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生きがいとは何か?現代人に必要な人生の目的とその見つけ方


拙著「YOUR TIME ユア・タイム」では、時間と仲良くやるためのテクニックとして、「生きがいチャート」ってトレーニング法を紹介しております。名前のとおり、日本に古くからある「生きがい」って概念を使った手法で、これにより自分の立ち位置を明確に定められて、最終的には時間との付き合い方がうまくなりますよーって話です。

 

その詳しいメカニズムは「YOUR TIME ユア・タイム」をご覧いただければ幸いですが、いずれにせよ近年は国内外のアカデミズムで「生きがい」が注目されているのは間違いなかったりします。事実、近年は「生きがい」に関する調査がめっちゃ増えてまして、「YOUR TIME ユア・タイム」でも紹介しきれなかった良いデータがいろいろ出てるんですよ。

 

ってことで今回は、近年にあきらかになった「生きがい」の研究をチェックしておきましょう。ちなみに、ここで言う「生きがい」ってのは、だいたいの調査の定義によれば、

 

  • 「自分の人生には意義があるなぁ」という感覚

 

ぐらいの意味になります。人間は「意義のある人生を確立したい!」という強い欲求を生まれつき持っており、それゆえに私たちのメンタルに多大な影響をおよぼすんだってのが、おおよその研究の合意じゃないでしょうか。「生きがい」は理論じゃなくて生き方なので、精神的・肉体的な健康に大きな影響を与えるんですね。

 

では、近年の研究を見てみましょうー。

 

  • 「生きがい」は長生きに良い:43,391人の日本人を対象にした7年間の長期研究(R)では、被験者に「あなたは生きがいを感じますか?」と尋ね、その回答と死亡リスクの関係を計算した。その結果、生きがいを感じていない被験者は、生きがいを感じている被験者に比べて、全死亡のリスクが有意に高かった。

    その死因としては心臓まわりの病気と、病気以外の原因(自殺、他殺、事故など)がメインで、がんによる死亡リスクには有意な関連は見られなかった。これは、生きがいを持つことで、生活の目的や意味を感じやすくなり、ストレスの軽減につながるのが原因だと考えられる。また、生きがいがある人は社会的なサポートも得られやすくなるので、これによって病気以外の原因からも守られやすくなるのかもしれない。

    ちなみに、30,155人の男性と43,117人の女性(40~79歳)を対象にした生活習慣アンケート(R)でも、 12.5年間の追跡調査で、生きがいを持つ男性は全死亡リスクが15%低く、女性も7%低かったと報告されている。

 

  • 「生きがい」は不安を減らす:生きがいの効果を分析した日本の総説(R)によると、人間の前頭葉は感情、野心、動機に関連しており、生きがいはこの脳の機能と結びついている。それぐらい「生きがい」は人間の根本に根づいたものだと言える。

    また、私たちの不安は、セロトニンやドーパミンの不均衡に関係しており、生きがいを持つことで、これらの神経伝達物質のバランスが改善され、不安が軽減される可能性がある。呼吸のトレーニングや漸進的筋弛緩法は一時的な効果しかない可能性があるが、「生きがい」を育む行為には、不安を根本的に減少させる手段として有望かもしれない。

    この文献は、あくまで吃音者の不安にフォーカスしたものだが、不安のメカニズムを考えれば、それ以外の人たちにも同じことが言えるだろうと思われる。

 

 

  • 「生きがい」は自律性を増やす:ここで言う自律性ってのは、個人の信念、価値観、アイデンティティ、人生の選択を、自分の力で積極的に行っていく能力を指しております。外部からの影響で自分の生き方を決めるんじゃなくて、自分で自分のことを決め、行動に対して責任を持つ能力とも言えますね。

    672人の日本の大学生を対象に行われたオンライン調査(R)では、生きがいを感じている人々は、外部の期待や社会的な圧力に屈することなく、自らの価値に基づいて行動し、持続的な満足感を得る傾向にあった。このメンタリティが育つことで、被験者は日常生活をさらに「生きがいのある、活力に満ちたもの」と感じていた。

 

ということで、これらを見るだけでも、「やっぱ生きがいって重要なんだなぁ……」って気になるわけです。これらはあくまで大量の研究の一部なので、類似の調査は他にも山ほどあるんだとお考えください。

 

で、「生きがい」の力を活用するための方法は「YOUR TIME ユア・タイム」に詳しいので、そちらを参照していただければ幸いですが、ここでは上の研究に共通する注意ポイントをいくつかピックアップしておきます。

 

  • 「生きがい」はお金とは関係ない: もちろん、快適な生活を送るためには十分なお金が必要なんだけど、経済的な成功は有意義な人生を送る方法としては全く無関係なので、ヘタに追求しようとすると死ぬ。

 

  • 特別な体験を求めない:生きがいは特殊な体験の中ではなく、日々の経験や交流の中に意味を見出すことで見つかるケースが多い。 そのため、新奇性や特殊性は捨てて、日常を掘り下げるほうが大事。

 

  • 人間関係は超大事:日常を掘り下げる中でも、特に友人、家族、同僚、コミュニティの中には、生きがいの種が眠っていることが多い。そのため、自分の身の回りにある人間関係を深掘りして、「この人たちに自分がどんな影響を与えられるか?」って質問に集中してみるとよさそう。

 

これらの3つは、割といろんな文献に共通してるかと思いますんで、気にしておくと良いんじゃないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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