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今週半ばの小ネタ:低糖質ダイエットは癌リスクを高める? 美容アイテムでホルモンバランスが変化? ビタミンDは認知機能を改善する?


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

    

 

 

 
低糖質ダイエットは癌リスクを高めるんじゃないの?説

低糖質ダイエットの功罪については賛否がいろいろあるんですが、新しいデータ(R)は「癌リスクが高まるかもだぞ!」という嫌な結果になっておりました。

 

 

これは日本の45歳から74歳までの男女90,171人を対象にした前向きコホート研究でして、低糖質ダイエットと癌リスクとの関係を評価したものです。具体的には、普段からどんな食品をどれぐらい食べているかをアンケートで調べて、すべての参加者が過去1年間に食べた138種類の食品や9種類の飲料の摂取頻度と量を評価したんだそうな。

 

 

でもって、このデータをもとに、各参加者の低糖質ダイエットスコアを算出したところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 中央値で17年ほど追跡したところ、低糖質ダイエットのスコアが高い(=糖質の摂取量が少ない)ほど、あらゆる部位の癌のリスクが8%高くなった

 

  • ただし、糖質の摂取量が少ない人は、胃がんのリスクは19%低かった

 

  • 動物性の低糖質ダイエットスコアが高い人(=糖質を減らして牛や豚からタンパク質を摂取している人)は、あらゆる部位のがんリスクが8%高く、胃がんリスクが10%低く、大腸がんリスクが11%高く、直腸がんリスクが24%高く、肺がんリスクが16%高い傾向があった

 

  • 植物性の低糖質ダイエットスコアが高い人(=糖質を減らして野菜からタンパク質を摂取している人)は、スコアが高いほど癌リスクが13%低かった

 

ということで、以前から「低糖質ダイエットって癌リスクが上がるのでは?」と言われてたんですけど、それはおそらく糖質の代わりにレッドミートの消費量が上がるからではないか……ということですね。

 

 

一方で、大豆やブロッコリーなどからタンパク質を摂取した場合は逆に癌リスクが減るようで、これも従来のデータと一致しているところではあります。そう考えると、やっぱ「肉をたんまり食おう!」系の食事法はやっぱ危なそうだよなーと思うわけですが。

 

 

ちなみに、ここで著者チームは、「低糖質で胃癌リスクが下がるのは、高タンパク食が胃酸分泌を増やしてくれるので、N-ニトロソ化合物の生成が起きにくくなるからでは?」と仮定しておられました。なるほどねー。

 

 

 

美容アイテムでホルモンバランスが変わっちゃうのでは?説

ローション、石鹸、化粧品、ヘアケア製品などの一部には、どうにも危なそうな成分が入っているのは周知のとおりでございます。具体的には、フタル酸エステル、ビスフェノールA、パラベン、トリクロサン、ジオキサンといった成分が有名っすね。

 

 

さすがに近年の日本製品には見かけなくなってきた気もしますが、これらの化学物質の多くはホルモンバランスに悪影響をおよぼす可能性がありまして、いまだに気をつけておいたほうが良いのは事実でしょう。そこで新しいテスト(R)では、妊娠中の女性がこれらの商品を使ったらどうなるかを調べてくれておりました。

 

 

具体的には、プエルトリコで行われた調査データを使っていて、妊娠中の参加者1,070名(平均年齢27歳)を対象に、母体の血清ホルモン値とパーソナルケア商品の使用量を自己申告で測定したんだそうな。ここで調査の対象になったパーソナルケア商品は、香水/コロン/フレグランス、石鹸、ローション、化粧品、マニキュア、シャンプーおよびヘアコンディショナー、ヘアスプレー、その他のヘア製品(ヘアブリーチ、リラックス剤、ムース、染毛剤など)、シェービングクリーム、マウスウォッシュが含まれていたそうな。

 

 

で、結論はこんな感じです。

 

  • 染毛剤やムースは、すべての性ステロイドホルモン(性ホルモン結合グロブリン、エストリオール、プロゲステロン、テストステロン)のレベル低下と相関があった

 

  • マウスウォッシュの使用は、性ホルモン結合グロブリンとプロゲステロンのレベルの上昇と相関していた

 

  • 香水の使用は、プロゲステロン/エストリオール比の低下と甲状腺刺激ホルモン濃度の上昇と相関していた

 

  • 
ヘアケア製品、マウスウォッシュ、香水の使用は、妊娠中のホルモンレベルの変化と相関していた

 

ということで、全体的になにがしかの変化は見られた感じっすね。もちろん、これは海外の話なんで日本のケアアイテムには当てはまらないし、妊娠中の女性だけが対象だし、ここで確認された変化に長期的な悪影響があるのかも不明であります。ただ、気をつけるに越したことはないんで、ご利用の際は成分表のチェックはしておきたいとこっすな。

 

 

 

ビタミンDは認知機能を改善するか?

毎度おなじみビタミンDに関する新たなデータ(R)のお話です。これは「ビタミンDサプリは認知機能を改善するか?」をテーマにしたこの系統的レビューで、20のRCTをまとめて大きな結論を出してくれております。昔から血中のビタミンD濃度が低いと認知症やアルツハイマー病になりやすいとは言われてきたんですけど、果たしてビタミンDサプリで認知機能が向上するかどうかってのは依然として不明だったんですよ。

 


全体の試験への参加者数は30人から4,113人のあいだで、年齢層は18歳から90歳まで。ビタミンDのサプリ使用量は1日400IUから54万IUまで幅広く、ある試験では60万IUの単回筋肉注射も使われてたりします。

 

 

また、参加者の血中ビタミンD濃度は30nmol/L(12ng/mL)以下から100nmol/L(40ng/mL)以下までで、追跡期間は1.5カ月から8年のあいだ。認知機能は24の認知テストで評価されいたとのこと。全体的にだいぶ幅がありますねー。

 

 

その結果、どんなことがわかったかと言いますと、

 

  • ビタミンDサプリは5つの試験で認知能力の改善が報告された
  • ただし、10つの試験では結果がバラバラ(あるテストは改善したが、他のテストでは改善しないか、逆に悪化も報告された)
  • 5つの試験はサプリに効果なしと報告しており、1つの試験ではビタミンDサプリを飲んでも認知障害の発生率に差がないことが示された

 

ということで見事にバラバラですね(笑)。「ビタミンDは脳の働きに効果がある!」「いや、なんの効果もない!」って報告がわりと均等にそろってまして、これと言った結論を出すのはかなりムズいですなぁ。

 

 

まぁ、ここで使われた研究は実験手法が違いすぎるので(ビタミンDの投与量、被験者の年齢、追跡期間、ビタミンD濃度など)、結果もおのずとバラバラになってしまうんでしょう。おそらくビタミンD濃度が低い人には意味があるだろうと思うんですが、そこらへんは今後の課題っすね。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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