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ザクロで疲れにくい体になるかもしれないぞ!という実験の話

 

ザクロって結構なパワーがあるんじゃない?って話が昔からあるんですよ。なんせザクロの実には大量のポリフェノールが入ってまして(プニカラギンってやつ)、その抗酸化力については疑いがないところなんですよ(R)。

 

 

そうなると当然「ザクロってエクササイズに役立つんじゃないの?」って仮説が頭に浮かぶわけですが、新たな論文(R)ではそこらへんを調べてくれてて有用でした。

 

これは普段から有酸素運動をよくやってる26人の男女を集めた実験で、だいたい以下のようなデザインになってます。

 

  1. 最初の15日間のあいだ、参加者の半分には朝食のあとザクロ抽出物750mgを飲み続けてもらう(そのうちプニカラギンは225mg)
  2. その後、14日間はなにも飲まずに普通に過ごす(ウォッシュアウト)
  3. 続く15日間は、最初の15日にザクロを飲まなかった参加者に、同じ量の抽出物を飲み続けてもらう

 

いわゆるプラセボ対照二重盲検クロスオーバー試験(長い)ですね。参加者の年齢は平均35歳で、ザクロを飲む他にはこんなポイントをチェックしてます。

 

  • 最大酸素摂取量
  • 嫌気性代謝閾値

 

ざっくり言えば、最大酸素摂取量は有酸素運動の持久力や心臓の健康レベルを反映する指標で、嫌気性代謝閾値は「どれぐらい負荷が高い運動に耐えられるか?」ってポイントを示しております(厳密には違うけど)。

 

 

で、それぞれザクロを飲んで15日後に再び計測を行ったところ、

 

  • エクササイズで疲れ切るまでの時間が14%長くなった!(94秒)
  • 嫌気性代謝閾値に達する時間は10%長くなった!(55秒)

 

だったそうで、簡単に言えば「ザクロを飲んだら疲れにくくなり、激しい運動に耐えられるようになった!」みたいなことですな。

 

 

ただし、一方で乳酸やクレアチンキナーゼ、CRPといった数値には有意差がなかったみたいなんで、どうも体内の炎症や筋肉のダメージにはあんま意味がないのかも?って感じっすね。いちおう近年のレビューでは「ザクロが筋肉n回復に効く」と言ってるのもあるんで、ここらへんはよくわからんですが。

 

 

これが事実なら「運動パフォーマンスアップのためにザクロを食べよう!」みたいな結論になるわけですけど、個人的には「まぁ試しにザクロジュースを飲むぐらいなら害もないしいいのでは?」ぐらいの表現にとどめておきます。というのも、

 

  • なんせ変化が出てない数値がいろいろと多い

 

  • 26人のサンプルだと検定力はまだまだだし、いろんな変数を見てるんで偽陽性かもしんないし、偽陰性の可能性もあるよなぁ

 

  • 最大の問題として、この実験で使ってる量のプニカラギンを摂取するには、市販のザクロジュースを2リットルは飲まねばならない計算になるんだよなぁ……

 

みたいな難点があってなんとも言えないんですよ。なかでもエクササイズのたびに2リットルものジュースを飲むのは現実的じゃないですからねぇ。とりあえず現時点では、「『ザクロがいい!』というすごーく弱い証拠が得られたんだなー」ぐらいにお考えください。

 

 

それでもザクロのパワーを運動で試したい!という方は、結局サプリを使うしかなかろうと思われます。どうぞよしなに。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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