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2022年1月に読んでおもしろかった7冊の本と、1本のゲームとライブ

 

月イチペースでやっております、「今月おもしろかった本」の2022年1月版です。あいかわらず新刊の作成で死んでまして、今月に読めたのは15冊ほどで、映画は1本も見られませんでした。つらい……。

 

 

上流思考――「問題が起こる前」に解決する新しい問題解決の思考法

 

瞬間のちから」以来ひさしぶりなダン・ヒースさんの最新作。今回は弟のチップさんが離れて、お兄さんのダンさんだけで書かれた一作になってます。「マトリックスレザレクション」みたいだ。

 

で、この邦題だけ見ると「上流階級の人たちの考え方」を扱った本のようにも思えますが、実際には「すべての問題はより上流に大きな原因があるものだから、まずはそこにアクセスしようぜ!」って内容になってます。エンタメ志向だった弟さんがいないせいか、過去作よりはやや硬派な書き方になってますけど、適切なエピソード選びと表現のわかりやすさは健在でありました。

 

ただ題材が題材だけに解決編が弱い傾向がありまして、「じゃあどうすりゃいいの?」ってとこは割とフンワリ気味。それぞれのエピソードから自分で汲み取っていくしかないだろうなーって感じっすね。まぁプロジェクトの川上で起きがちな問題を押さえておくだけでも十分ご利益はあると思いますので、デカいトラブルに苦しむ前に一読するのがおすすめ。

 

 

デタラメ データ社会の嘘を見抜く

 

ワシントン大学の進化生物学者さんが、「現代は見抜きにくいデタラメであふれている!」と主張し、ものごとを論理的に考える方法を提唱してくれる本。著者さんは知らなかったんですが、伝染病の広がり方を研究していて、その流れでSNSの誤情報拡散にもテーマが広がったらしい。

 

このタイプの本は昔から出てるものの、本作のターゲットはTEDにも向かってまして、近年の大テーマとして押さえておくとよろしいのではないでしょうか。もっとも、こちらも「いかにデタラメを見破るか?」ってとこの解説は手薄な印象でして、結局は手軽な方法なんてあんまないよなーってのを痛感させられましたが。

 

 

 

量子革命: アインシュタインとボーア、偉大なる頭脳の激突

 

量子論の発展にあたって、アインシュタインとボーアが激しくバトったのは有名な話。この有名バトルに至るまでにどのような問題がふたりの前に立ちはだかったのかってところを、歴史エンタメ的な書き方で教えてくれるナイスな本でありました。いわゆる「神はサイコロを振らない」問題でして、この件については、アインシュタインが「若者の柔軟性を難詰した老害」みたいに扱われるケースが多いんですけど、これを読むとアインシュタインの批判も実は芯を食ってたことがわかって勉強になりました。

 

シュレディンガーやボーアのキャラも立ちまくってて、癖がある超天才たちの頭脳バトルが好きな方にはおすすめ。もっとも、正直なところコペンハーゲン解釈についてはボンヤリとしか理解できておらず、全体を読んでも「なんか凄そうだ!」という印象でしたが……。

 

 

 

動機づけ面接を身につける 一人でもできるエクササイズ集

 

動機づけ面接は、クライアントの動機を引き出して、それによって変化をうながす技法のひとつ。わりと検証も進んでまして、個人的には信頼度が高いテクニックだと考えております。

 

で、本書は「動機づけ面接は実践しないとわからんから、とにかくいろいろやってみよう!」って姿勢で大量のエクササイズを紹介してくれてまして、入門者にも上級者にも役立つ感じになってました。あくまで心理療法に特化した内容ではありますが、要するに動機づけ面接ってのは「効果的なコミュニケーションとは?」を考え抜いた技法の集まりなんで、「なんか他人とうまくしゃべれない……」とか「つい会話がぎこちなくなってしまう……」みたいな方にも役立つんじゃないかと。

 

 

 

我が友、スミス

 

「芥川賞候補になった筋トレ小説がある」との前情報だけ聞いて読んでみた一冊。筋トレにのめり込んでいく女性を主人公に、「人間が変わるってどういうこと?」と「筋肉の世界にもジェンダー問題は宿る」ってポイントを掘り下げてて楽しく読ませていただきました。タイトルの「スミス」はスミスマシンのことでして、このセンスもいいですねー。筋トレをやってる人ならわかる名言も多くて、「本物の集中力というやつを、私はジムで知った」とか「マッチョにマシンを譲ってもらうと恐縮度が大きい」とか、「これは筋肉あるあるですなー」って感じでニヤニヤさせられます。

 

ちなみに、本書で一番くらったパンチラインは「筋肉は年功序列だ」でした。まことにおっしゃるとおりですね。

 

 

 

高慢と偏見

 

ここんとこ古典を読んでみよう月間なので、ちょこちょこと未読の名作に手をつけております。「高慢と偏見」はタイトルが堅苦しそうだったので避けてたんですけど、いざ読んでみたらあらビックリ、知的なおてんば娘とツンデレイケメンが織りなすコテコテのラブコメでした。「高慢くんと偏見ちゃん」みたいなタイトルに変えて、いまっぽいイラストの表紙をつけたら売れそうなぐらい。深刻な事件も特に起きないし、最後まで安心して楽しめるのがいいっすね。

 

個人的には、最終的に主人公と結ばれるダーシーさんの抱える「内向的すぎる性格のせいで気取りすぎた嫌なやつに見えてしまう問題」が、これは他人事とは思えない!って感じで身につまされました……。これは本気で気をつけよう…‥。

 

 

 

月と六ペンス

 

古典を読もう月間のために読んだ3冊目の本で、ゴーギャンをモデルにした画家の男が「わしは芸術家だから普通の生活などどうでもいいんじゃ!」とばかりに、周囲の女性や友人をどんどん不幸に陥れていく話でした。「芸術の魔」みたいなとこに焦点を当てた話なんですけど、芸術家の行動と言動がヒドすぎてほとんどコメディの領域っすね。その後のアートの展開を知っている現代人としては、ここで描かれる芸術家像もなんか牧歌的な印象なんですけど、モームさんはどんどん話を展開してくれるし、とにかく「メンタルの表現がうまっ!」って感じなので、最後まで楽しく読めました。

 

 

 

バイオハザード4 VR

 

バイオ4のVRバージョン。初プレイ時は全編にただよう不穏感に腰が抜け、2週目はサバイバルアクションとしての完成度に小躍りし……というわけで、「In Death: Unchained」以来ひさびさにゲームで感動させられました。このゲームにさえ手を出さなければ、もう少し新刊が早く進んでいたはずなんですが……。

 

 

 

天竺鼠単独ライブ「やっぱツアーっしょ!!」

 

最初から最後までデビッド・リンチの映画みたいでした。最高。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。