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タンパク質をたくさん摂るのはアンチエイジングに良いのか悪いのか?問題

 
 

アンチエイジングの世界には、昔から「タンパク質は老化を促進するのか、それとも老化を防ぐのか?」 という議論があるんですよ。 要点をざっくりまとめておくと、

 

  • 反対派:食事から 摂取するタンパク質を少なくすると、 体内に有害なタンパク質がたまらなくなり、 癌が増殖 しづらくなる。 事実、 筋肉のタンパク質を合成するための経路は、 腫瘍の成長を促進する働きもあったりする。 そのおかげで寿命が伸びる可能性がある。

 

  • 賛成派:食事から摂取するタンパク質を増やすと、 加齢に伴う筋肉量と機能の低下を 防ぐことができる。そのおかげで、いつまでも活動的な人生を送れるようになり、アンチエイジングに役立つ可能性がある。

 

という感じです。 どちらの意見も一理ありまして、 個人的にも悩まされるテーマの1つですね(例えば、世界の長寿エリアなどを見ていると、 意外とタンパク質の摂取量が少なかったりする)。

 

そんなわけで、 新しい研究(R)では、「健康的に歳をとる」 ためには、もっとタンパク質を摂取した方が良いのか、それともタンパク質を控えたほうがいいのかって 問題に対して割と良い研究を行ってくれていてありがたかったです。

 

ここでは、健康的な老化を「主要な慢性疾患がなく、精神的に健康で、認知機能または身体機能のいずれにも障害がないこと」と定義したうえで、 30〜55歳のアメリカ人121,700人を何十年にもわたって追跡したデータを分析してます。 基本的には、みんなの食事アンケートから普段食べているタンパク源とタンパク質の量を算出し、このデータを、 みんなの病気、メンタルの調子、脳機能の状態などと比べて、 アンチエイジングのためにタンパク質を増やすべきか減らすべきかをチェックしてますます。

 

それでは、この分析の結果を簡単に見てみましょう。 

 

  • 総タンパク質と動物性タンパク質の摂取量が3%増加するごとに、慢性疾患リスクが有意に高くなる

 

  • 乳製品のタンパク質と植物のタンパク質の摂取量が増えると、慢性疾患リスクが低くなることが示された(ただし有意ではない)。

 

  • 記憶力の低下に関しては、植物性タンパク質によって8%のオッズ改善が見られた。

 

  • 身体が満足に動くかどうかについては、動物性タンパク質、乳製品、植物性タンパク質の3つが、それぞれ5%、8%、41%ずつオッズが高くなっていた。

 

  • メンタルヘルスに関しては、植物性タンパク質を 増やした時のみ、良好な精神状態のオッズが16%高かった。

 

  • 脂肪、精製した炭水化物、動物性タンパク質を植物性タンパク質に置き換えると、健康的な老化の確率が22~58%高くなった

 

ということで、 この結果を、普通に受け止めれば「植物性タンパク質最強!乳製品も良い! 動物性のタンパク質はちょっと注意だけど良い!」 みたいになりますね。全体の結論としては、「タンパク質に賛成派」のほうに 有利な結論が出てるんじゃないでしょうか?

 

でもって、ここに個人的な感想などを付け加えておくと、

 

  • データを詳しく見ると、研究に参加した48,762人のうち、「健康的な老化の基準」をすべて満たしたのはわずか7.6%しかいない。「健康的な老化の基準」ってのは、 癌や糖尿病などの慢性疾患がないこと、記憶障害がないこと、身体がすべて機能していること、精神的に健康であること、など。 こうしてみると、高齢になってから、本当に健康でいられる人は ごく1部だと思われる(あくまでアメリカのデータですが)

 

  • このデータによると、 歳をとっても 発生しづらいのは「記憶の問題」で、次に「 メンタルヘルスの問題」「慢性疾患」が続く。逆に、 最も歳をとって発生しづらいのが「身体機能の問題」らしい(階段を降りれないとか、早く歩けないとか)。 要するに、 普段から運動していない人ほど、歳をとってから健康的な老化の基準を満たせないって ことことなので、 この意味では、タンパク質が重要になるのは当然かもしれない。

 

みたいになります。データを見ていると、「身体機能の制限」が 最もやばい原因 みたいなので、 健康的に老化するためには、タンパク質を余分に摂った ほうがいいんじゃないかと考えられるわけです。

 

さらに、「タンパク質の種類によって効果が異なる」って ポイントについても、感想を付け加えておきましょう。

 

  • このデータだと、植物性タンパク質に最も大きなメリットが観察され、次いで乳タンパク質と非乳製品の動物性タンパク質だった。

 

  • このポイントについては、「そもそも動物性タンパク質源(特に肉類)は いまいち健康に良くないからかも?」と考えられる。 ただし、 ソーセージやベーコンなどの加工肉が体に悪いのは間違いないが、 それ以外のレッドミート(牛肉や豚肉)や 鶏肉については、 普通に質が高いものを選べば問題はないと思われる(もちろん、料理の際に加熱しないのも前提)。

 

  • 第二に、植物性のタンパク質をよく食べる人は、そもそも健康的なライフスタイルを送っていることが多いため、動物性タンパク質が多い人よりも、健康面ではプラスの結果が出やすいのだと思われる(例えば、動物の肉をよく食べる人はフライドポテトも普通に食べそうだけど、 豆腐やブロッコリーをよく食べる人が、付け合わせでジャンクフードを食べるとは考えづらい)。

    また、多くの植物性タンパク質は、タンパク質だけでなく、食物繊維、微量栄養素、その他の植物性栄養素を豊富に含んでいる ことも多い。 そのおかげで、さらに植物性タンパク質に有利な結果が 出やすいのだと思われる。

 

というわけで、こちらに関しては、個人的には動物性タンパク質でも問題はないと思うのですが、植物性タンパク質を意識したほうが、どう考えても自然に健康的な食事になりやすいので、その分だけ アンチエイジングには有利だと言えましょう。

 

もちろん、これで全ての決着がついたわけではありませんが、私としてはやはり「歳をとるほどタンパク質を増やした方が良いんじゃないかなぁ」って 立場に傾いております。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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