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今週末の小ネタ:オリーブオイルで癌リスクが下がる?野菜が多い食事で脳が大気汚染に強くなる?酒を飲んでも人見知りは解決されない?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

オリーブオイルで癌リスクが下がるかも?のメタ分析

オリーブオイルが体に良いのは間違いないところですが、新しいメタ分析(R)では、さらにオリーブオイルで消化器系癌、乳癌、上部消化管癌、尿路系癌の発症リスクが下がるかもしれないぞー、という話になっておりました。

 

 

まぁオリーブオイルによる癌リスクの低下は過去のメタ分析(2011年)でも報告されてまして(R)、「オリーブオイルを摂取すると癌リスクが減るんじゃないか?」とは言われてきたんですけど、その後もかなりな量の関連研究が発表されているので、新しくメタ分析が行われたのはまことにありがたいことですね。

 

 

で、今回の研究は45件の観察研究をまとめたもので、そのうち37件はケースコントロール研究(17,369人の症例と28,294人の対照)、8件はコホート研究(総コホート数929,771人中の12,461人の発症例)だったとのこと。もっとも多く研究されている癌は、消化器癌(15件)、乳癌(14件)、上部気道癌(6件)、泌尿器癌(6件)だったらしい。

 

 

また、研究の約2/3は実験の質が高く、残りの研究(1件を除く)は品質が中程度だったそうなんで、なかなか信頼性も高くてよろしいのではないでしょうか。その上で、分析の結論をまとめると、こんな感じになります。

 

  • オリーブオイルの摂取量が多い人は、少ない人と比べた場合、あらゆる種類の癌の発症リスクが31%低かった
  • サブグループ分析では、オリーブオイルの摂取量が多い人は、最低レベルの人と比べて、消化器癌の23%、乳癌の33%、上部気道癌の26%、尿路癌の54%のリスク低下と関連した
  • ただし、研究チームは、解析全体と乳癌と消化器癌のサブグループにおいて、有意な出版バイアスを検出した(つまり、オリーブオイルに都合が良い結果が出ている可能性がある)

 

ってことで、31%とはかなり良い数値が出てるんじゃないでしょうか(出版バイアスがあるとはいえ)。この研究だけだと、1日に飲むべき最適なオリーブオイル量などはわからんのですが、やはり偉大な油だなーってのがあらためてわかった感じですね。

 

 

 

野菜が多い食事で大気汚染から脳を守れるんじゃないか説

大気汚染の恐ろしさは衆目の一致するところで、過去にも「大気汚染は体だけじゃなくて心も病ませるかも?」やら「PM2.5が多いところに住んでると鬱病になるリスクが10%上がるかも?」などのデータがあったりしたわけです。

 

 

この問題を根本から解決するには引っ越しするしかないわけですが、新しいデータ(R)では、「野菜を増やすと脳機能の低下を予防できるのでは?」って結論になってて良い感じでした。

 

 

ここで取り扱っているのは「PM2.5」の問題で、直径2.5マイクロメートル以下の粒子からなる大気汚染が多い地域に住む人ほど、認知機能が下がってしまうんじゃないか?とは昔から言われてきたんですよね。他方で、野菜が多い食事が認知機能の向上に役立つとも昔から言われてきたので、野菜がPM 2.5の問題に効果があるのではないか?と考えられるんですよ。

 


というわけで、この前向きコホート研究では、野菜が多い食事がPM2.5汚染による脳機能の低下にどんな影響を与えるかどうかをチェック。調査のスタート時に認知機能が正常だった中国の高齢者(65歳~110歳)6,525名を対象にしてまして、

 

  • 参加者が住んでいる場所の衛星写真を調べてPM 2.5にどれぐらいさらされているかを調べる
  • みんなの食事を訪ねて、いつもどれぐらい野菜を食べているのかを調べる。動物性の食品を摂取する頻度が高いほどマイナス点となり、植物性食生活のスコアが下位(低い)または上位(高い)のどちらかにランク付けする
  • Mini Mental State Examを使って認知機能低下のリスクを調べ、年齢、性別、学歴、60歳以前の主な職業、経済状態といった要因を調整する

 

って感じでみんなの大気汚染に困ってるレベルと、認知機能の低下リスクを比較したとのこと。平均の追跡期間は5.6年だったそうです。

 


で、結果は研究チームの読みどおりで、

 

  • PM2.5への曝露量が1立方メートルあたり10マイクログラム増加するごとに、認知機能の低下リスクがグループ全体で10%高くなる
  • この時、普段から野菜をあまり食べていない人の場合は、PM2.5による脳機能の低下リスクが13%になり、野菜を多く食べている場合は7%になった

 

という感じだったそうな。まー劇的な違いってほどでもないですけど、とりあえず新宿住まいの私としては、もっと野菜を食べようってモチベーションが上がりましたねぇ。

 

 

 

酒を飲んでも人見知りは解決されないし、二日酔いで不安を感じやすくなる問題

人見知りは二日酔いで不安を感じやすいぞ!」って話(R)が出ておりました。いまではほぼ酒を飲まなくなった私ですが、あいかわらず人見知りは全開なので、これは気になるデータっすね。

 

 

この研究は、97人の参加者を対象にしたもので、人見知りとアルコール使用障害リスクの関係を調べたものです。ここでいう人見知りは「シャイネス」と表現されてまして、社会不安の軽度な状態だと定義されております。昔から「社会不安が大きい人ほどアルコール依存症発症になりやすい」ことが知られてるんで、おそらく人見知りにも同じことが言えるのではないか、と。

 

 

実験では、参加者に「社交的な集まりに参加してくださいねー」と指示し、その上で全体を無作為に2つのグループに分けております。

 

  1. 好きなようにアルコールを摂取してもよい

  2. ずっとシラフのままで社交を続ける

 

その上で、研究スタート時、実験中、実験の翌日に、参加者全員の人見知り度、不安レベル、二日酔いレベルなどを測定したところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • アルコールを飲んだところで、内気な人の社交不安が解消されるわけではなかった
  • というか、むしろ実験中にアルコールを摂取したシャイな人ほど、翌朝の二日酔いの際に不安を経験する傾向が見られた
  • さらに、二日酔いの不安を感じている内気な被験者ほど、アルコール使用障害の症状を示す可能性が高かった

 

うーん、なるほど。アルコールを飲んでも社交不安が解消されないってのは、よくわかるなぁ……。

 

 

研究チームいわく、

 

多くの人が、コミュニケーションの不安をやわらげるためにお酒を飲んでいるのは有名だが、この研究は、それが翌日に悪影響をおよぼす可能性を示唆しており、内気な人ほど二日酔いと不安の経験が多くなる。

 

これらの知見は、二日酔いの不安が、アルコール問題を発症する可能性を示唆している。

 

とのこと。要するに、私のように内気な人見知りは、不安の増大などの深刻な二日酔い症状を経験しやすく、そのせいでさらにアルコール使用の障害リスクが高まってしまうのではないか、と。これは気をつけねば……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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