副腎疲労は万病の元?それともウソ?
副腎疲労は万病の原因?それともウソ?
副腎疲労に関するご質問をいただきました。
副腎疲労についてどう思われますか?本を読むと「万病の原因」のような説明がありますけど、「副腎疲労など存在しない」という専門家も多いようです。よくわからなくなってきました。
とのこと。確かに、ここ数年で「副腎疲労」の話をよく聞くようになりまして、いろんな不調の原因だとする書籍も増えてきましたねー。
そもそも「副腎疲労」とは、その名のとおり副腎が消耗しきっちゃった状態。副腎は腎臓の上にある小さな器官で、アドレナリンやコルチゾールのように大事なホルモンを分泌しております。こいつが上手く働かないと、いろんな不調が起きるのは当然でありましょう。
というと、「副腎疲労」の存在は確実のように思っちゃいますが、実は、いまのところ専門家のあいだでは認められていない概念だったりします。たとえば、18,000名の内分泌学者が参加する内分泌学会(1)によると、
副腎疲労は、実在の医学的な疾患ではない。長期的なメンタルと肉体的なストレスが副腎を消耗させ、それがさまざまな症状を引き起こすという科学的な証拠はない。
とのこと。かなりバッサリと断言してますねー。専門家は「副腎疲労はウソ!」と言ってるわけですね。
この時点で「副腎疲労は迷信!ハイ終了!」と言っちゃってもいいんですが、そこで簡単には終らないのがおもしろいところです。というのも、「副腎が疲れ切る」って現象はないものの、「HPA軸の異常」って状態なら存在するからであります(2)。
副腎疲労に限りなく近い症状はある
HPA軸は、脳の視床下部→下垂体→副腎って流れでつながっている、人体の大きなシステムのこと。おもにストレスを処理する働きをしてるんですけど、あんまりにも精神的なプレッシャーや肉体の疲れが続くと、一気にホルモンのバランスが崩壊していくんですな。
その結果、どんなことが起きるかというと、
- 朝起きるのがつらい
- 疲れが取れない
- 塩辛いものが無性に欲しくなる
- だるい感覚(エネルギー不足)が強い
- 日常的なことがとても疲れる
- 低血圧
- 低血糖
- 性欲の低下
みたいな感じ。さらに具体的な仕組みについては、「なぜダラダラと仕事をやってる人は死亡率が高くなるのか?」などが参考になるかと思います。
実際、ネットを見ると、この「HPA軸の異常」のことを「副腎疲労」と呼んでいる人もいまして、その意味では「副腎疲労はある!」と言えなくもなかったりします(ほぼ言葉遊びに近いですが)。
HPA軸の異常を診断するのは難しい
とはいえ、このへんの区別はあくまで専門的なもの。一般人にとって大事なのは、「副腎疲労って考え方が役に立つの?」ってとこでしょう。副腎疲労って考え方を使うことで、わたしらの生活が本当に改善しないと意味がないわけです。
が、残念ながら、この点についても「副腎疲労」って考え方には、あんまり意味がなさそうであります。というのも、いまのところ「副腎疲労」や「HPA軸の異常」を正しく判断する方法が少ないんですよ。
現時点では、唾液のストレスホルモンを計測する方法が一般的なんですが、2009年のレビュー(3)などを読みますと、どうにも精度が悪い模様。唾液のストレスホルモンと、血中のストレスホルモンがいまいち対応してないみたいなんですな。
同じように、副腎疲労の明確な診断基準も確立していないののも大きな問題であります。上に並べたように、副腎疲労の症状ってのはあまりにも一般的なものばかりなんで、「この現象が起きれば副腎疲労かも!」とも言いづらいんですよ(4)。
明確な診断法がなければ、明確な治療法もないのは当然のこと。その意味で、「副腎疲労はヤバい!」って話は、「ストレスはヤバい!」と言ってるのと変わりがないってことになっちゃうんですな。 うーん、残念。
まとめ
以上の話をひとことで言えば、
- 一般人が副腎疲労を気にしても無意味!
ってことです。もちろん「HPA軸」は重要なポイントなんんですけど、なにせハッキリした診断法がないわけですから、「この不調は副腎疲労なのか…」と悩むだけ時間のムダというもんでしょう。
まぁ「HPA軸の異常」は慢性的なストレスが原因で起きることが多いので、結局は「日ごろからストレス対策をしておこう!」っていういつもの結論ですね。どうぞよしなに。