講義の動画を倍速で視聴しても内容はちゃんと頭に入るのか?問題
新型コロナのせいで自宅学習が普通になった昨今でございます。知人の大学生も、キャンパスに行かないでずっと講義ビデオを見てるそうで、なかなな大変なもんですなーとか思うわけです。
で、このような状況で気になるのが、
- 動画の講義を頭に上手く入れる方法はないのか?
ってとこでしょう。YouTubeなどを使った勉強が当たり前になったいまでは、動画のメリットを活かす方法を知っといたほうがいいですもんね。
そこでカリフォルニア大学ロサンゼルス校などから出た研究(R)は、「動画の再生速度によって頭への入り方が違うのでは?」って話になってて参考になりました。動画の再生速度を速めて情報摂取の効率をあげている人は少なくないでしょうが、このやり方は学習にどのような影響を与えるのだろうか?ってのを調べてくれたわけですね。
これが具体的にどのような実験だったかといいますと、
- 231人の学生をあつめて、2つのYouTube動画を見てもらう(不動産の鑑定に関する動画とローマ帝国に関する動画だったらしい)
- 動画の再生をする際は、通常の速度、1.5倍の速度、2倍の速度、2.5倍の速度で視聴してもらう
- それぞれの動画の後に内容のテストを行い、1週間後にも再びテストを行って理解度をチェックする
みたいな感じです。果たして動画の再生スピードは、内容の理解に影響があるのか、と。ちなみに、動画の視聴はフルスクリーンで視聴し、一時停止やメモは取らないようにとの指示が出されたそうな。
でもって、結果は以下のようになりました。
- 1.5倍と2倍のスピードで学習を行ったグループは、直後のテストと1週間後のテストのどちらとも、ノーマルのスピードで動画を見たグループとほぼ成績は変わらなかった
- 2.5倍のスピードで学習を行ったグループのみ、テストの成績が悪くなった
- 通常の2倍速で動画を2回見た場合は、通常の速度で1回見た場合よりもテストの成績が良くなった
2倍速というと結構なスピードのような気もしますけど、実際にはノーマルスピードと学習効果は変わらないかもしれないみたいですね。
ちなみに、この研究では、カリフォルニア大学の学生たちに動画勉強のアンケートも取ってまして、
- 全体の85%が通常よりも速い速度で講義動画を視聴していた
- 91%の学生は「2倍速や2.5倍速よりもノーマル速度か少し速い速度(1.5倍)ぐらいのほうが勉強しやすい」と感じていた
みたいな結果だったそうです。「2倍速だと勉強にならないでしょ!」ってのが学生の体感だったんだけど、実際には2倍速でも通常の視聴と成果は変わらなかったわけですな。
さらに研究チームは、同じ動画を再生スピードだけ変えて何度か視聴した場合の違いも調べてまして、
- 最初はノーマルの速度で見た後に2倍の速度で見る
- 逆に2倍の速度で見たたあとに、ノーマルの速度で見る
のように勉強したあとで、学習の直後や1週間後のテストの成績に違いが出るかどうかも調べたんだそうな。しかし、こちらも結果はさほどかわらず、スピードを変えて何度か勉強してもテストの結果に違いはなかったそうな。
ってことで以上の話をまとめると、
- 2倍速でも理解度には問題がなさそうなので、動画学習の際は倍速で視聴して講義に費やす時間を半分にするのがよさげ。ただし、2.5倍以上にはしないように注意されたし
- 2倍速で見る場合は、テストの直前に再び2倍速で動画を見て復習したほうがさらに理解度はあがる
といったあたりが現実に応用しやすいポイントになるでしょうね。もちろん、この実験は不動産鑑定やローマ帝国に関する知識しかあつかってないので、物理みたいにより複雑なテーマには使えないかもですが、とりあえず「2倍までならいいんじゃない?」って指針が出たのはいい感じですね。