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今週の小ネタ:小説で頭が良くなる説、運動のモチベーションを高める心理トリック、魚で頭が良くなる理由

 


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

小説をよく読む人は認知能力が高い説

「小説ってどんなメリットがあるの?ただの気晴らしなの?」みたいな議論は昔からあって、まだ科学の世界でも議論が続いている状態だったりします。まぁ私はただの小説好きなので、メリットがあろうがなかろうがどうでも良いとこですが、このたび「小説のメリット」を深掘りしたメタ分析(R)が出ていたので、内容をチェックしておきましょう。

 

まずは研究チームの言葉を引用しておくと、

 

過去数十年にわたり、さまざまな分野の学者たちが、小説は認知機能を改善すると主張してきた。しかし、この仮説に、客観的かつ定量的な基板があるかどうかはまだわかっていない。

 

ってことで、多くの専門家が「小説は脳に良い!」と言ってきたけど、それは本当なのかってところを調べたわけです。小説のメリットに関するメタ分析は過去に少ないので、非常に貴重な知見になってるんじゃないかと。

 

では、研究の内容を概観してみましょうー。

 

 

  • 最初のメタ分析では、小説の認知効果にフォーカス。この分析には70の実験が含まれ、小説を読むように割り当てられた5,640人と、さまざまな対照条件に置かれた5,532人の違いをチェックした。

    その結果、小説を読むことは、わずかながら認知機能に有意なプラスの効果をもたらしていた。認知機能のなかでも、共感と心の理論(他者の感情や視点を理解する能力)を伸ばす効果が最も顕著だった。

    また、小説の認知メリットは、物語性の高い作品を読んだときに最も大きくなる傾向も見られた。 

 

 

  • 次のメタ分析では、普段から小説を読む人の認知能力を調査。この分析には114の研究が含まれ、合計30,503人が参加している。

    その結果、普段から小説をたくさん読む人ほど、認知能力が高い傾向が一貫して認められた。この相関は、特に言語能力と一般的認知能力(推論、抽象的思考、問題解決などの能力)において強かった。

 

 

ってことで、ラボ実験においても、観察研究においても、「小説はすばらしいよねー」って結論になってますね。これは小説好きにはうれしい結果っすな。

 

まぁ、本当であれば、小説の読解と認知の変化を経時的に調べる研究ができればいいんでしょうが、わりとお金がかかっちゃうので難しいところでしょう。今のところは、自分が楽しめる物語をガンガン読んでいくのが良さそうであります。

 

 

 

運動のモチベーションを高めるシンプル心理トリック

運動をする気が出ない!って時に使える簡単なテクニックが出ておりました(R)。

 

こちらはニューハンプシャー大学などの研究で、ざっくりした実験デザインをまとめておくと、

 

  1. 参加者を3つのグループに分けて、1つのグループには運動に関する過去のポジティブな記憶を思い起こしてもらい、他のグループにはネガティブな記憶を思い出してもらう。最後のグループには、なにも指示を出さない。

  2. その後で、みんなの運動のモチベーションが高まったかどうかをチェックする。

 

みたいになります。「運動に関する過去のポジティブな記憶」ってのは、自分にとってポジティブであればどんなものでも良くて、例えば以下のような感じです。

 

  • 親友と定期的に行っていた早朝ランニングで、会話を楽しめた。

  • 初めてのマラソンを完走した瞬間。

  • 地元のチャリティーランに参加し、みんなと一体感を味わった。

  • 前回の筋トレでいつもより良い記録が出た。

 

こんな感じで、過去の大きな達成でもいいし、前回の筋トレのちょっとした変化でもいいし、自分がポジティブに感じる記憶ならなんでもOKです。

 

一方で、「運動に関する過去のネガティブな記憶」ってのは、以下のようになります。

 

  • サッカーの試合での大事なシュートを外した。
  • 筋トレの最中にケガをした。

  • ランニングの記録が前回よりも悪かった。

 

こちらも、出来事の大小を問わず、とにかく自分にとって嫌な体験を思い起こさせたわけです。

 

で、結果は、こんな感じになりました。

 

  • ポジティブな運動の思い出を思い浮かべた人ほど、将来に運動をする可能性が高い傾向があった。

  • ネガティブな運動に思い出を思い浮かべた人も、何もしなかった人よりは運動のモチベーションが高まった。

 

ってことで、ポジティブだろうがネガティブだろうが、過去の運動を思い出した人は、みんな運動のモチベーションが高まったらしい。ネガティブな記憶でもやる気が出るってのはおもしろいもんですね(ポジティブのほうがモチベーションは上がるみたいですが)。

 

研究チームいわく、

 

これらの結果は、自伝的な記憶の活性化が、個人に健康的なライフスタイルのモチベーションを高める事実を示している。

 

とのこと。とにかく、「自分は過去に運動をした」って事実を思い起こすのが大事で、それによって「わたしは運動できる人間なのだ」って気持ちを刺激できるらしい。これは手軽で良いライフハックですね。

 

 

 

魚で頭が良くなる理由とは?

週に一度の魚で脳がデカくなる!みたいなデータ(R)が出ておりました。

 

これはピッツバーグ大学の調査で、260人の男女を脳スキャンし、これを食事内容と比べて「脳がデカい人の食事とはどのようなものか?」をチェックしたんだそうな。その結果はわりとすごくて、

 

  • サバやサンマ、イワシ、マグロなどの青魚を週に1回食べている人は記憶力や認知機能が高い
  • 調理法としては、焼き網またはフライパンで調理して食べた人は、魚を全く食べていなかった人に比べて記憶を司る部位の脳の体積が平均で4.3%、認知を司る部位の体積が14%大きかった
  • 魚のフライを食べても脳の健康は改善しなかった

 

ってことで、あらためて魚のすばらしさがわかる結果になってますね。焼きを食べることで、加齢による灰白質の減少から脳を守ることができるわけですな。

 

で、魚のフライに効果が見られなかったことを考えると、いかにも魚の脂が関係していそうですが、研究チームはこんなことを言っておられます。

 

揚げ物の高熱は脂肪酸を破壊するため、焼き魚のほうがオメガ3が多く含まれている。

しかし、体内のオメガ3レベルと脳の良い変化との間に関係は見つからなかった。これは、魚を食べる人は食べない人に比べて高学歴である傾向があり、定期的に魚を食べられるような人は、一般的により健康的で豊かなライフスタイルを送っているのが原因なのかもしれない。

 

ってことで、オメガ3脂肪酸が脳に良いのではなく、魚をしっかり食べられるような人は、健康的なライフスタイルを送っている可能性があるんじゃないか、と。んー、体内のオメガ3レベルと脳機能に関係がないってのは、ちょっと意外ですね。

 

研究チームの仮説が正しいかどうかはまだ不明ですが、週に1〜2回ずつ焼き魚を食べるぐらいなら簡単なので、とりあえず習慣にしてみるのはアリじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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