メンタルを病み始めた人は"あれ"が変化するぞ!というメタ分析の話
ひとことで「メンタルを病んだ状態」と言ってもいろいろありまして、
- 大うつ病(とにかくメンタルがヘコむ)
- 統合失調症(幻覚や妄想にとりつかれる)
- 過食症(ついつい食べ過ぎてしまう)
みたいに症状もさまざまなわけです。一見するとこれらの症状はバラバラな気がするわけですが、「実はメンタルを病んだ人には大きな共通点があるのだ!」ってなデータ(R)が出てて勉強になりました。
これはマクマスター大学の研究で、過去に行われた「精神病の特性ってどんな感じなの?」って問題について調べた43件のデータをまとめたメタ分析になってます。ここで取り扱われたメンタルの病気は、
- 大うつ病
- 双極性障害
- 境界性パーソナリティ障害
- 統合失調症
- 摂食障害
- 神経性大食症
- 神経性無食欲症
- PTSD
などでして、「これらの症状に共通するポイントはなに?」ってとこを調べてくれたんですよ。なんだかありそうでなかった研究でいいですねぇ。
さて、その結果として何がわかったかと言いますと、
- たいていの心の病には「時間割引率が高い!」という共通点がある
だったんだそうな。「時間割引率」は「最高の体調」でも取り上げた重要ポイントで、書籍から軽く引用すると、
時間割引率は行動経済学で使われるアイデアで、「将来の価値をどれだけ割り引いて意思決定を行うのか?」の割合を意味します。
たとえば、あなたが「いま1万円手に入るのと、1年後に1万1000円手に入るのと、どちらを選ぶか?」と質問され、いまの1万円を選んだとしましょう。方程式にすれば「1万1000円÷X=1万円」なので、1年間の割引率は10%という答えが弾き出されます。あなたは年に1割もの利益を捨てて、いまの1万円を選んだわけです。
みたいになります。やや小難しい説明ですが、すごーくざっくり言ってしまえば「時間割引率が高い」ってのは「目の前の報酬に弱い」のとほぼイコールです。ほかにも「セルフコンロトールが効かない状態」とか「衝動性が強い状態」みたいな言い方もできますね。
従来の研究によれば、時間割引率が高い人はわりと人生がハードモードになりがちなことがわかってて、たとえば薬物やアルコール依存、肥満、破産などのデメリットをもたらすことが知られております。まぁセルフコントロールができないんだから、人生のあらゆる面でひずみは出ますよね。
また、そのほかに得られた知見としましては、
- なかでも双極性障害、境界性パーソナリティ障害、統合失調症の3つは時間割引率の高さと相関が大きい
- 神経性無食欲症だけは、時間割引率の低さと相関していた
だったそうです。神経性無食欲症ってのは、何も食べずに病的に痩せちゃう症状ですが、これだけは逆にセルフコントロール能力がありすぎるのが問題になってるみたいっすね。
研究チームいわく、
さまざまな精神の病に共通する要素が理解できれば、それぞれの障害の特徴と類似をより深く理解するのに役立つだろう。その結果、メンタルの病気の予防にも使えるはずだ。
とのこと。つまり、今回のデータを見る限り、「昔より衝動に負けやすくなったなー」とか「がまんが効かなくなってきたなー」とか思い始めたら、メンタルヘルスが低下しているサインかも?とか考えてみるのもありな気がしますねー。