加工肉とか牛肉とか豚肉を食べる量をいつもの半分にしたら、どれぐらいのメリットがあるの?みたいな研究の話
加工肉(燻製とか熟成肉とか塩漬け肉とかハムとかベーコンとか)とレッドミート(牛肉、豚肉、羊肉など)は体に悪い!って観察研究は結構あって、心疾患とか癌とかいろんな病気のリスクを上げるんじゃないの?とか言われてたりします。
ただ、ほとんどの観察研究は「レッドミートと加工肉は体に悪い!」って傾向を報告してるものの、ラボ実験では「いや!実は体にいいこともある!」なんて結果も出てたりするんですよ。特に最近のメタ分析(R,R)では「加工肉とレッドミートを食べても心疾患リスクは上がらないのでは?」なんて考え方も出てきてたりして、わりと混迷を極めてたりします。
その理由は謎としか言いようがないんですけど、おそらくは、
- 体重、喫煙および身体活動のような変数以外にも、結果に影響を与える要素がある?
- 介入試験では、参加者の特性、期間の長さ、統計的方法など、試験デザインの違いが結果に影響を及ぼしてる?
- 実験以外で食べてる被験者の食事内容が違う?(たとえば、実験で加工肉を減らした分のカロリーを、別の加工食品で補ってるかもしれない)
みたいな問題が関わってるような気がしております。いやー、難しいもんですね。
ってことで新しい実験(R)では、「普段の食事から加工肉とレッドミートを50%減らしたらどうなる?」ってとこをあらためてチェックしてくれてていい感じでした。
これは37人の健康な男女を対象にしたもので、週に少なくとも4回以上は加工肉とレッドミートを食べてる人を選んだらしい。実験期間は12週でして、
- みんなに加工肉とレッドミートを50%減らすように指導する(参加者には肉の代用食品やら乾燥豆を配給したそうな)
- 全員には食事日記をつけてもらい、ちゃんと加工肉とレッドミートを減らせたかをチェック
- 全体の総コレステロール、HDLとLDLコレステロール、中性脂肪、体組成、インシュリン感受性などを調べる
みたいなデザインになってます。おもに心疾患リスクを高めそうな指標を調べたわけっすね。
でもって、12週間後の結果はこんな感じです。
- 総コレステロールについては、男性と女性のあいだで有意な違いが検出されており、男性は-13%まで低下したが、女性には変化が見られなかった
- LDLコレステロールの変化についてもやっぱり男性と女性の間に差が確認されており、男性は有意に低下したのに女性は低下しなかった
- HDLコレステロールについては、男性でわずかに低下したが女性は低下しなかった
- 中性脂肪については男女を問わず変化が見られなかった
ってことで、全体的には男性にはよい変化が見られたのに、女性には目立った変化がないという不思議な結果になっております。うーん、謎だ……(女性は検定力が足りなかっただけかもですが)。
また、お気づきの方も多いでしょうが、この実験にはいろいろと問題点もありまして、
- コントロール群がないしランダム化もされてない(つまり精度はわりと低い)
- あとから最初の研究意図と違う分析をしていて、中性脂肪の全体的な変化がわかりにくい
みたいなとこがあって、今度のテストでは全く違う結果が出てもあんま驚かないかも。
ってことで、やや判断が難しいとこではありますが、
- とりあえず、現時点では「やっぱレッドミートと加工肉は制限するのが無難だよねー」って見解が一般的ではある(R)
- 手近な実験を見てると、レッドミートと加工肉の制限にはそこそこのメリットがありそう(男女差がある理由は謎)
ぐらいのことは言えるかもしれません。まぁ全体的な傾向としては、「以前に言われてたよりは加工肉とレッドミートは危険じゃないのかもなー」って気もしてきましたが。