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「平均寿命を超えて元気で暮らすための方法」を経済学者が語った本を読んだ話

 


セカンド・フィフティ(The Second Fifty)』って本を読みました。著者のデブラ・ホイットマン先生は経済学者で、AARPのチーフ・パブリック・ポリシー・オフィサーとして、高齢化問題の問題に取り組んでいる専門家なんだそうな。

 

本書も高齢化が進む社会が抱える問題についてまとめたもので、個人が年を取っても元気でいられる方法だけでなく、社会として高齢化に挑むにはどうすればいいのか?みたいな話も展開されていて楽しゅうございました。

 

ということで、いつもどおり本書から勉強になったポイントを見てみましょうー。

 

 

  • アメリカ人の平均寿命は76年で、私たちの寿命は、同じぐらいの経済水準の国々や多くの発展途上国の国民よりも短く、健康状態も劣っている。しかし、よくデータを見ると、アメリカでは居住する地域によって寿命が大きく左右されており、最も平均寿命が長いコロラド州と、最も平均寿命が短いサウスダコタ州を比べると、平均寿命に20年の差がある。また、ウェストバージニア州の住民は、ウィスコンシン州の住民よりも20年早く慢性疾患を発症する傾向がある。

 

 

  • こうした寿命の格差は、教育、収入、手頃な医療へのアクセスといった健康の社会的要因と相関している。計算すると、社会的な要因は、私たちの寿命の60パーセントを占めており、残りの40パーセントは遺伝と医療の割合がほぼ半々である。

 

 

  • 当然だが、収入が多い人ほど長生きする。データでは、富裕層の上位1%に属する男性は、下位1%に属する男性よりも15年長生きしている。また、人種による格差もあり、アジア系アメリカ人はネイティブアメリカンよりも20年近く長生きしている。

 

 

  • こちらも当然だが、健康と長寿を促進する政策を行っている州ほど寿命が長い。この政策には、たばこ税の増税のような法律の変更から、最低賃金や有給家族休暇に関する法律も含まれる。このように、私たちは、すべての人々がより健康で長生きできる環境を作り出す必要がある。

 

 

  • 健康を改善するには、当たり前のことに取り組むことが重要である。すなわち、適切な食事、運動、健康的な体重、禁煙、禁酒である。これら5つの習慣のうち4つを実践している人は、がんや心臓病などの重大な疾患のない期間が、平均で8~10年延びるという分析結果が出ている。

 

 

  • しかし、上記の習慣と同じぐらい重要なのが「考え方」である。ハーバード大学の疫学者ベッカ・レヴィーは、「歳をとること」に対して前向きな人は、否定的な考え方を持つ人々よりも7年以上も長生きしていると報告している。前向きな考え方を持つ人々は脳卒中や心臓発作が少なく、身体機能も高く、病気や怪我からの回復も早い。

 

 

  • さらに、健康増進のもう一つの大きな要素は「人間関係」である。良好な人間関係は、免疫機能の向上、血圧の低下、炎症レベルの低下につながる。一方で、長期間にわたる孤独は、1日に15本のタバコを吸うのと同じ程度の影響を及ぼすことが示されており、ハーバード大学成人発達研究の研究によれば、80代の人々の心身の健康を最もよく予測する要素は、コレステロール値や血圧ではなく、50代に良好な人間関係を築いていたかどうかだった。

 

 

  • 現代では、認知症の発症リスクが過大に言われる傾向がある。アンケートでも、75歳から79歳の人々のうち、軽度の認知障害を持つ人はわずか15パーセントであるのに対し、約半数の人が「おそらく自分も認知症になるだろう」と考えていることが示されている。しかし、実際には、認知症リスクは過去10年間で低下を続けており、その理由は栄養、医療、教育、生活様式の改善によるものである。

 

 

  • ランセットに掲載された研究では、認知症の約40パーセントを占める12のリスク因子を特定。その多くは個人で取り組めるものが多く、上に挙げた5つの健康習慣を実践すれば、認知症リスクを最大3分の1まで減らすことができる。

    もちろん、睡眠も重要で、1日7〜8時間眠る人は、5〜6時間しか眠らない人に比べて、認知症を発症する可能性が大幅に低くなる。また、人間関係を大切にしたり、社会的に活発に活動したりといった行為にもリスクの低減作用がある。

    また、歳を取るにつれて、私たちは、意味を理解する力や、アイデア間の関連性、建設的に考える能力といった能力が向上する。50歳を過ぎても人間の脳は変化をし続け、その変化のすべてが劣化につながるわけではない。

 

 

  • かつて、先進国における典型的な人生とは、教育を受け、数十年間働き、退職するというものだった。しかし、今日では状況が異なり、スキルを再習得する機会がなく、自分が学んだことが時代遅れになっているにもかかわらず、そのまま高齢になっても働き続けねばならない者が多い。退職後も働き続けることは、人生の新たな標準になりつつある。

 

 

  • そのため、現代では、いよいよ高齢者の労働参加を支援する必要がある。近年の研究によれば、いろいろな世代の労働力を抱える企業は、若年と高齢の労働者の双方において、革新性と生産性が向上しやすくなる傾向が見られた。

    また、高齢の労働者は経済成長にも貢献しており、調査によると、エイジズムにより高齢者を労働から取り除くことで1年で8500億ドルもの損失が生じていることが明らかになっている。

 

 

  • 以上のことから、高齢期を支える制度は、早急に改善が必要だと考えられる。「高齢化対策プラン」を考える際は、病気や障害を抱える高齢者に対しては、手頃な価格で長期介護を受けられるようにし、同時に、その他の全員が、可能な限り健康でいられるよう支援しなければならない。

    現代人の多くは、往々にして「高齢者を支援すると若者が割を食う!」という考え方をすることが多い。しかし、高齢者にとってより良い社会を築くことは、将来の世代のための基盤作りとなるし、社会全体の生産性がアップする。

 

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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