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今週末の小ネタ:リングフィットアドベンチャー腰痛にめちゃ良い、ペットめちゃ脳に良い、死の間際の脳ってどう働く?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

リングフィットアドベンチャー、腰痛にめちゃ良い説

任天堂のリングフィットアドベンチャー」で慢性腰痛がやわらいだぞ!ってデータ(R)が出ておりました。

 

 

これは8週間のRCTで、慢性腰痛に悩む参加者が合計40人を対象にしたもの。実験にあたっては、参加者を2つのグループに分類して、

 

  1. 週1で約40分ほどリングフィットアドベンチャーをやるプログラムに参加する

  2. 内服薬で腰痛の治療を続ける

 

みたいになります。リングフィットアドベンチャーのセッションでは、アドベンチャーモードを30分、ゲームの腰痛プログラムを10分ずつ行い、運動強度や運動の選択などの判断は参加者が自ら行ったそうな。

 

 

一方で、対照群には2週間ごとに面接をして痛み評価を行い、ゲームセッションの代わりに経口治療法を行ったらしい。内服治療は非ステロイド性抗炎症薬からスタートして、鎮痛効果が不十分な場合はトラマドール(オピオイド薬)、デュロキセチン(抗うつ薬)へと切り替えていったとのこと。

 

 

その結果、みんなの腰痛がどうなったかと言いますと、

 

  • 8週間の治療で、リングフィットアドベンチャーをプレイしたグループは、腰痛とお尻の痛みが軽減された
  • 内服薬の治療群には有意な改善が見られなかった
  • 自己効力感もチェックしてみたところ、リングフィットアドベンチャーをプレイしたグループは、「私は痛みをコントロールできる」など自信も改善した
  • 下肢のしびれ,運動恐怖症,痛みの悪化のスコアについては、両グループとも改善しなかった

 

だったそうです。腰痛に運動が効くってのは昔からよく言われてきたことですけど、リングフィットアドベンチャーで楽しく対策できるなら実にすばらしいことですな。

 

 

と同時に、腰痛の治療には自己効力感が重要ってのもよく聞く話で、これがリングフィットアドベンチャーで改善するってのもすばらしいのではないかと。リングフィットアドベンチャーもやってみるかなぁ。

 

 

 

ペット、めちゃ脳に良い説

以前に「犬との暮らしは超体にいい」みたいな話がありましたが、新たに「ペットは脳機能にも良いぞ!」ってデータ(R)が出ておりました。

 

 

この研究は、1,369人の高齢者(平均年齢65歳)を6年間ほど追跡調査したもので、そのうち53%をペットオーナーで、32%を長期ペットオーナー(5年以上)に分類。これに加えて、すべての参加者に引き算、数字の数え方、言葉の記憶など、さまざまな認知テストを実施して27点満点で総合スコアを算出し、2つのデータを比べたんだそうな。

 

 

その結果、

 

  • ペットを飼っている人、特に長期に渡ってペットを飼っている人では、認知スコアの低下が緩やかだった(効果の大きさは、平均してテストの1.5ポイントぐらいの違い)
  • ペットによる認知の保護効果は、黒人のペットオーナー、男性、大学教育を受けたペットオーナーのほうが強かった(ここらへんは謎)

 

だったそうで、決して劇的な違いって感じではないものの、長い目で見ればかなりの影響を与える可能性はあるかもしれないですね。

 

 

ペットで認知機能が下がりにくくなる理由は謎なんですけど、過去に「ペットをなでるとオキシトシンって物質が出て、そのおかげでストレスが軽減するよー」って傾向はよく確認されているんで、そのせいかもしれんですな。

 

 

 

死の間際の脳ってどう働くの?

死ぬ瞬間に私たちはどんな体験をするの?」ってのを調べたおもしろいデータ(R)が出ておりました。よく死ぬ前の人間は走馬灯が見えるとか、肉体から抜け出すような体験をするとか、明るい光が見えるみたいな現象が起きるとか言われますが、これが果たして本当なのかをチェックしてみたわけです。

 

 

といっても、死の直前の方々を調べるような研究は不可能なので、このデータは、

 

  1. てんかんを患う87歳の男性を、脳をスキャンする機械でずっと調べる(発作の兆候をチェックするため)

  2. その男性は心臓発作を起こして間もなく死亡したが、その際に心臓が停止する30秒前と後の脳の活動が記録された

 

みたいな経緯で得られたものです。かなり偶然に入手できたデータなわけですね。

 

 

研究チームいわく、

 

我々は、死亡時の900秒間の脳活動を測定し、心臓が停止する前後の30秒間に何が起こっているかを調査することに焦点を絞った。

 

とのこと。もちろんたった一人のデータですが、類似の研究がまったくないって点で非常に面白いですね。

 

 

さて、この87歳男性の脳にどのような変化が見られたかと言いますと、

 

  • 心臓が動かなくなる直前と直後で、ガンマ振動と呼ばれる特定の神経振動帯が確認され、ほかにもデルタ、シータ、アルファ、ベータ振動のような他の振動帯にも変化が見られた

 

だったそうです。ガンマ波は最も速い脳の振動で、主に注意と意識のレベルが高まったときに発生しやすい傾向があったりします。高次の認知機能に関連した脳波でして、集中、夢想、瞑想、記憶の検索、情報処理、意識的な知覚を行っているときに特に活発になるんですよ。

 

 

もちろん、この結果だけでは、87歳男性が死の間際にどのような体験をしたかはわからないんだけど、ざっくりと予想すると、

 

  • ガンマ波は、しばしば記憶のフラッシュバックと関連しているため、臨死体験をした人が「走馬灯を見た!」と報告するケースが多いのは事実なのかもしれない

 

  • 臨死体験をした人がよく語る、「満足感がわきあがった」「肉体からの魂が抜け出した」「長く暗いトンネルの中を素早く移動した感じ」「明るい光の中に入った感じ」もガンマ波で説明できるかもしれない

 

ぐらいのことは言えそうであります。研究チームいわく、

 

臨死体験には2つのタイプがある。1つは脳の左半球に関連するもので、時間感覚の変化や飛行しているような印象を受けるのが特徴だ。2つ目は右半球が関与するもので、霊を見たり、霊と交信したり、声や音、音楽が聞こえたりするのが特徴だ。

 

臨死体験に種類がある理由は不明だが、生きている最後の瞬間に脳が一種のオーバードライブ状態になるのが原因なのかもしれない。ただし、これは人間が死ぬまでの間に脳の活動を生でモニターした初めてのケースであり、また単一であるため、注意が必要である。

 

とのこと。まだまだ謎だらけな研究テーマですけど、この結果だけを見る限り、「人間が死ぬ瞬間は意外と穏やかで楽しいものなのかも?」って可能性が示唆された感じでよいですねー。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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