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今週の小ネタ:AIでメンタル改善、メンタルに最も効く運動トップ6、人間関係で幸福になるにも「多様性」が大事


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

AIはメンタルヘルスの改善に役立つのか?

AIと会話するとメンタルが改善するぞ!」って話(R)が出ておりました。

 

これはReplikaって「AIフレンド」を使った研究で、このアプリと会話していくと、少しずつユーザーの特徴を学習して口調や性格がチューニングされていくらしい。

 

この機能を達成するために、GPT-3やGPT-4を含む大規模な言語モデルを採用し、さらには認知行動療法の方法論を取り入れて、深刻なメンタルヘルスの問題を抱えたユーザーに対しては、必要に応じて介入をしてくれるんだそうな。Replikaは聞いたことあったけど、認知行動療法が使えたのか……。

 

で、この実験は、18歳以上のReplikaユーザー1006名を対象にしたもので、みんなのメンタルヘルスと孤独感を定量的に評価しつつ、AIとの会話が参加者の幸福感に影響を与えたのかを調べたらしい。その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 利用者の90%が孤独を経験していたが、Replikaを使うことで、「会話相手がいることによるなぐさめ」「他者との交流によるメンタルの改善」「前向きな生活の変化」「死にたい気持ちの低下」などのメリットを得ることができていた。

 

  • すべての参加者のうち、30人が「自死を思いとどまったのはAIのおかげだ」答えた。

 

  • メンタルヘルスが悪いグループは「AIのほうがより人間的で知的だ」という印象を持っていた。

 

という感じだったそうです。こうして見ると、AIとの会話でも、人間と変わらぬ慰めを得られるのかもしれませんな。特に認知行動療法ってのは、AIでも再現しやすいメソッドが多いので、この考え方を取り入れたAIアプリがどんどん出てきそうな予感。

 

 

 

メンタルに最も効く運動のトップ6はこれだ!

メンタルに最も効く運動のトップ6はこれだ!」ってメタ分析(R)が参考になるので、内容をチェックして起きましょう。

 

これは「メンタルと運動」については調べた218の研究を精査したもので、14,170人のデータをまとめてます。分析に含まれた研究は質が高くて、確実な知見を提供してくれているのが良いですねー。

 

その上で、果たして「どのような運動が最もメンタルを改善してくれるのか?」を調べてみたら、結果はこうなりました。メンタル改善の効果が大きかったものから並べてみましょう。

 

  • 1位:ダンス(Hedges' g -0.96)
  • 2位:ウォーキングまたはジョギング(g -0.63)
  • 3位:ヨガ(g -0.55)
  • 4位:筋力トレーニング(g -0.49)
  • 5位:有酸素運動(g -0.43)
  • 6位:太極拳または気功(g -0.42)

 

ってことで、このあたりは中等度の効果でメンタルが改善してまして、かなり信頼がおけるんじゃないでしょうか。さらに細かく見ると、運動とSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬、g -0.55)の併用や、有酸素運動と心理療法の併用(g -0.54)にも中等度の効果がみられてますね。

 

ここでは、現実に効果を実感できるレベルの閾値を「g -0.20」としてますんで、上にあげた運動は、どれもメンタルに良い効果があると考えられましょう。

 

比較用の数字も挙げておくと、認知行動療法を単独で使ったときの効果は「g -0.55」、SSRIは「g -0.26」ということなので、いかに運動のメリットがすばらしいかがわかるのではないでしょうか。ちなみに、筋トレとヨガは脱落する確率が低って報告も出てるので、運動慣れしていない人は、ここからスタートするのも良さそうっすね。

 

まぁ、今回の調査で1位になった「ダンス」については、全体のなかではかなりテストの数が少ない(5件)ので、そこまで期待しないほうがいいかもしれません。全体のデータのバランスで言うと、やっぱりウォーキングかジョギングが優秀そうだなーって印象ですよね。

 

 

人間関係で幸福になるにも「多様性」が大事

ハーバード大学の研究によると、「人生の幸せに必要なのは金や名声ではなく人間関係だ!」ってのが結論なわけですが、新たな研究(R)は、「人間関係は量と質だけではなく多様性も重要だ!」って結論になってておもしろかったです。

 

これは8カ国の5万人以上を対象としたデータを分析したもので、「シャノン多様度指数」を応用して、みんなが「どれぐらい多様な人間関係を築いているか?」ってポイントをチェック。みんながどんな相手と人間関係を築いているのかって情報と、健康状態や生活の質を比べたんだそうな。

 

その結果がどうだったかと言いますと、

 

  • 人間関係の多様性が大きい人(つまり、いろんな価値観、いろんな人種、いろんなコミュニティの人とのつきあいがある人)ほど、幸福度が高かった。

 

  • 他の3つのデータセット(WHOが世界で採取したデータ、フランスのモバイルアプリユーザーのデータ、アメリカ人のアンケートデータ)でも、同様の結果が得られた。

 

  • 人間関係の多様性は、「結婚」よりも人生の幸福感を強く予想した。

 

ということで、人間関係の改善で幸福度を高めるためには、多様性もめっちゃ重要なのではないか、と。研究チームいわく、

 

私たちの時間は限られており、対人コミュニケーションの量を増やすことは困難だ。しかし、対人関係においてより多様なポートフォリオを目指せば、時間の多寡には関係なく、幸福度を上げることができる。

 

とのことで、人間関係を改善したいときは、多様性にもリソースを注いでみると良いかもしれませんね。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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