今週末の小ネタ:ネットで攻撃的な人の特徴、ザクロメチャクチャ優秀説、恋愛パートナーの判断力
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
ネットで攻撃的な人ってどんな人なの?の精度が高い結論
「ネットの【荒らし】ってどんな人なの?」ってのを調べた、史上初の系統的レビュー(R)が出ておりました。やたらとネットを荒らす人とか、やたらネットでバトルを展開する人ってのは、果たしてどんなパーソナリティなのか?って話ですな。
で、ここでは「荒らし」について調べた先行研究から627件のデータをピックアップし、そこから52件の研究データを統合(メタ分析では48件)。参加者の総数は22,179人で、ほとんどが米国とヨーロッパで実施された研究を使っております。また、参加者の「荒らし」レベルについては、反社会的な言動が多いかどうか、ネットで他人に攻撃的な言動をするかどうか、サイバーストーキングをするかどうか、リベンジポルノをするかどうかってあたりでチェックしたそうな。
そこでどんな結果が出たかと言いますと、
- サディズムとオフラインでの攻撃性(r = 0.30, 95%CI = 0.29, 0.32)および、オンラインでの攻撃性(r = 0.40, 95%CI = 0.38, 0.41)の関係には中程度の効果量があった。
- 怒りと積極的な攻撃性に中程度の効果量が認めらた。要するに、サディストは、なんの警告もなしに罪のない他者を攻撃することもあるということを意味する。
- サディズムとトローリング(オンラインで他人に嫌がらせをすること)との間には強い関連性があった。
- 低レベルのサディズムであっても、暴力とは関連がある。つまり、環境さえ整えばば、多くのサディスティックな人は攻撃的な行動をとる。
だったそうです。簡単に言えば、ネットで荒らしを行う人ってのは、単純にサディズムの気質が大きいんだってことですな。わかりやすい結論ですねぇ。
念のため、サディズムってのは、快感や喜びを得るために、他人を支配し、危害、屈辱、苦しみ、痛みを与える性格のことです。一般に、日常的なサディズムが強い人たちは、暴力的なゲームをしたり、バイオレントな映画を見たり、いたずらをしまくったりするといった傾向があるとされております。
過去の研究でも、サディスト的な「荒らし」の人たちは、他人が苦しむ姿を見ることに喜びを感じ、「誰かが罰せられる」とか「道徳的に悪いことをする」に対してよりポジティブな反応を示し、自分の行動が自分に返ってこないように最善を尽くす傾向があることが示されてますからねぇ。とにかく、ネットで誰かから急に攻撃的な言葉を浴びせられたら、「サディストと事故った!」ぐらいに思っておくほうがよさそうっすな。
ザクロってアンチエイジングにめちゃくちゃいいんじゃないの?
「ザクロってかなり優秀なフルーツなのでは?」というのは、よく聞く話であります。このブログで紹介したところだと、
ってのがあります。ザクロはポリフェノールが多いので、いろんなメリットを得られる可能性がデカいんですよね。
ってところで、新しいメタ分析(R)では、「ザクロの抗酸化パワーってどれぐらいなの?」ってあたりを調べてくれておりました。言わずもがな、活性酸素は老化の元凶とされる物質で、体内の細胞、タンパク質、脂質に酸化的損傷を与えることがあり、このプロセスは酸化ストレスとして知られております。そのせいで、活性酸素は、がん、糖尿病、心血管疾患といった疾患を引き起こすと考えられてたりするんですな。
その点で、ザクロは抗酸化パワーが強いポリフェノールが豊富なんで、ザクロジュースやザクロエキはアンチエイジングに効く可能性が大。そこで、このメタ分析では、ザクロの抗酸化ストレスの効果を調べた13のランダム化比較試験をまとめたうえで、
- カプセルタイプのザクロエキス(250mg~250g)
- 液体のザクロエキス(10~500mL)
のいずれかを使ったら、体内の抗酸化力のマーカー(MDA、TBARS、TAS、GPXなど)がどうなるかについて、わりと精度が高い結論を出してくれております。試験期間は3週間から12カ月だったとのことで、そこそこ長期研究も入ってるのがいいですね。
で、以下に結果です。
- ザクロの摂取はTBARSを減少させ、GPXとTACによって測定される抗酸化状態を増加させた。
- しかし、ザクロの摂取は、MDA、ox-LDL、POX、TASには影響を与えなかった。
- 期間が3ヶ月以上の研究では、酸化ストレスバイオマーカーに有意な効果が見られましたが、期間が3ヶ月未満の研究では効果が見られなかった。
- ザクロ摂取のメリットは、健康な人と不健康な人の間で差がなく、サプリメントの形態(すなわち、ジュースまたは錠剤)にも関係がなかった。
ということで、おそらく3カ月を過ぎてザクロを摂取し続けると、体内の抗酸化マーカーにはあきらかな変化があるんじゃないか、と。まぁザクロを日常的に摂取するのは難しいので、実践しようと思ったらサプリが中心になりそうですが。
もちろん、このメタ分析に含まれる研究は少ないし、参加者の属性、使用したザクロの量、研究期間などの点で大きく異なっているので、まだまだ確定的な結論を出すのは難しいので、そこもご注意ください。とはいえ、ザクロが優良食材なのは間違いなさそうなので、チャンスがあれば食べてみるのが吉。
恋愛のパートナーは、こちらの能力をかなり正確に判断しているぞ!
「科学的な適職」でも書いたように、意外と自分で自分のことはわからないもんです。誰でも自分の能力やスキルについては目が曇るバイアスを持っているので、実は他人のほうがこちらを性格に見積もってたりするんですよね。
そんな状況下、新しいデータ(R)は、「恋愛のパートナーはこちらの能力を適正に判断できてるの?」ってあたりを調べてくれてておもしろかったです。俗に「恋は盲目」などと言いますが、果たしてこの言葉は正しいのか間違ってるのか、と。
これは18歳から45歳までの238人の男女を対象にしたテストで、少なくとも6ヶ月の恋愛関係にある人だけを選んだらしい。実験では、すべての参加者の知能、創造性、感情的な能力をテストで測定し、さらにそれぞれのパートナーや友人と知人にも協力を頼み、参加者の知能と創造性テストの結果を推測してもらったとのこと。
その結果、なにがわかったかと言いますと、
- たいていの人は、自分自身の能力を予測する能力は中程度だった。参加者は自分の能力を過大評価するというより、むしろ自分を過小評価する傾向が強かった。特に、数学的な知能に関しては、自分の能力を正確に判断することができた。
- 恋愛中のパートナーは、親しい友人や知人に比べて、測定したすべての領域において、相手の能力をより正確に予測することができた。
だったそうです。要するに、恋愛パートナーはこちらの知性や創造性をそこそこ正しく推測する力があり、それは友人や知人よりも上なのかも?って感じですね。
研究チームいわく、
本研究の結果は、友人や恋愛パートナーのような非常に親しい人は、私たちの様々な認知・非認知能力について、少なくとも中程度の精度で評価できることを示唆している。また、どちらのタイプの情報源も、私たち自身がアクセスできない自分の能力に関する情報を提供してくれるかもしれない。つまり、恋愛のパートナーは、少なくとも親しい友人や知人以上に自分の能力を理想化することはない。
とのこと。少なくとも恋愛パートナーの目が曇るってことはないし、それどころか自分では把握しづらい「対人関係の能力」については、誰よりも精度の高い答えを返してくれるんじゃないか?ってことですね。
まぁこの研究はわりと小規模なので、もうちょい追試を重ねないとなんとも言えないとこではありますが、とりあえず「自分のことは他人に聞け!」っていう基本的な考え方には違いが出なさそうであります。