目標を達成したければ人に言え!しかし、どうでもいい相手には何も言うな!という実験の話
「目標を達成したければ人に言え!」みたいなアドバイスがよくあるわけです。貯金したいなら目標の貯金額を誰かに伝え、禁煙したいなら友人などに「もう吸わない!」と宣言するようなやり方ですね。俗に「プレコミットメント」と言われる手法のひとつっすね。
ちょっと想像しただけでも、自分だけで目標を抱えるよりは、誰かにシェアしたほうがモチベーションはわきやすくなるはず。「あの人はこちらの目標を知ってるのだ……」って気持ちがプレッシャーになりますもんね。
で、新しい論文(R)は、「ゴールの達成率が激増する目標のシェアの仕方とは?」ってとこを掘り下げててくれていて有用でした。
これはオハイオ州立大学の研究で、171人の学生に以下のようなタスクを指示しました。
- PCモニタに表示されたスライドバーの目盛りを50まで移動させ、その作業を時間内にできるだけ何度も行なってください
まったく謎のタスクですけど、とりあえずこの作業は研究チームが適当に作ったものなんでスルーして構いません。
さて、1回目のタスクが終わったあと、被験者には再び同じ作業を指示したんですけど、ここで研究チームは全体を3つのグループに分けてます。
- 自分でタスクの目標を決めて、そのゴールを「高いスーツを着た”自称エキスパートの研究者”」に伝える
- 自分でタスクの目標を決めて、そのゴールを「安い服を着た”自称2流大学の研究者"」に伝える
- 自分でタスクの目標を決めるが、そのゴールを誰にも伝えずに2回目の作業に挑む
要するに、この研究チームは、「人間は『自分より偉い』と思った人に目標を話したほうが効果がデカいんじゃない?」と思ったわけですね。なかなかいやらしい仮説ですな。
すると、その結果は研究チームの読みどおりでして、
- 偉い人に目標を話したグループは、実際にゴールを達成する確率がはねあがった
- どうでもいい人に目標を話したグループは、ゴールの達成率に変化がなかった
って結論だったんだそうな。つまり「尊敬できない相手にゴールをシェアしても無意味!」って話でして、非常に人間らしい結論だなーとか思うわけです。
研究チームいわく、
たいていの状況では、ゴールを他人とシェアすることによって大きなメリットを得ることができる。しかし、あくまであなたが尊敬している人にシェアしないと、そのメリットは得ることができない。
なぜなら、あなたがゴールを達成しないと、その尊敬する人物から低い評価を受けてしまいかねないからだ。
とのこと。ちなみにこの研究では、実社会で働くビジネスマンにも調査を行なってまして、やはり「自分のキャリアゴールを尊敬できる人に話している人ほど、実際に高い地位についている傾向が高い」みたいな結果も出てたりします。「好きな人に嫌われたくない!」って気持ちがモチベーションを生むわけですな。
もっとも、あなたが自分の意見を誰に話そうが気にしない人の場合は、なにかをやり抜こうという気持ちは生まれないだろう。ゴールのコミットメントとは、他人の目をうかがう気持ちを活かせるかどうかがすべてだからだ。
逆に言えば、尊敬する人に認められたいあまり、それが不安を呼び起こしてパフォーマンスの低下につながる可能性もなくはない。しかし、これは今回の研究では確認されなかった。
ってことで、この説が正しいのなら、普段から他人の目を気にしがちな人ほど、尊敬できる人にゴールをシェアしたほうがいいのかもしれませんねぇ。