ストレスを感じたときは「三人称のセルフトーク」を使うと脳の働きがベストになるかよー
このブログでは、定期的に「迷走神経を刺激したいもんですねー」みたいな話を書いております。
迷走神経ってのは、体の中で最も長い神経で、腸や心臓、肺などの全身の重要な器官と脳をつないでおります。副交感神経の働きにも重要な役割を果たしているほか、呼吸や消化機能、心拍数などに影響を与えて、メンタルの健康にも大きな役割を持ってるんですよ。
これまでの研究では、迷走神経の活動レベルが高まると、副交感神経が活性化されて、ストレスを受けても体が早くリラックス状態に復帰できることがわかってたりします。その他にも、体内の炎症が減ったり、消化不良が改善したりといったメリットを得られまして、とにかくいろんな効能が期待できるんですな。
さらに具体的には、「迷走神経ハッキング完全ガイド」や「耳から迷走神経を刺激すると学習のスピードが2倍になるかもだ!」などをご覧いただくといいでしょう。くわしいことを考えたくないときは、「迷走神経がストレスには重要なんだなー」ぐらいに覚えておくといいかもしれません。
でもって、迷走神経の反応を最適化する方法として、近ごろよく言われるようになったのが「三人称のセルフトーク」です。こちらも当ブログでは定番のワードで、簡単にまとめると、
- なにかストレスがかかる問題が起きたら、「○○さん(自分の名前)は、今イライラしていますね!」「○○さん(自分の名前)!そんなことは大したことないよ!」みたいに、三人称で自分にアドバイスする!
みたいな心理テクニックのことです。さらに詳しくは「意志力を手軽にアップさせる秘技サードパーソン・セルフトーク」「三人称で自分に話しかけるとお菓子やジャンクフードの誘惑に強くなるぞ!」などをご覧ください。手軽に使えるわりには効果が高くて、よいテクニックじゃないかと。
このテクニックと迷走神経については、まだそこまで明確な証拠があるわけでもないんですけど、関係がありそうなところをまとめると、以下のようになります。
- 2014年にミシガン大学アナーバー校などが行ったレビュー(R)では、サードパーソン・セルフトークに関して7つの研究を実施。すると、自分のことについて考える際に、一人称ではなく代名詞や自分の名前を使うと、「自己の消失」が促進され、ストレス反応が低下する」と結論づけている。これは、三人称を使うことで自己の意識が薄れ、そのおかげでストレスが緩和されたものと考えられ、迷走神経の活性による働きも大きいと推測される。
- 2016年にウォータールー大学などが行った実験(R)では、研究チームいわく、
「自己分散型の視点(観察者の視点で自分の経験について考えてみること)の効果を調べた研究によると、自分の体験を自己から離れた視点から振り返ると、自己を中心に考えるよりも、客観的に経験を再構成することに集中するようになり、生活の中で起きる社会的なトラブルを解決するのに役立つ。
一般に、迷走神経の活性レベルが高いほど賢明な判断がしやすいのは、自己中心的な視点が減るのが原因だろうと思われる」
とのこと。ここからも、三人称視点で自分の体験を見なおすことにより、迷走神経が刺激されるんじゃないかと思われる。
いずれのデータも、「三人称のセルフトーク」と迷走神経の関係を明確に示したわけじゃないんですけど、両者につながりがある可能性は高いと申せましょう。
ちなみに、過去の研究では、迷走神経の調子が良い人ほど、実行機能や推論の能力が高い傾向が見られてたりします。このようなメリットを得られるのは、
- トラブルに出くわすと、ストレスで交感神経系が活性化され、心身が覚醒状態に入る。
- しかし、そこで迷走神経が活性すると、感情のコントロールが可能となる。
- 以上の2つが組み合わさり、覚醒と鎮静のあいだに収まったスイートスポットのような状態が生まれる。
ってメカニズムが働くからだと考えられております。迷走神経のおかげで、神経のバランスが取れた状態が生まれるわけですな。
ってことなんで、次になにか嫌なことがあったら、三人称の視点から自分のトラブルを見つめ直してみると吉。
- 「◯◯さんは、いま上司に怒られてイライラして、自分をやたらと責めているが。実際には、まわりのやつも同じぐらい定期的に怒られてるし、そこまで悩むほどかねぇ」
みたいな感じで、自分のことを他人として見つめつつ、自分にアドバイスを送ってやるような気持ちで語りかけてみるといいんじゃないでしょうか。どうぞよしなに。