7万人の日本人を調べてわかった「体に良いタンパク質と悪いタンパク質」の話
昔から「動物性タンパク質と植物性タンパク質はどっちがいいの?」みたいな議論がよくあるわけです。牛肉からタンパク質をとるのと、豆腐やワイルドライスなどからタンパク質をとるのでは、健康レベルに違いが出るのか?って疑問ですね。
これについては過去にいろいろと観察研究が出てまして、いまのところの傾向としては、
- 動物性タンパク質は慢性病や早期死亡率の増加と関係しがち
- 植物性タンパク質は病気になるリスクの低下と相関しがち
みたいなデータが多いはず。基本的には「植物と魚のタンパク質がいいよ!」ってのが、多くの研究の一致するところではないかと。
もっとも、これらの見解は欧米で行われたデータをベースにしていて、「日本でも当てはまるの?」って問題はまだ疑問が残るところではありました。アジアと欧米は食習慣がだいぶ違いますからねぇ。
ってことで新しい研究(R)は、ガッツリと日本人のデータを分析してくれていて、非常に使い勝手がよろしいです。
これは国立がん研究センターが1995年から集めたデータセットを使ったもので、参加者の数は70,696人。年齢は45〜74歳のあいだに散らばっていて、
- 日ごろからどんなものを食べているかをかたっぱしからチェック
- 2016年までのあいだに癌や心疾患、糖尿病などで亡くなった方々のデータと比べる
みたいな手順になってます。非常に規模が大きな研究でよろしいんじゃないでしょうか。
では、分析の結果がどうだったかを見てみましょうー。
- 動物性タンパク質の消費量には、総死亡率の変化とはハッキリした相関が出なかった(つまり牛や豚を食べると健康にいいか悪いかはよくわからない)
- よく植物性タンパク質を食べる人は、植物性タンパク質を取らない人より早期死亡率が13%低い。特に心疾患で死ぬ確率が16%低くなる
とのこと。欧米では「動物性タンパクで不健康に!」みたいな結論が多いんですけど、日本ではそこまで変わらないみたいっすね。一方で植物性タンパク質のメリットは世界で一貫してる感じでしょうか。
研究チームいわく、
今回の研究は、レッドミートや加工肉を植物や魚から得られるタンパク質に置き換えれば、長生きの健康効果が得られる可能性を示した。
とのことで、ここでは「魚のタンパク質も健康には役立つよー」って視点が強調されておりました。
では、具体的にどれぐらい肉を置き換えればいいのかと言いますと、
- いつも食べてる牛肉や豚肉のうち4%を植物性タンパク質(または魚)に置き換えるだけでも、早期死亡率は46%下がる!ついでに癌による死亡率も50%下がる!
だったそうです。全体のたった4%を置き換えればいいだけなら、肉好きの方が試すのもラクでいいっすねぇ。具体的なタンパク源としては、
- 豆類
- テンペ
- ほうれん草
- じゃがいも
- ナッツ類
などを使って行くと良い感じです。もっとも、植物だけで必要なタンパク質を満たすのは結構ムズかしいので、
- ベースのタンパク質は鶏肉か魚にしておく(鶏肉も総死亡率の上昇と相関しないことが多い)
- そこに、植物性タンパク質をちょっとでいいから取り入れる(ただし普段からほうれん草とかジャガイモを食べておけば問題なし)
- 牛肉や豚肉もいいけど、そこまで増やさない方がいいかも(個人的には普通の牛や豚ならなんの問題もないと思ってますが、いちおう無難な対策として)
- 加工肉が良くないのはあらゆるデータで一致してるので全撤去
といった方向性で考えていくのが良いかと思いますね。どうぞよしなに。