牛乳で炎症は起きるのか?健康とリスクを再検証
こんなご質問をいただきました。
あるお医者さんのYouTubeで、牛乳は炎症を起こすからよくないと説明されていました。牛乳には、人が消化できないα–カゼインが多く含まれているので、腸を傷つけて炎症を起こす可能性があるのだそうです。やはり牛乳は体に悪いのでしょうか?
ということで、健康に関するトピックのなかでも、特に賛否両論が多い「牛乳は体に良いのか?悪いのか?」ってご質問です。牛乳については、このブログでも過去に何度も書いてますが、いまも決着がついていない話題ではありますね。
で、「牛乳は炎症のもとになるのか?」ってのも、近ごろ健康好きの間でよく言われるようになった話題のひとつ。牛乳は体内で消化しづらい成分が多く、そのせいで体が炎症を起こすのだって説ですね。「最高の体調」にも書いたとおり、慢性的で低レベルな炎症は、認知症、がん、心臓病のリスクを高め、寿命を縮める可能性がありますんで、これが事実なら大変なことなわけです。
そこで、この問題について、まず大きな結論から申し上げますと、
- 少なくとも直接的には、乳製品が慢性的に腸の炎症を引き起こすことはないでしょう。
みたいになります。牛乳を飲むことで血中の炎症マーカーが上昇するって報告はないので、おそらく心配しなくても良いのではないかと。
たとえば、牛乳に関する52のデータをまとめた2017年のレビュー(R)によると、乳製品は慢性炎症について特になんの影響ももたらさないか、逆にちょっとだけ炎症を下げる働きがあるかもしれないと報告しております。特にヨーグルトなどの発酵系の乳製品は、どっちかと言えば炎症を下げる方向に働くそうな。やっぱ発酵は偉大。
ただし、上にも書いたとおり、これは乳製品が“直接的”に害をおよぼすことはないって話でして、生まれつき乳製品に弱い人の場合は、その限りじゃないんで注意してください。世の中には、牛乳に合わない体質を持った人が少なからずいまして、その数は、全人口の70%近いともされております。かなり多くの人は、牛乳に入ってる乳糖を小腸がすべて吸収できない可能性があるわけっすね。
生まれつき乳糖を吸収するのが苦手な人は、場合によっては急性腸炎が起きちゃうかもしれないので、そこは自分の体と相談したいところ。 体が乳糖を吸収できないと、腹部膨満感、下痢、ガスなどの腸の問題に悩まされる可能性は十分あるでしょう。消化されずに大腸で発酵した乳糖は、体内で不快感や炎症を引き起こし、消化器系が敏感な人ほど問題が長引くかもしれません。
とはいえ、こういった体質が、体内に慢性的な炎症を引き起こすのかと言われれば、それはまた別の話。今のところ、乳糖が吸収できない問題と慢性の炎症性腸疾患との間に強い相関を示したデータ(R)はないので、そこはあまりビビらなくても良いような気がしております。
もちろん、なかには(成人の約2%ぐらい)は、ガチの牛乳アレルギーを持っている方もおりまして、この場合は体が牛乳タンパク質を“敵”だと認識し、アレルギー反応が出てしまった結果として、じんましんや呼吸困難が起こり、最悪の場合は死に至ることさえあります。これはシャレにならない問題なので、くれぐれも注意してくださいませ。
ってことで、以上の話をふまえたうえで、牛乳アレルギーや激しめの不耐症でない限り、個人的には「普通に牛乳を飲めば良いのでは?」と考えております。というか、乳製品ってのは栄養たっぷりな食品なので、問題が起きないようであれば、普通にいつもの食生活の一部にしていただいても良いでしょう。そこらへんについては、過去に「なんだかんだで牛乳は健康効果も高いよなぁ、という話」にも書いてますんで、合わせて参考にしていただければ。
ちなみに、上述の系統的レビューを見てみると、乳製品の健康メリットをガッツリ引き出す方法としては、
- 発酵乳製品を中心に食べる:ヨーグルト、バターミルク、チーズ、ケフィアといった発酵系の乳製品には、プロバイオティクスがめっちゃ含まれているので、健康面ではかなり良好。中でも、ストレプトコッカス、 ラクトコッカス、 ビフィズス菌などは、抗炎症作用を持つという研究もあるので、腸の炎症を抑えてくれる可能性がある。
- コーヒーと一緒に飲む:一部の研究(R)では、コーヒーと一緒に乳製品を摂ると、抗炎症効果が高まる可能性が示唆されている。これは、コーヒーに含まれるポリフェノールが、乳製品に含まれるアミノ酸と組み合わさることで、相乗効果が発揮されるのだと考えられる。つまり、コーヒーにクリーマーやミルクを入れて飲むと、体内の炎症が鎮まる可能性がある。
といったあたりを守ると良さそうであります。こちらも合わせてお試しをー。