今週の小ネタ:期待を超える活躍は私たちの印象を上げるか?マッチングアプリの欠点とは?兄弟姉妹が多いとメンタルヘルスが悪化する?
ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。
期待を超える活躍は私たちの印象を上げるか?
「約束を守る」のは、対人関係をうまく進めるために欠かせないポイント。約束を守らない人が信頼感を得られるはずがないですからね。
で、新しく出たデータ(R)では、「約束を守りすぎるほど守ったらどうなるのか?」ってとこを調べてくれてて面白かったです。著者は「人の心は読めるか?」のニコラス・エプリー先生で、ずっと人に与える印象について調べている先生ですね。
「約束を守りすぎるほど守る」ってのは、たとえば「アマゾンが約束よりも早く配達してくれた!」「締め切りよりも速く原稿を出してくれた!」みたいな行為を意味します。事前の約束を守るだけじゃなくて、それ以上のサービスをすることで、私たちの印象はさらに良くなるのか?って問題を調べてくれたんですよ。
実験の内容は簡単で、
- 参加者に難しいパズルを解くように指示し、その際に、困った時に別の人が助ける約束をする。
- 「約束した手助けをしない」と「約束以上の手助けをする」って2パターンの状況を設定して、みんながどんな反応を示すかを調べる。
って感じになります。約束を破るか、それとも約束を守りまくるかで、印象の違いが出るのかをチェックしたわけですね。
でもって、結果についてエプリー先生いわく、
約束以上の手助けをしたからといって、感謝やねぎらいのレベルはほとんど増えなかった。私はささやかなプラス効果を期待していたが、実際には約束以上の利益はほとんど得られなかった。
これは、私たちが約束を守るほうに大きな価値を置き、それ以上は望まないからかもしれない。
約束を守ることは、"客観的 "な価値以上に高く評価される。約束を守るということは、誰かのために良いことをしたというだけでなく、社会的な契約を果たし、自分が信頼できる人間であることを示したことになる。
とのこと。大半の人は、「この人は期待を超えることをしてくれるのか?」よりも「この人はちゃんと言ったことを守るか?」のほうに重きを置くので、約束より上のことをやるのかどうかは影響力がないんだ、と。気前がいいことが悪いって意味ではなく、人間は公平性を非常に重視するので、気前がよいことがプラスにならない場面があるんだってことなんでしょうな。
つまり、この研究から教訓を得るとすれば、
- 他人との良好な関係を維持するのに、追加の努力は必要ない。とにかく約束したことを実行すれば、人々は感謝してくれる。
- 他人は追加の努力に意識を向けないので、もし他人があなたの努力を評価してくれないからといって怒らないほうがよい。
って感じになるでしょうね。うーん、これは直感的にもわかるなぁ……。
マッチングアプリの欠点ってこれよねー
「マッチングアプリの欠点はこれだ!」って研究(R)がウィーン大学から出ておりました。まずは研究チームの結論から申し上げますと、
- マッチングアプリは過剰な量のプロフィールに触れねばならないので、パートナー探しが "強迫行為 “になりやすい。
- 膨大なパートナー候補にさらされることで、自責の念に駆られる可能性が高まる。
みたいになります。この結果は、16歳から25歳までの464人を対象にした調査から得られたもので、みんなのマッチングアプリの使用頻度やメンタルの状態などをチェックしたんだそうな。
分析の結果について研究チームいわく、
過剰にマッチングアプリを使う人は、そうでない人よりも、パートナー候補の数の多さに圧倒されていた。
また、アプリユーザーの多くは、マッチングした相手と実際にデートをすることはほとんどない、あるいはメッセージを送ることに抵抗があると認めている。
さらに、パートナー候補の選択肢が無限にあるため、マッチングアプリの利用量が多くなるほど、相手選びに対する期待値が高くなり、選り好みをする傾向があることもわかった。そのため、マッチングアプリの利用は、強迫行為を引き起こす原因になる。
とのこと。マッチングアプリを使いまくると、過剰な量のプロフィールに触れることになる、これが強迫的なメンタリティと自信喪失のリスクを高めるわけですな。
私たちの調査結果は、真剣な出会いを求めているマッチングアプリユーザーは、アプリの利用を制限し、"いいね "や "マッチ "の通知のような瞬間的な満足感に気を取られないようにすべきことを示唆している。
ということなんで、マッチングアプリをお使いの方は、ここらへんのポイントを意識していただくと良いかもしれません。
兄弟姉妹が多いとメンタルヘルスが悪化するかもだ
「兄弟姉妹が多いとメンタルヘルスが悪化するぞ!」って報告(R)が出ておりました。
この研究は、9,400人以上の中国人と9,100人以上のアメリカ人を調べたもので、どちらの国でも、青少年(平均年齢14歳)のメンタルヘルスを調べた内容になっております。その結論をざっくりまとめると、
- 中国の調査では、ひとりっ子供が最もメンタルヘルスが良かった。
- アメリカの調査では、兄弟がいない青少年、あるいは一人しかいない子供のほうがメンタルヘルスが良かった。さらには、兄弟が増えるほうがメンタルヘルスが悪く、特に兄弟姉妹が年上で年齢差がない場合に、よりメンタルヘルスが悪化していた。特に1年以内に生まれた兄弟は、平均して最もメンタルヘルスが悪かった。
って感じになります。兄弟姉妹が多ければ多いほど不幸になってしまうって話で、おもしろいもんですねぇ。
この結果について、研究チームはこう言っておられます。
理論的な説明のひとつは、『資源の枯渇』によるものだ。親のリソースをパイのように考えるなら、子どもが一人いれば、親の関心とリソースをすべてもらえることになる。
しかし、兄弟姉妹が増えると、それぞれの子供が両親から与えられる資源や関心が少なくなり、それが精神的健康に影響を及ぼすのだろう。
兄弟が増えるぶんだけ親の手が回らなくなるからじゃないの?ってことで、非常にシンプルな話ですね。
もちろん、この研究では、兄弟姉妹のメリットにも触れてくれてまして、
兄弟姉妹が多い人は、社会的スキルの向上や成人後の離婚率の低下と相関関係があることを示す研究がある。
とのこと。兄弟姉妹のおかげでコミュニケーションスキルが上がるので、成人後のパートナー関係も良くなるのではないかって話ですな。まぁ私は妹がいてもコミュ力は上がりませんでしたが……。