バイノーラルビートで気分は改善する?頭は良くなる?って問題に関する2020年時点での見解とか
バイノーラルビートに関する新しい研究(R)が出てたんでまとめときまーす。
バイノーラルビートってのは、右耳と左耳でちょっとだけ周波数が異なる音を聞いて「強引に脳のシータ波を引き出そう!」みたいな技術のこと。シータ波は瞑想中に発生しやすい脳波なんで、バイノーラルビートにより睡眠が改善!とか記憶力が上がる!とか集中力アップ!とか、いろんなメリットが得られると言われてるんですよ。
興味がある方は、YouTubeにバイノーラルビートを使った曲がいくつか上がってますので、そちらを参考にしていただければと。いやー、怪しいですね。
では、果たして「本当にバイノーラルビートで脳はハックできるの?」ってことで、この新しい研究では、
- バイノーラルビートは脳の活動に影響を与えるの?
- 気分にはどんな影響があるの?
という2つのポイントを調べてくれております。具体的には16人の男女にバイノーラルまたはモノラルビートの音楽を聞かせて、脳波をチェックしたんだそうな。モノラルビートってのは、バイノーラルみたいに両耳から違うビートを聞かせるんじゃなくて、事前に2つのビートをミックスさせておく方法のことです。
で、その結果がどうだったかと言いますと、
- どちらのビートでも脳活動は同期したが、その効果はモノラルビートのほうが強かった
- ただし、どちらのビートでも参加者の気分は特に変わらなかった
- しかし、バイノーラルビートはクロス周波数の活動を増加させた(要するに、脳の違う領域がより多くのコミュニケーションを取るようになった)
だったそうな。これだけ見ると「やっぱ脳波が変わるんだ!」と思うかもしれませんが、これは別に特別なことではなくて、単に脳が刺激に反応しているだけだとお考えください。特定の周波数で点滅する光を見ている場合も脳は似たような反応をするんで、珍しいことではないんですな。
また、バイノーラルビートでクロス周波数の活動が増えた点はちょい気になるとこですが、まぁそれで何か良い影響が出るかといえば謎。いちおう「バイノーラルで気分が変わるかも?」と言ってる先行研究もいくつかあるんですが、今回の研究チームは「そりゃあただのプラセボ効果でしょう!」と結論づけてたりします。確かに今回の研究は過去のものよりいい感じでして、やっぱりバイノーラルビートには不利な印象っすね。
今回の結果についてチームいわく、
全体として、バイノーラルビートは皮質活動を同調させ、複雑なパターンを誘発した。が、バイノーラルビートのメリットや、バイノーラルビートがモノラルビートよりも特別な働きを持つかどうかは未解決の問題である。
とのこと。かなり穏当な結論になってますね。
もっとも、この研究では「バイノーラルビートで頭はよくなるの?」ってポイントは調べてくれてないんですが、実は2019年にメタ分析(R)が出てまして、だいたいこんな結論になってます。
- バイノーラルビートは、記憶力、注意力、不安感などの改善に中程度の効果を持つ
というとなんだか良さげな気もするわけですが、個人的にはこの結論には「うーんどうでしょう」って印象でして、
- なんせ予備的な研究ばっかで全体の信頼性が低い
- 結果の一貫性があんまない(一部の実験では、逆にバイノーラルビートで記憶力が低下したって報告もあったりする)
って感じなんで、やたらデータにノイズが多いなーって印象なんすよね。
そんなわけで現時点の話をまとめておくと、
- バイノーラルビートで特定の脳波を誘発できることはできるんでしょう
- といっても、それでなんか良いことがあるかといえばよくわからん
ぐらいになりましょうか。まぁひょっとしたら良い影響があるのかもなんで、試すのはアリかもしれません。