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筋トレで寿命を伸ばす最適なトレーニング時間は? 筋トレをしすぎると逆に健康に悪いのでは?のメタ分析

 
 

筋トレが体にいいってのは疑いようがないところですが、まだよくわからないのは、

 

  • 健康に暮らすための筋トレの最低ラインはどこまで?

 

ってポイントです。以前には「1週間に1回20分もかからないトレーニングでもいいのでは?」みたいな話もありましたけど、いまいち精度が高い研究がなかった感じなんすよね。

 

 

が、そんな状況下で、早稲田大学、東北大学、九州大学の先生方がナイスなメタ分析(R)を発表してくれていて、とても勉強になりました。

 

 

これは「どれぐらい筋トレをすれば健康になれるの?」ってのを調べてくれたもので、ざっくり内容をまとめておくと、

 

  • 2012年から2020年にかけて発表された16件の研究をまとめている
  • 研究の多くはアメリカで行われているが、他にイギリス、オーストラリア、日本などもふくまれる
  • 調査の期間は最長で25.2年ぐらいで、参加者は263,058人

 

みたいになってます。出版バイアスの可能性があるので、ちょっと結果を過大評価するリスクはありますが、我々筋トレ好きにはまことにありがたい内容だと申せましょう。

 

 

で、結論はこんな感じになってました。

 

  • 42,133人が死亡した7件の研究において、筋トレは全死亡のリスクを15%有意に低下させる可能性が認められた

 

  • 週に40分の筋トレを行った人が、もっとも筋トレによる全死亡リスクの減少効果を得られていた

 

  • 心臓や血管の病気については7つの研究があり、257,888人の参加者のうち16,056例が、筋トレによってリスクが17%低くなっていた。この関係にはJ字型の関係が観察され、毎週60分運動している人に最大の効果が見られた

 

  • 筋トレは癌リスクも12%有意に低下させる可能性があり、週30分の筋トレをした人に最大の効果が見られた

 

  • 糖尿病のリスクも筋トレによって下がる。具体的には、週60分までの筋トレでリスクが低下し、そこから少しずつ効果が減少していった(ただし、筋トレを続けるほど糖尿病リスクは下がり続ける)

 

  • さらに、有酸素運動と筋トレを組み合わせて行った場合、健康への効果はさらにブーストし、全死亡リスク、心血管疾患のスク、癌リスクがそれぞれ40%、60%、28%ずつ低下した

 

ということで、筋トレで心疾患、癌、糖尿病のリスクが下がり、有酸素運動と合わせて行うことでさらに高い効果を得られるんだ、と。有酸素+筋トレで全死亡リスクが40%低下するってのはすばらしいですねぇ。

 

 

が、ここでは気になるポイントも示されてまして、

 

  • 筋トレは週 30〜60 分の範囲で最も病気のリスクが低くなるが、筋トレの総時間が週 130~140 分を超えると、糖尿病以外へのメリットは認められなくなり、むしろリスクが高くなる傾向も見られた

 

だそうです。筋トレにはおそらく健康効果があるんだけど、やりすぎると健康効果が得られなくなるどころか、逆に健康に悪い可能性もあるわけっすね。 ギャー!(私はだいたい週に180分ぐらいの筋トレをしているので)

 

 

確かに筋トレのしすぎで体を壊している人も何人か見かけてはいるので、「あり得る話かもなー」とも思うんですけど、週に130~140 分超って数字はマッチョには辛いラインでしょうね。研究チームいわく、

 

全死亡、心血管疾患、全癌の予防に最適な量の筋トレが存在する可能性が示唆された。

 

とのこと。もともと筋トレが苦手な人にとっては「週に30〜60分ぐらいでいいならならやってみるか……」ってモチベーションを高めてくれる良い研究じゃないでしょうか。

 

 

個人的には、この結果をもとに週の筋トレ時間を減らすべきかは難しいところでして、この研究チームも、

 

高ボリュームな筋トレの健康効果を検証するためには、大規模な研究が必要である。また、高齢者に向けた筋トレプログラムびほとんどが、週2日以上のペースで行われているというエビデンスにも注意を払う必要がある。

 

と指摘しておられます。まぁとりあえず現在の筋トレペースは維持しつつも、もうちょいゆるめていくのも悪くないかな……ぐらいに考えておこうかな、と。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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