PM2.5が多いところに住んでると鬱病になるリスクが10%上がるぞ!という嫌なメタ分析の話
大気汚染は体に悪い!なんてのはもはや言うまでもなく、さらに近ごろよく聞くのが「PM2.5などが多い地域で暮らすとメンタルを病むのでは?」みたいな話です。どうも大気汚染が多い地域ほど精神疾患の発症率が高い傾向があるらしいんですよ。一説には、世界人口の90%以上がWHOの勧告レベルを超える大気汚染にさらされてると言われてまして、これが事実なら結構な問題なわけです。
最も、この問題についてはまだざっくりした観察研究しかなかったんですが、新しいデータ(R)は「大気汚染でどこまで精神は病むのか?」問題にがっつり取り組んでくれてて有用でした。
これはロンドン大学によるメタ分析でして、「大気汚染とメンタルヘルス」について調べた研究から精度が高めな25件をピックアップ。粒子状物質(いわゆるPMね)とうつ病、不安、双極性障害などの関係をまとめてくれております。なんせ大気汚染とメンタルについて調べた研究はまだ少ないんで、非常にありがたいっすね。
でもって、なにがわかったかと言いますと
- PM 2.5に6カ月以上さらされてると、不安とうつ病のリスクは上がる
- PM 2.5濃度が10 µg/m3増えるごとにうつ病のリスクは10%上がる
- PM10に短期間さらされただけでも、自殺のリスクは上がる
- PM 2.5を44 µg/m3から25 µg/m3に減らせば、世界のうつ病は15%減らせる
というわけで、なかなか怖い話になってますね。幸いにもここ数年のあいだ都内ではPM濃度が少しずつ減ってるみたいですが(R)、いっぽうでは「自分が20代だったころって、安全レベル以上のPMを体内に取り込みまくりだったんだな‥」とか思って少しヘコみました。
ともあれ、まだまだインドとかは激しくPMが高かったり、ヨーロッパの一部も安心できない状況だったりはしますんで、海外旅行の際にはご注意ください。というか、こないだの北朝鮮旅行とか、かなりのPM2.5を吸い込んだ気がしております(笑
もっとも、大気汚染でメンタルをやられちゃうメカニズムについてはまだ不明な点も多いんですが、いまのところは、
みたいな流れが想定されております。まぁ体に悪いものは脳にも悪いと考えるのが自然ですわな。
研究チームいわく、
大気汚染が人々の健康に悪影響を及ぼしていることはすでに知られており、心臓や肺の病気、脳卒中、認知症のリスク上昇に至るまで、数多くの身体的健康リスクを高める。さらに今回のデータは、大気汚染が精神の健康にも重大な害を及ぼしている可能性を示しており、空気をきれいにする必要性がさらに高まっている。
とのこと。まぁ日本のPM濃度についても、ここ数年で改善しているとはいえ、WHOが推奨する10μg/m3って基準にはまだ達してないんで、専用のマスクを使うなどして気をつけたいところです。
ちなみに余談ですが、同時期にMITが面白い調査(R)をしてまして、Twitterに書き込まれた2億1000万以上のツイート を分析したら、PM<2.5歳にさらされた人の書き込みは一様に幸福感が低い傾向があったんだそうな。これまたちょっとおもしろい話ですな。