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「パワーポーズ」の生みの親が「パワーポーズ」を否定しちゃった件

Superman 11

 

パワーポーズの生みの親がパワーポーズを否定

こないだ、「パワーポーズの効果が怪しくなってきたよー」って話を書きました。

 

 

軽くおさらいすると、「パワーポーズ」ってのは「わざと自信がありそうな姿勢を取る」心理テクニックのこと。たとえば両手を腰に当てて仁王立ちするだけで、なぜか自信がわいてくるというんですな。これは2010年の実験(1)で確認された現象で、TEDの動画から有名になったネタであります。

 

 

ところが、近年の追試(2)では同じ現象がほとんど確認されず、パワーポーズの効果に疑問符が出てきたからサァ大変。「〈パワーポーズ〉が最高の自分を創る」の著者であるエイミー・キャディ博士が、がんばって反論をしていた段階だったんですね。ここまでが前回までのあらすじ。

 

 

そんな状況下、今度はカリフォルニア大のダナ・カーニー博士が、パワーポーズをボロクソに否定する文書(3)を発表したもんで、またも衝撃が走っております。

 

 

というのも、カーニー博士は、2010年のオリジナル論文の共著者なんですよ。つまり、パワーポーズの生みの親がパワーポーズディスに回ったわけですね。



 

とにかく統計処理が甘かった

カーニー博士が否定派になった理由はいろいろありますが、ざっくり言っちゃうと「統計処理が雑だった」の一言に尽きる感じ。

 

 

たとえば、

 

  • 参加者に「どれだけ力強さを感じたか?」を聞く際、いろんな質問の仕方をして、もっとも効果が大きそうなものを採用した
  • パワーポーズの効果を確かめるときに参加者の量をいじったため、実態よりも統計的に有意になるようにしていた(いわゆるP値ハッキング)

 

みたいな感じ。統計ミスとしてはベタな内容ですけど、このへんはオリジナル論文を読んだだけじゃわからないですからねぇ。おそろしや。

 

 

パワーポーズの効果を信じていない

その結果、カーニー博士がどんな結論を出したかというと、

 

  1. わたしは「パワーポーズ」の効果を信じていない。その効果が現実にあるとも考えていない。
  2. わたしはもうパワーポーズの効果を研究していない。
  3. 他の人にパワーポーズの研究をするのも勧めない。 
  4. もはや自分の授業でもパワーポーズを教えていない。
  5. 今後はメディアでパワーポーズについて語らないし、すでにここ5年間は語っていない(懐疑論がでてくるよりずっと前からだ)

 

うーん、かなりバッサリ。もはや「パワーポーズ」は虫の息の状態になった感じであります。この内容を発表するのは勇気がいったろうなぁ…。

 

 

まとめ 

そんなわけで、パワーポーズについては、

 

  • パワーポーズでは自信はつかなそう
  • 結局は、もともと自信がある人ほど、良い姿勢になりやすいってだけの話っぽい

 

ぐらいに考えといたほうがよさげ。残念ですが。

 

 

にしても、P値ハッキングの問題は防ぎようがないんで、いろいろ難しいところ。とにかくいろんなタイプの実験を見て、大まかな傾向を捉えていくしかないよなーと、あらためて思った次第であります。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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