ADHDの対策って何がベストなの?というメタ分析のお話(ただし薬物治療は除く)
ADHDってのは難しいもんでして、なにせまだ原因がハッキリしてないんで「これ!」といった解決策もないわけです。なので現時点では、
- ADHDの特徴をちゃんと理解して、そこに適した行動を取る
- 抗ADHD薬を使って症状を抑える
みたいな介入を使うのが定番になってるかと思います。
そんな状況下、数あるADHD対策のなかでベストなものはどれなの?ってのを調べたメタ分析(R)が出ておりました。
これは1980年から2017年の間に発表されたデータから、信頼性が高い18件を抜き出したもので、
- ニューロフィードバック:脳波計を使って「いま好ましい脳波が出たぞ!」ってフィードバックを行い、脳に良い状態を学習させる
- 認知行動療法:自分の考え方や行動のパターンを把握して、間違ったものを少しずつ修正していく(マインドフルネス瞑想もふくまれる)
- 認知トレーニング:「ATENTIVmynd」のようなゲームを通して、脳の実行機能を高める訓練をする
- エクササイズ:ランニングやスポーツを通して、脳のホルモンバランスを調整する
いみたいになってます。いずれも昔からADHDへの効果には定評がありまして、どれがベストなのかは気になるところなわけです。
それぞれの研究は4歳〜50歳のADHD患者さんを対象にしていて、コンピュータテストなどを使った認知機能の測定法で、
- 精神的に柔軟性があるかどうか
- 衝動を抑制できるかどうか
- 注意力をコントロールできるかどうか
- ワーキングメモリの働きはどうか
- 実行機能の働きはどうか(計画と推論はうまくできるかどうか)
といったポイントを調べております。では、その結果をざっくりまとめてみると、
- どのテクニックを使っても、ADHDは中程度から大程度の効果量で改善した
- なかでも最大の効果を示したのはエクササイズだった
- 2番手は認知行動療法とニューロフィードバックだった
- 3番手は認知訓練だった(それでも中程度の効果量は出ている)
という感じになってまして、どの方法でもちゃんと効果はあるものの、エクササイズがもっとも改善しやすかったらしい。これはなかなか強い証拠っすね。
もっとも、エクササイズのなかにも効果の高低は確認されてまして、
- 球技や格闘技のように複雑な動きが必要なスポーツほどADHDへの効果は高い!
だったそうな。格闘技みたいに身体を使いこなさねばならないエクササイズは、それだけ実行機能の良いトレーニングになってるんでしょうな。
ってことで、ADHDには運動がかなりよさげなわけですが、同じ時期に出た別の報告(R)をみてると、「残念ながらADHDの子供ほど運動していない割合が多い」なんて報告も出てたりします。
こちらは2016年に実施された全国小児健康調査のデータを使った横断研究で、結果はざっくりとこんな感じ。
- ADHDと診断された小児の14.3%は、週当たりの身体活動がゼロだった(診断を受けていない小児は8.2%)
- ADHDと診断された小児は、非ADHDの小児よりもエクササイズの調整オッズ比が21%低かった
- ADHDの診断と週あたりのエクササイズ日数との間には有意な逆相関が存在する(つまり、運動量が多い子供ほどADHDと診断されるケースが少ない)
エクササイズの効果はかなーり確かな感じなので、これだけ運動不足なケースが多いのはツラいとこっすね。というかエクササイズで脳が改善するのは非ADHDの人間も同じですんで、老いも若きも男も女も、ぜひ定期的に複雑度の高い有酸素運動をしてみてはいかがかと思うわけです。