「男性は若さや美しさを求め、女性は富や地位を重視する!」はどこまで普遍的なのか?問題
「男性は若さや美しさを求め、女性は富や地位を重視する!」って傾向は世界中でみられるものでして、くわしくはデヴィッド・M.バス先生の本などをご参照いただければと思うわけです。
バス先生は、恋愛や結婚におけるこうした好みは人類に普遍的なもので、生物学にもとづいているのだ!と言ってまして、この背景にどんな考え方があるのかと言いますと、
- 生物学的に見ると精子は安価で、男性は1秒間に平均1,500個の精子を作る。そのいっぽうで卵子は高価で、女性は月に1個しか卵子を放出できない。さらに、女性は妊娠に9ヶ月かかるのに対し、男性の子育てに必要な時間は数分に過ぎない。つまり、女性の方が生殖コストが格段に高い。
- そのため、女性は男性よりもはるかに相手選びに厳しくなり、子供に投資できる資源を多く持っている人を求める性質が備わったと考えられる。いっぽうで男性は、若さや美しさや健康レベルなど、女性の基本的な生殖能力のサインを重視すると思われる。
みたいな考え方です。まぁ言われてみればそうかなーってとこですよね。
ただ、新しい研究(R)によると、「男=若さと美しさ好き」「女=富と地位が好き」って嗜好は「状況によって変化するのでは?」って結論になってておもしろいです。まずは研究チームの結論をざっくりまとめると、
- 男性と女性が収入や経済的自由の点で平等になると、従来言われてきた恋愛や結婚パートナーへの好みは弱まる
みたいになります。これはヨーク大学などの研究で、2つの大規模なサンプルを対象に、「みなさん結婚相手になにを求めてます?」と尋ねまくったものです。ひとつは1980年代後半に実施されたもので、37の異なる文化圏の8,953人が対象。もうひとつは最近行われたもので、10カ国の3,177人を対象にインターネットを通じて実施されております。
研究チームがこのような試験を行ったのは、「フルタイムの仕事に就く女性ほど、男性の富や地位を重視しない」って先行研究があったからです。この結果をふまえてチームは、
社会的な役割における男女の位置づけが変化すれば、結婚相手の選択基準における男女差も変化するはずだ。なぜなら、人々は、一般的な社会状況の下で予想される将来の生活に適合する相手を探すからだ。
と申しておられます。みんな自分の裕福さによってパートナー選びの基準を最適化させるはずだから、社会的な状況の変化によってそこらへんも変わるんじゃないか、と。
で、この研究がなにをしたかと言いますと、
- 世界経済フォーラムが使ってる男女平等の指標を使って各国をランキングする
- それぞれの社会における男女の格差と、男性と女性の結婚相手の好みの違いを調べる
- ふたつのデータを比較する
みたいになってます。男女の平等とパートナー選びに相関があるかをチェックしたわけですな。
その結果、何がわかったかと言いますと、
- 男女の力が平等であればあるほど、男女が結婚相手に求める特徴は似通っていた
- 最新の調査の対象になった10カ国の中で最も男女の平等が保たれていたフィンランドでは、男女の格差が最も大きかったトルコに比べて、男性と女性の好みの違いがはるかに小さかった(ちなみに、男女の平等度が高い国の上位4カ国はすべて北欧で、ランキング下位は中東やアフリカ諸国が占めてる感じ )
- 37カ国の文化調査でも、結婚相手の好みには確かな男女差が認められつつも、平等な国でほどその差が縮まっている傾向があった
- わりとどの国でも、「見た目の良さ」や「富や地位」よりも、「知性」「優しさ」「ユーモアのセンス」のほうが上位に来る傾向も確認された
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さらに、「男女間の数学の成績の差」のような認知にかかわる差異も、男女が平等な社会ほどなくなりやすい傾向も見られた
だったそうな。つまり、男女が平等になればなるほど、男性は若さや美しさを重視しなくなるし、女性は富や権力を重視しなくなるってことっすね。600万年前の環境とかだったら「男性は若さや美しさを求め、女性は富や地位を重視する」って好みは理にかなっていたんでしょうが、このような性癖は男女の格差がなくなるほど不適応になっちゃうわけですな。なるほどねー。