うつ病に最も効くセラピーはどれ?のメタ分析
うつ病に最も効くセラピーはどれ?って疑問を調べたデータ(R)がタメになるのでメモしときます。
うつ病に効果がある!と言われる手法はたくさんあって、CBTやらACTといった手法を、ブログでもブロマガでも大量に紹介してきたわけです。心理セラピーには無数の流派があるんで、そのなかでどれが良いのかってのは、めっちゃ気になるところじゃないでしょうか。
というわけで、この研究では、うつ病に対する実績がある15の療法について、385の療法/対照比較を用いたメタ分析レビューを実施。 その結果、すべてのセラピーはうつ病の解決に意味があるんだけど、それぞれに効果量(Hedges’ g )が異なったと報告しておられます。
まぁ全体的にバイアスのリスクが高いので、今回のレビューをもって「うつ病には〇〇がベストだ!」とは言えないんだけど、自分に適したセラピーを選ぶ際の、超大まかな指針にはなるんじゃないでしょうか。
それでは、研究であきらかになった、各セラピーの効果量を見てみましょうー。ざっくりと、効果量の数字が大きなものほど「うつ病への効果も大きいかも?」ぐらいに考えていただければ幸いです。
- 3つの認知行動療法(g = 0.73):不適応な思考や行動を修正することを目的としたセラピー。
- アーロン・T・ベック「新版 うつ病の認知療法 」(g = 0.95)
- うつ病の予防プログラム(R)(g = 0.38)
- デビッド・D.バーンズ 「いやな気分よ、さようなら」 (g = 0.97)
- 2つの行動活性化療法(g = 1.05):行動活性化療法は、クライエントがやりがいのある活動を特定し、それに参加するよう指導するセラピー。
- 自分が楽しめる活動をスケジューリングし、気分と活動の関係をモニタリングして記録につけ、より楽しい活動に毎日参加する(g = 1.04)
- 文脈的行動活性化は、個人の価値観に基づいた意味のある活動に積極的に参加し、回避行動を減らすことで、気分を改善しうつ病を克服するアプローチ。最近はマインドフルネスも使われる(g = 1.06)
- 3つの問題解決療法(g = 0.75):現実的で具体的な問題解決スキルを教え、問題への対処能力を高めることで心理的な困難を軽減するアプローチ。
- 短期問題解決療法は、9回以下のセッションで構成される(g = 0.81)
- 拡張問題解決療法は、問題解決に加えて、不適応な考えや態度を変えることに焦点を当てる(g = 1.07)
- 自己検討療法は、主に自分の目標に関連した問題を解決し、自分のコントロールの及ばないことを受け入れることを学ぶことに焦点を当てる(g = 0.42)
- 2つの第3世代の認知行動療法(g=0.85):第1世代は通常の行動療法、第2世代は認知療法、第3世代は人生の目標と経験を受け入れることを強調するセラピー。
- ACT(アクセプタンス・アンド・コミットメント・セラピー)は、スティーブン・C・ヘイズによって開発されたもので、心理的な柔軟性を促進し、回避行動を減らし、自分の価値観やコミットメントに基づいた生活を送ることを奨励している(g = 0.74)
- マインドフルネス系の認知行動療法は、認知行動療法にマインドフルネスと瞑想の実践を組み合わせたもの(g = 0.71)
- 2つの対人関係心理療法(g = 0.60):対人関係心理療法は、愛着のパターンと人間関係の問題を強調し、わりと短期間で終わるセラピー。
- フルの対人関係療法は、完全版のマニュアルを使用し、より長めに行われる(g = 0.57)
- 短期の対人関係療法は10回以下のセッションからなる(g = 0.64)
- 心理動力学的療法(g = 0.39):心理力動的療法は、私たちが無意識の葛藤に気づくのをサポートするもので、その多くは過去に原因がある。 そのため、セラピーでは、子ども時代の経験や、重要な他者、特に両親との過去の関係を探ることに、かなりの時間が費やされる。
- 非指示的支持療法(g = 0.58):自発的な感情表現と自己洞察を促すために、セラピストが指示や解釈を避けて共感的なサポートを提供するアプローチ 。
- ライフ・レビュー療法(g = 1.10):記憶を探り、それを通して作業することで、過去のトラウマを解決し、人生の物語を再構築していくアプローチ。
ということで、メタ分析の結果を見てますと、「わりとどんなセラピーでも、うつ病に対して効果がありそうだよなー」って印象ですね(効果の大きさは中程度から大)。
このなかから、最も効果量が大きなものを選んでみるのも良いですが、こうなってくるともはや趣味の世界と言いますか、自分の感覚や考え方にしっくりくるものを選んだほうが実りは多そうな気もしてきますな。
私の場合は、わりと仏教が好きなので、そこらへんと親和性があるACTとかが好きですけど、とにかくいろいろ動いてみるのが好きなら行動活性化を使うのがよさそうだし、頭のなかで思考や感情を取り扱うのがうまいなら認知行動療法が向いてるかもだし……って感じで、自分の特性と相談しながら決めるのが良さそうっすね。