらに追試で効果が確認されたので無視するのももったいないケース」をまとめて取り上げてみるシリーズです。今回は「メンタルの改善に役立ちそうなデータ」を、すごーくざっくりとまとめて3つほどお送りしまーす。 

 

 

自然やっぱすごい。ネガティブ感情ががっつり減る

最高の体調」にもさんざん書いたので皆さま耳タコでしょうが、またも「自然がメンタルに良い!」ってメタ分析が出てたんで(R)、ざっと内容を押さえとくといい感じです。

 

 

これは「自然のなかにいるとストレスが減るの?」って問題を調べたもので、8つの横断研究と4つのランダム化比較試験をまとめた内容になってます。1つの試験あたりの平均参加者数は760人で、

 

  • そのうち5件では主観的なストレスのレベルをチェックしている
  • 6件ではストレスの生理学的マーカー(fMRIスキャン、唾液コルチゾール、血圧測定、心拍数とリズム、筋肉の緊張など)をチェックしている

 

みたいになってます(残り1件は両方の指標を使ってる)。

 

 

その結果をだーっとまとめると、こんな感じです。

 

  • 全体的に、自然とのふれあいの増加は、生理学的ストレスマーカーと主観的なストレスの改善と相関していた

 

  • 緑地の多い地域に住んでいる人のコルチゾール値は、緑地の少ない地域に住んでいる人よりも低かった

 

  • 緑地の割合が増えるにつれて、ストレスのレベルが低下する傾向があった

 

  • 高血圧の人を調べたところ、1週間に30分間自然に触れることで血圧が低下する傾向があった

 

  • 90分間ほど自然の中を散歩すると、都市で散歩した場合と比べて、悲しみやネガティブな感情に関わる脳の活動が大きく低下した

 

  • わざと心理的なストレスを与えた後で自然の写真を見た被験者は、交感神経の活動がスピーディに減少した(つまりリラックスした)

 

ということで、いままでも「自然すごい!」とは言われてましたが、あらためて精度が高い研究で効果があきらかになってますね。90分の散策でネガティブが減るってのはいいですなぁ。私ももうちょいソロキャンプの回数を増やしていかないと……。

 

 

 

メンタルが健やかな人でも筋トレのメリットを得られる!かも

有酸素運動がメンタルに良いってデータは大量にあるんですけど、筋トレがどうなのかはまだまだよくわからないのが現状。そんななか「筋トレで不安が減る!」との報告が出ておりました(R)。

 

 

これは8週間のランダム化比較試験で、特に不安症には悩んでいない28人の男女(18〜40歳)を2つのグループに分けてます。

 

  1. 筋トレグループ:週2回ずつ、バーベルスクワット、バーベルベンチプレス、デッドリフト、ダンベルショルダーレイズ、ダンベルランジなどをやる

  2. コントロールグループ:これまでどおりの運動レベルを維持する

 

この実験のポイントは「特に不安症がない人」を対象にしてるとこでして、過去の実験だと全般性不安障害や高齢者を対象にしたテストがほとんどなので、もともと健康的な人たちのメンタルが筋トレで改善するかを調べたデータってあんまなかったんですよ。

 

 

で、定番の不安チェックテストをやったら、結果はこんな感じになりました。

 

  • 筋トレは不安(Anxiety)を有意に改善したが、心配(Worry)は改善しなかった

 

だったそうです。「不安と心配ってどう違うの?」と思われたかもしれませんが、一般的な定義は以下のようになります。

 

  • 不安=身体的に感じられる漠然としたネガティブ感情。「なんか緊張するな……」みたいに漠然と嫌な感覚に苦痛を感じてるようなイメージ
  • 心配=頭の中でネガティブな思考に集中する状態。「事故が起きそうでヤバい……」みたいに、予想される危険に対して精神的な苦痛を覚えているイメージ

 

ぐらいの違いだとお考えください。通常は心配のほうが一時的に過ぎるんで、不安のほうがやっかいかもしんないっすね。

 

 

というわけで、どうやら筋トレは健康な男女のメンタル改善にも役立つようなんで、不安傾向が強い私としてはまことにうれしい結果なわけです。もちろん、このテストだけだと「筋トレは有酸素運動よりいいの?」みたいなとこは不明なんで、そこらへんはご注意ください。

 

 

脳機能の低下によるメンタル不調に効くテクニックとは?

脳機能が下がるとどうしても鬱や不安になりがちで、特に認知症の人はメンタルが悪化しやすいのは皆さまご存じのとおり。

 

 

そこで、脳機能の低下による鬱や不安はどんな手法が効くのか?ってのが気になるわけですが、残念ながらこれまで行われたメタ分析は、参加者が鬱や不安の基準を満たしてないケースが散見されまして、いまひとつ「これ!」といった結論が得にくかったんですよ。

 

 

そんな状況下、臨床的な鬱病や不安の基準をちゃんと満たした患者さんのデータだけを集めたメタ分析が出まして、なかなかよろしい感じでした(R)。

 

 

このメタ分析では、

 

  • 実践から1週間後の鬱病レベル(n=4、159人)
  • 実践から1週間後の不安レベル(n=3、97人)
  • 実践から6ヵ月後の不安レベル(n=2、58人)

 

に対して、どんなメンタル改善法が効くのかを評価してまして、ざっと以下のような結論を出してくれてます。

 

  • 太極拳、運動/ウォーキング、問題解決療法多因子介入などの手法は、実践から1週間後に鬱病の症状を改善した

 

  • 音楽療法および認知行動療法は、実戦から1週間で不安の症状を改善し、その効果は6ヵ月後も続いた

 

ということで、このブログでもおなじみな運動や認知行動療法は、やはりがっつりと効果が出てるようですね。ちなみに、鬱病の効果量は大きくて不均一性も検出されなかったんで、結果の信頼性は高そうで良いです。

 

 

一方で不安の効果量は小さいし、中程度の不均一性が検出されてたりします。そう考えると、不安に関しては信頼性がイマイチってとこですね。もちろん全体的に試験が小規模なんでバイアスのリスクもありそうですが、とりあえず心理社会的なサポートは使えそうっすね。

 

 

 

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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