今週末の小ネタ:自然で健康になる最低ライン、ミラーニューロンと共感
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
自然のメリットを得るための最低ラインとは?
自然がメンタルにいい!って話を「最高の体調」にさんざん書いてますけど、新しいデータ(R)は「自然とどれぐらい触れ合えば精神は改善するの?」ってポイントを調べてくれてて有効でした。
これはコーネル大学やメリーランド大学などの調査で、どんな研究だったかと言いますと、
- 「自然とメンタル」について調べた先行研究を調べまくる
- 日本やアメリカなどの大学生を対象にした155件の研究から、質が高い14件を厳選
- 全部をレビューして、自然が身体的なストレス、感情、注意力へ与える影響を調べる
みたいになってます。そんなわけで、なかなか質が高めな内容になってるし、なによりサンプルのほとんどが日本人の男性なのも参考になっていいんじゃないでしょうか(日本は森林浴の文化があるので、わりと良い研究が多い)。
で、その研究の結果をざっとまとめていくと、
- 10〜30分ぐらい自然の光景を見る、または自然のなかにたたずむかウォーキングすると、ストレスホルモン(コルチゾール)が優位に減少する
- 都市部にいる人と比べた場合、自然のなかにいる人は心拍数が下がり、コルチゾールも減り、血圧も下がり、副交感神経が活発になる。ついでに、主観的な冷静さ、快適さ、リフレッシュ感も大きく増える
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さらに自然の中で約50分ほど過ごすと、集中力、気分、血圧、心拍数が最大レベルまで改善される
- ここで言う「自然」は森林や海でなくとも、公園や緑地帯で十分
みたいになるそうで、たった10分でもメリットは得られるし、時間が50分になるとかなりの良い影響をゲットできるみたい。これは手軽でよろしいですなー。
研究チームいわく、
プラスの効果が得られるまでそれほど時間はかからない。10分も自然に触れれば十分だ。
どのような勉強に取り組んでいる学生であっても、どれだけ大量の仕事をしている成人であっても、すべての人が毎日自然に触れる、あるいは少なくとも週に数回じょど自然に触れるだけでもメリットが得られるだろう。
ってことですんで、「1回10分以上を週2〜3回」ってのを最低ラインだと考えておけばいいんじゃないでしょうかー。
ミラーニューロンは人間の共感力とは関係ない!
ミラーニューロンは人間の共感力とは関係ない!というおもしろいメタ分析(R)が出ておりました。
ミラーニューロンってのは他人の動きを見ると発火する脳細胞で、一部の科学者が「これぞ人間の共感の中枢!」と主張してきた重要な細胞であります。「脳のなかの幽霊」(名著)で有名なラマチャンドラン先生なんかは、ミラーニューロンを「文明を形作ったもの」とまで表現してまして、かなり重要視されてきたんですよ。
ってことで、ディーキン大学などの研究チームは、「ミラーニューロンの活動と共感力」に関する先行研究をチェック。1000人以上の参加者をふくむ52件の論文をまとめてくれております。
だいたいの研究では、ミラーニューロンの活動、脳活動のEEG記録などを使ってまして、「運動共感」(他人の動きを自動的にまねること)と「感情的共感」(他の人が何を感じているかを察知すること)という2つのポイントとの相関を見ております。つまり、ミラーニューロンは共感力と関係あるのか?ってことですね。
で、その結論をまとめていくと、こんな感じになります。
- 運動共感については、ミラーニューロン活性と関連しているという証拠はなかった
- 感情的共感に関しては、下前頭回(IFG)のミラーニューロンの活性と相関してる弱い証拠はあるものの、全体的に見れば関係はなさげ
だったそうな。うーん、これは意外だったなぁ……。
まぁ既存のデータを見てると、それぞれミラーニューロンの測定法がバラバラだったりするんで、この結果をもって「ミラーニューロン意味なし!」とは言えないものの、個人的にはちょっとビックリしました。共感力は奥が深いですなぁ……。