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「良い子育てとは何か?」をワシントン大学の先生が語っておられます#1「子育てには4つのタイプがある編」


  

感情知性が高い子どもを育てる」って本を読みました。著者のジョン・ゴットマン博士は対人コミュニケーションのプロフェッショナルで、「ゴットマン式コミュニケーション術」や「結婚生活を成功させる七つの原則」で有名な先生ですね。

 

 

主にカップルの人間関係の研究で有名な先生なんですが、同時に子育ての分析も行ってくれてまして、本書はゴットマン先生が行った研究をまとめたものになります。博士は4〜5歳の子どもを持つ夫婦100組以上にアンケートを行い、何千時間にも及ぶインタビューを実施してまして、

 

  • 自分の研究室で全員の行動を観察して、子供たちが遊んでいる様子を録画しつつ心拍数、呼吸、血流、発汗、ストレスホルモンをモニタリング
  • 子供たちとその家族を思春期まで追跡調査して継続的なインタビューを行い、学業成績、問題行動、病気の発症率などを評価

 

って感じでかなり壮大な調査を行なっております。その結果、「良い子育てとは何か?」って問題に対して説得力がある答えを提示してくれてまして、子育てにお悩みの方には参考になるんじゃないでしょうか。というか、ゴットマン先生が提示する知見はコーチングに近いところが多く、部下を育てたい人とか、リーダーの立場で働いている人など、他人を指導しなければならない立場の人には役に立つはず。

 

 

で、いろいろと分析したうえで、ゴットマン博士は「子育てには4つのタイプがある」と分類しておられます。

 

  1. 相手にしない親:子供の否定的な感情を軽視、無視、または矮小化する。

  2. 賛成しない親:子供の否定的な感情に対して批判的であり、ネガティブな感情を表現した子供を罰する。

  3. 指導しない親:子供の感情を受け入れて共感するが、問題行動を正そうとはしない。

  4. 感情をコーチする親:子供の感情を受け入れ、問題解決を支援する。

 

当然、子育てがうまくいかないのは上から3つのパターンで、このような親に育てられた者は、歳を取ってから問題行動が増え、悪い友達と付き合うようになり、自尊心の問題も抱えやすかったんだそうな。私の場合、父親が「賛成しない親」の典型だったので、なんか納得するなぁ……。

 

 

一方で、感情をコーチする親のもとで育った子供たちは、精神の動揺に強く、心を落ち着かせるのがうまく、感染症にかかることも少なく、集中力にも優れ、成人後にも他の人とうまくコミュニケーションを取ることができ、人を理解することが上手く、学校での学業成績も良かったそうな。なんだか良いことだらけですが、感情のコントロールは人生の必須スキルと言われてますんで、これぐらいの違いが出ても不思議じゃないかもしれないっすね。

 

 

ということで、本書から個人的にためになったところをピックアップすると、こんな感じになります。

 

 

ポイント1.親はまず自分の感情に気付けなくてはならない

  • 多くの親がまず気にすべきは、自分自身の感情に気づけているかどうかを意識することである。自分の感情や気分に気づくことができなければ、他人の感情に気づくことはできない。

 

  • 感情への気づきとは、自分が感情を感じているときにそれを認識し、自分の感情を識別でき、他の人の感情の存在に敏感であることを意味する。

 

  • 自分の感情を認識したら、子供の前でその感情を隠さないことが重要となる。親が感情を隠すところを見ると、子どもは「感情は隠さねばならないのだ」と学んでしまう。

 

  • 特に子供たちは、自分が何を感じているのか、それをどう表現したらよいのかを理解していないケースが多い。そのため、子供には、勉強や道徳だけでなく、感情のロールモデルが必要となる。

 

 

 

ポイント2. 子供が成長するタイミングは子供にしか決められない

  • 博士の研究では、感情を隠す親に育てられた子供は、ネガティブな感情を処理する能力が低い若者に育つ傾向がある。これは、子供たちが親の感情から切り離されて育つからだと思われる。要するに、難しい感情を効果的に扱う方法を教えてくれるロールモデルがいないのが原因である。

 

  • うまく育った子供の親は、子供の問題行動を「物事を教えるチャンス」や「絆を深めるチャンス」だと考えていた。逆に、子供の問題行動をひたすら矯正しようとした場合は、学校の勉強や友達との付き合いに問題を抱えてしまうケースが多く、体内のストレスホルモンのレベルも高く、病気にかかる確率も高かった。

 

  • 子供が問題行動を起こしたときは、すぐに解決を試みるのではなく、その前に「自分は安全な味方なんだよ!」ってのを証明してやる必要がある。アドバイスの前には必ず共感が必要であり、自分が悪いことをしたかどうかを理解するタイミングは相手にしか決められない。すぐに問題解決に走ってしまうと、子どもは不快な感情に対処する術を身につけることができなくなる。

 

 

ってことで、長くなりましたんで今回はこのへんで。「まず自分の感情に気付け!」とか「成長のタイミングは相手が決めること」ってのは、子育てだけでなくあらゆるコーチングに言えることでして、他人にアドバイスすることが多い人にはあまねく参考になるんじゃないでしょうか。

 

 

次回のエントリでは、さらに重要なポイントである「共感的な傾聴」や「単純な観察を共有する」ってあたりをご紹介します。ではまたー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。