このブログを検索




今週半ばの小ネタ:ビタミンDで睡眠が改善、サフランで睡眠が改善、色を変えられる照明で睡眠が改善


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

       

 

ビタミンDで睡眠が改善だ!というメタ分析

ビタミンDはいろいろすごい!ということで、個人的にサプリも開発してたりするわけです。それぐらいビタミンDってのは重要な栄養なわけですが、新たなメタ分析(R)では「ビタミンDって主観的な睡眠の質が改善するのでは?」って結論になっておりました。こりゃあいいですねー。

 


まぁ、もともとビタミンDが睡眠に効くって話はありまして、というのも ビタミンDはメラトニン(睡眠ホルモン)生成のコントロールにかかわってまして、ビタミンDが不足した人は睡眠障害のリスクが上がるって報告は昔からあるんですよ。 

 


というわけで、このメタ分析は、「ビタミンDのサプリがピッツバーグ睡眠質問表(PSQI)で測定した睡眠の質に影響するか?」ってのを調べてまして、過去の研究から7件をまとめております。そのうち3件がメタ分析に含まれていて、各研究の参加者は40~218人。実験の期間は8週間~12ヵ月で、ビタミンDの1日の投与量は1,000〜7,143IUだったそうな。1日7000IU以上ってのは、なかなかすごい量ですな。

 

 

その結果、メタ分析でどんな傾向が見られたかと言いますと、

 

  • ビタミンDは、プラセボと比べて睡眠の質を改善することが示された。
  • メタ解析に含まれなかった試験も見てみると、減量中の閉経後女性を対象にした場合は、ビタミンDを飲んでも睡眠の質は改善しなかったと報告されている。
  • 3つの事前事後テスト(すなわち、プラセボ群がない)では、3つともビタミンDの補給が睡眠の質を改善したと報告している。

 

って感じでして、とりあえずビタミンDのサプリで「よく眠れた!」っていう主観的な感覚は改善する可能性がありそうっすね。

 

 

とは言え、この研究は参加者の数が少ないし、ランダム化対照試験の数も限られているし、健康状態やベースラインの体内ビタミンDレベルにも大きなばらつきがあるしで、「限界が多いな!」って印象ではあります。さらに、いくつかの研究では、使用したビタミンDの形態(ビタミンD3なのかビタミンD2なのか)や、ベースラインおよび試験終了時の体内ビタミンD濃度の情報を提供してなかったりで、「ビタミンDと睡眠の研究はまだこれからだ!」というところでしょう。

 

 

その点で、今回の結果は慎重に解釈すべきなんだけど、個人的には「睡眠も改善されたらいいなー」ぐらいのノリで、今後もサプリを飲んでいこうかと思っております。

 

 

 

サフランで睡眠が改善だ!というメタ分析

サフランもこのブログの頻出サプリでして、とにかく「体内の炎症に効く!」みたいな報告が多いんですよ。個人的にはサプリを使うところまでは行ってないものの、近ごろ良い報告が多いのは間違いないんですよねぇ

 

 

で、こちらも新たにメタ分析(R)が出てまして、「サフランサプリで睡眠の質が改善するんじゃない?」って結論になってておもしろかったです。



このメタ分析は8件のランダム化比較試験(RCT)をまとめて大きな結論を出したもので、サフランによる睡眠の質への影響をチェック。試験には合計611人が参加してまして、そのうち359人にサフランのサプリを、252人にプラセボサプリを飲んでもらったそうな。

 

 

実験の期間は4~8週間ぐらいで、サフランサプリの投与量は1日14~100mgぐらい。一部には、サフランオイルを点鼻する試験も1件あったそうな。サフランの点鼻とかするんだなぁ……。

 


ちなみに、実験に参加した人は、不眠症の人、2型糖尿病の人、健康な人、オピオイド依存症の人などで、PSQIや不眠症重症度指数(ISI)、回復睡眠アンケート(RSQ)といった定番どころのテストを使って、サフランで睡眠の質が変わるかどうかを調べてくれております。その結果をざっくりまとめると、

 

  • サフランのサプリは、プラセボと比べてPSQI(睡眠の質)スコアを2.14ポイント、ISI(不眠症状)スコアを2.63ポイント、RSQ(回復度)スコアを7.05ポイント向上させた

 

  • サフランの点鼻試験を分析から除外すると、サフランエキスによってPSQIスコアが2.08ポイント改善された(プラセボとの比較)

 

  • サブグループ分析によると、サフランの1日の投与量が多いほど、PSQIスコアがより改善される可能性が示された。

 

  • サフランサプリの目立った副作用はなかった。

 

みたいになってます。ということで、どうやらサフランは、統計的に有意な程度には睡眠を改善するかもしれないみたい。

 

 

もちろん、この試験だと「サフランが現実の睡眠改善に役立つの?」ってとこまではよくわからないのでご注意ください。いちおう「PSQIのスコアが3点以上ぐらい改善すれば、実際に効果を体感できるレベルで有効」だと言われたりするんで、今回の研究で報告された「平均2.14点」ってスコアはちょっと微妙なのかも?って気もしてくるわけですが。

 

 

ちなみに、この研究チームは、「サフランのおかげで不安が減って、それで睡眠が改善するんじゃない?」と指摘しております。というのも、このメタ分析に含まれる試験のうち3つに参加した被験者は、サフランのサプリを飲んだあとに「不安が軽減した!」と報告しているんですよ。

 

 

そう考えると、「夜になるとドキドキして眠れなくなるなぁ……」みたいな方は、サフランによってメリットを得られる可能性もあるんでしょうな。炎症抑制の効果も大きいし、飲んでみてもいいかな……。

 

 

 

色を変えられる照明で睡眠が改善する……かも?

色温度を変えられる照明ってあるじゃないですか。私の場合は「LIFX」ってのを使ってまして、こいつをスマホから設定すると、自動的に照明の色温度を変えてくれまして、夜明けや夕暮れをシミュレートした光で室内を照らしてくれるんですよ。室内の照明管理は睡眠を改善するための基本なんで、私としてはおすすめアイテムのひとつ。

 

 

でもって、新しいデータ(R)では、この手の色温度を変えられる照明が役に立つかどうかを調べてくれてて、参考になりました。

 



これは、14日間のパイロット研究で、大うつ病の入院患者さん58人を対象にしたもの。実験デザインはシンプルで、「標準照明」または「色温度を変えられる照明」のいずれかを使った寝室にランダムに割り付けたらしい。

 

 

ここで使われた照明は、色温度のコントロールが可能なLEDライトを使用し、午前6時25分になると少しずつ強度と色温度(2,192から3,588ケルビンまで上昇)を上げながら夜明けをシミュレート。続いて、午後8時になると自動的に薄暗くなり、光量も色温度も2,192ケルビンまで徐々に下がるように設定したらしい。ここらへんの明るさ設定は、非常に参考になりますねー。

 

 

でもって、すべての患者に専用デバイスをつけてもらって睡眠活動を記録したところ、

  • 「色温度を変えられる照明」を使った部屋では、「標準照明」の部屋に比べて睡眠時間が長く、起床時間が早くなる傾向があった。

 

  • また、「色温度を変えられる照明」には、睡眠効率の2.4%の改善と夜間覚醒の短時間化が認められた。入院期間や薬の使用については、有意差は認められなかった。

 

って結果だったそうです。これはあくまで中等度から重度のうつ病の患者さんに限った実験なんで、果たしてメンタルが健全な人でも同じ効果を得られるかは謎なんですけど、なかなか見込みのある報告が出てきましたねぇ。

 


スポンサーリンク

スポンサーリンク

ホーム item

search

ABOUT

自分の写真
1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

INSTAGRAM