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今週末の小ネタ:うつ病になりやすいか職業ワースト17、ちょっと明るい部屋で寝ても睡眠が死ぬ、リモートワークのせいで仕事量が激増


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

    

 

 

【要注意】うつ病になりやすいかもな職業ワースト17

私たちのメンタルが職業によって大きく左右されるのは 、「科学的な適職」にも書いたとおり。たいていの人は人生の大半を仕事に使うんで、そりゃあ当たり前ですよね。

 

 

ってことで、近ごろチェックした論文(R)では、「うつ病になりやすい職業ってどんなの?」ってのを調べてくれてて参考になりました。これはペンシルバニア州で働く214,413人を対象にした調査で、みんなのメンタルや仕事上のストレスを計測したうえで、どの仕事が病みやすいのかを調べたんですよ。

 

 

で、結論から言えば、ワースト17の職業はこんな感じになってました。

 

  1. 交通機関の運転手
  2. 不動産業者
  3. 社会福祉士
  4. 製造業
  5. 個人向けサービス
  6. リーガルサービス
  7. 家政婦
  8. 会員制組織
  9. 証券、商品ブローカー
  10. 印刷・出版
  11. 農業サービス
  12. 小売業
  13. 電気、ガス、衛生
  14. 特殊請負業
  15. 石油・石炭
  16. 一般商品小売業
  17. 自動車修理

 

なんでも公共交通機関で働く人々はメンタルが落ち込むことが多いらしく、研究チームはこんな指摘をしておられます。

 

うつ病の発症率が最も高かったのは、地方・郊外の交通機関および旅客輸送機関だった。この業界には、心臓病、高血圧、脳卒中の発症率が高いことがよく観察されている。その原因のひとつは仕事のストレスであることが多い。

 

とのこと。この調査は、あくまでアメリカで行われたものでして、日本で同じような傾向が出るかは不明なんですけども、なかなか興味深い結論じゃないでしょうか。

 

 

では、上記のワースト17に当てはまる職業に共通するポイントはどこなのかと言いますと、

 

  • いろんなタイプの顧客と頻繁に複雑なやりとりをしなければならないサービス業ほどメンタルを病む!

 

ってことだそうです。「感情労働」(頻繁に自分の感情を管理しなければならない仕事)が良くないってのはよく聞く話ですけど、あらためて「そりゃそうだよなぁ」って気がしますね。

 

 

さらに研究チームいわく、

 

うつ病が最も多い産業は、対人関係の衝突や難しい人々との出会いが多い産業である傾向がある。

 

というわけで、いかに他人との衝突がメンタルに悪いかがわかりますなぁ。

 

 

 

【要注意】ちょっと明るいだけの部屋で寝ても睡眠が死ぬかも

夜寝るときは部屋を真っ暗にして!ってのは「不老長寿メソッド」で強調したところです。睡眠を改善するためには室内が暗黒でなければならないってのはもはや常識でして、新しいデータ(R)でも同じポイントが示されておりました。

 

 

こちらはノースウェスタン大学などのチームが行った調査で、20人規模の小規模な内容になってます。実験に参加したのは健康な成人ばかりで、睡眠中に100ルクスの人工光を浴びた場合に、どんな生理的影響があるのかをチェックしたんだそうな。100ルクスの明るさについて研究チームいわく、

 

この程度の明るさであれば、周囲を見ることはできるかもしれないが、本当に快適に読書ができるほどの明るさではない。

 

とのこと。この研究では、すべての参加者が最初の夜は真っ暗な部屋で眠り、次の晩は半数の被験者がより明るい部屋で眠ったとのこと(照明は頭上に設置)。

 

 

その間、脳波の記録、心拍数の測定、数時間ごとの採血などを行ったところ、結果はこんな感じになりました。

 

  • 光を浴びながら眠ったグループは、一晩中ぶっ続けで心拍数が上昇したうえに、朝にはインスリン抵抗性が高まり、血糖値を正常な範囲に戻すのが難しくなった。

 

  • ただし、明かりのついた部屋で寝た人々をモニターしても、参加者は概して「よく眠れたと思う」と報告した

     

ということで、100ルクスぐらいの光を浴びると、本人には自覚がないんだけども身体には地味にダメージが出ちゃうみたいっすね。んー、恐ろしい。

 

 

ちなみに、薄暗い光でも身体ダメージが起きてしまうのは、交感神経が活性化しちゃうからだと考えられてます。緊張したり不安なときに活性化する神経っすね。

 

 

要するに、本人は眠っているにもかかわらず、脳と心臓は「警戒しなければ!」と思い続けており、そのおかげで睡眠中も軽い覚醒状態になってしまうわけですね。まー、かなり小規模な研究なので、長期的にどんな悪影響があるかは判断できないんですけど、普通に考えれば、毎晩いつも心拍が上がってたら長期的にも心疾患とかにつながりそうな気はしますな。

 

 

 

【要注意】リモートワークのせいで仕事量が激増してないですか?

在宅ワークが増えたせいで、みんな前よりも無駄な仕事が増えてないすか?」って報告(R)が、マイクロソフト社から出てておもしろかったです。

 


この調査では、マイクロソフトが自社の製品ユーザーのキーボード操作を追跡したもので、みんながどんな時間にたくさん働いて、どんな作業をたくさんやっているのかを計測したんだそうな。その結果、何がわかったかと言いますと、

 

  • 新型コロナによって在宅ワークが増えたおかげで、ほとんどの人は夕方以降にも仕事をするケースが増えた(夜10時の時点で、朝8時の時点とほぼ同じ量の仕事をする人が前より増えた)。

 

  • そのせいで多くの人は1日の労働時間が増え、2020年3月以降、平均労働時間は13%(約1時間)拡大し、平均時間外労働はその2倍に増加した。

 

  • さらに、ホワイトカラーの仕事ではミーティングの量が激増し、2020年の終わりには会議の数は以前の2倍に増えた。2021年もその量はさらに増え続けている。

 

ってことで、リモートワークのせいで働き方の柔軟性が上がったのはいいものの、そのせいで仕事量が増えた人が続出したらしい。

 

 

研究チームいわく、

 

人々は、パンデミック前に比べて、毎日250パーセントも多くのミーティングを行っている。つまり、コーディングや電子メール、文章作成など、他のすべてのことが後回しにされているのだ。

 

未来の仕事では、どの仕事を他者とリアルタイムに行うべきで、どの仕事ならいつやってもいいのかを考える必要がある。

 

とのこと。リモートワークのおかげで他者と共同でリアルタイムに行う仕事の敷居が下がり、これが無駄な会議の増加につながってるんじゃないか、と。この結果を受けて、調査チームは「1週間のうち2~3日は必ず会議のない日を作る」って提案をしてまして、その方が無駄に時間を使わずにチームの生産性を向上させることができるよーと提言しておられます。

 

 

言われてみれば、私もリモートワークのおかげで謎のミーティングが逆に増えたような気もしてまして、あらためて境界線を引き直さないといかんなーとか思っていたところでした。気をつけよう……。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。