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優れた教師の指導より300%も勉強の成果があがる学習法、それが「生産的な失敗」


 

こないだ「本当に勉強の内容を身につけたきゃ生産的な失敗が必要だ!」みたいな話を書いたわけです。簡単におさらいしておくと、

 

  1. 通常、私たちがなにか新しいことを学ぶときは、事前にくわしい説明してもらったほうがいいと考えられる

  2. しかし、実際にはいろいろと回り道をして学んだほうが長期的な学習の効率は高くなる

 

みたいな考え方です。誰かに効率よくポイントを伝えてもらうよりも、間違ってもいいから自分なりに手探りしたほうが、長い目で見て頭に定着するんだよーって話ですな。まぁ簡単に身に着けた知識は失われるのも速いですからね。これを専門的に「生産的な失敗」と呼んでいるわけです。

 

 

で、スイス連邦工科大学チューリッヒ校が新たに行ったメタ分析(R)では、「生産的な失敗がどれだけ効果的なのか?」ってところ鬼掘り下げしてくれていて、とても参考になりました。

 

これは過去15年間に行われた教育研究のメタ分析で、53件の研究をもとに比較分析を行ったもの。どの研究も「勉強の前に指導を行うのと、その逆を行うのとでは、どちらの学習法がより効果的か?」って問題をあつかってまして、

 

  • 対象は小学生から大学生までで、出身国は北米が約半数、ヨーロッパ(26%)とアジア(28%)がそれぞれ4分の1以上を占めている
  • 学習科目は数学、物理学、化学、生物学、医学など(読解力や作文力などの一般的なスキルや、人文・社会科学分野の問題はふくまれていない)
  • 各分野の概念をどれだけ理解し、それらをうまく応用できるかをチェックしている

 

みたいな感じになります。全体的にデータ数はいい感じでして、これは信頼できそうでいいっすねー。

 

 

では、結論を見てみましょう!

 

  • 基本をレクチャーされる前に演習や問題を解いた方が、みんなはるかに優れた学習成果を上げていた

 

  • この効果は小学生でも大学生でも変わらないが、小学校の生徒よりも中学・高校の生徒や学部生のほうが当てはまった(たぶん、小学生は基礎の知識が少なすぎて、推測の糸口も見つけられないからだと思われる)

 

  • 理論を学ぶ前に実践することは、優れた教師から1年間指導を受けるよりも2倍近く効率的だと考えられる

 

  • トレーニングの段階で「生産的に失敗」すると、優れた教師から1年指導を受けるよりも3倍も学習成果が向上する

 

うーん、この数字はすごい……。ちなみに、このチューリッヒ工科大学の研究チームは、自分たちの「線形代数」コースでも「生産的な失敗」を取り入れていて、その結果、講義の前に生産的な失敗をした学生の課題の合格率は、伝統的な講義を受けた学生より20%も高かったんだそうな。これはもう確実に取りれたほうがよさそうなレベルっすね。

 

 

こうなると、「生産的な失敗」はんでそこまで有効なのか?ってのが気になりますけど、ここで研究チームは4つのメカニズムを推定しておられます。

 

  1. 難しい問題を解くためには、できるだけ多くの知識を使わねばならない。その点で「生産的な失敗」は、自分が持っている予備知識をフル活用させてくれる(普通に講義を受けていると、効率よく解くために特定の知識しか使わない)

  2. 「生産的な失敗」によって、学習する人は、自分がすでに知っていることと知らないことの間のギャップを認識できる。そのおかげで「知識のギャップを埋めるぞ!」ってモチベーションがわきやすくなるし、自分の問題がどこにあるのかに気づきやすくなる

  3. いったん自分の頭で考えているので、新しい概念をスムーズに受け入れやすくなる(受け身で知識を伝えられるよりも納得度が高くなる)

  4. 最後の段階で講師からフィードバックを受け、学習者が編み出した解決策がなぜ的外れなのかを理解することで、さらに問題への理解が進む

 

まー、いずれも納得のメカニズムと申しますか、この段階を踏むことで知識が脳内に刺さり、さらに応用力までアップするってのはよくわかりますね。自分でも意識しよう……。

 


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サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。