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見えてる世界は本物じゃない!? ”知覚のフィルター”を知っておくと良い選択ができるぞーという本の話

 


なぜ世界はそう見えるのか」って本を読んだら、いろいろと面白かったのでメモっておきます。本書の中身は、「知覚の歪み」について心理学者デニス・プロフィット先生が掘り下げたもので、「私たちは視覚を頼りに世界を理解することが多いけど、実際には、私たちが見ているものは、自分の身体的状態、感情、社会的背景などでかなり歪められているよ−」って主張を展開しておられます。

 

要するに、私たちは世界をそのまま「見る」のではなく、自分自身のフィルターを通して「見ている」のだ!って話でして、この事実を理解しておくと、日常生活や仕事で大事なことを決めるにあたって役立つんじゃないでしょうか。

 

では、「知覚の歪み」が私たちの生活にどのように影響を与えるのかってことで、重要なポイントを8つにまとめてみましょうー。

 

 

ポイント 1. エネルギーと身体能力が現実をねじまげる

  • 私たちの身体の状態は、物理的な世界の見え方に影響を与える。たとえば、疲れを感じているときや、重いリュックを背負っているときには、目の前の坂が実際よりも急に見えたりする。これは「身体の状態が知覚を変える現象」と呼ばれる。

 

  • 同じ現象はスポーツの世界でも見られ、ゴルフのパットが得意な選手は、カップの穴が大きく見えるという報告がある。また、調子が良い野球選手は、飛んでくるボールがより大きく見えることを示すデータもある。これらは単なる視覚的な錯覚ではなく、身体的な能力や状態が直接的に知覚に影響を与えている例だと言える。

 

  • プロフィット先生は、「私たちが周囲の環境をどう見るかは、単に目で見るだけではなく、私たちの身体的能力や限界に基づいている」と説明している。特に自分が疲れているときやストレスを感じているときには現実が歪みやすいので、そこらへんは知っておくのが吉。

 

 

ポイント2. 身体感覚が鋭いと意思決定の精度が上がる

  • 私たちが自分の身体の内側をどれだけ感じ取れるかが、仕事や人生の重要な決断に影響を与えるという研究もある。たとえば、ヘッジファンドのマネージャーを対象に行われた実験では、心拍数を正確に感じ取れる能力が高い人ほど、株式取引で成功する傾向があった。これは、身体感覚を正確に認識することで、ストレスを効果的に管理し、冷静な判断を下せるためだと考えられている。

 

  • 同じような研究はいくつもあるため、身体感覚を研ぎ澄ますことによって、ストレスフルな環境での成功に繋がる可能性が増えるかもしれない。つまり、日常生活や仕事の中で、自分の身体が発する信号を正確に読み取り、それに応じて行動することが重要だと言える。

 

  • ただし、この感覚が過剰な自信と結びつくと、逆効果になることも少なくないので注意されたい。本人は自信満々なのに、心拍数を計測する際の正確性が一低い場合は、いざ本番になると逆に不安感が高まり、パフォーマンスが低下するという結果も報告されている。

 

 

ポイント3. 空腹で誘惑に弱くなる

  • 空腹時には判断力が低下し、目の前の誘惑に負けやすくさせる。たとえば、スーパーで空腹時に買い物をすると、余計なものを買ってしまうことがあるのは誰もが経験することだが、空腹の影響はそれだけではない。たとえば、ある実験では、砂糖を含む飲料を飲んだ参加者は、誘惑を我慢する能力がアップし、短期的な利益よりも長期的な利益を選ぶ傾向が強まったと報告されている。この現象は、脳が意思決定に必要なエネルギーを補給することで、より冷静で合理的な判断ができるようになるためだと考えられる。

 

  • 裁判官の判決にも、エネルギーレベルが影響を与えることが示されている。具体的には、食事前の時間帯に下された判決は厳しい傾向があり、食後の判決はより寛大になるというデータがある。これは、食事によってエネルギーが補充されることで、複雑な判断を下す余裕が生まれるためだと考えられる。

 

 

ポイント4. 読みやすい情報は「正しい」と思いやすい

  • 多くの人は、文字の読みやすさがその内容の真実性と結びついているかのように錯覚しやすい。たとえば、簡単に読めるフォントで書かれた文章ほど、より「正しい」と思われる傾向がある。この現象は、「認知的流暢性」と呼ばれ、情報の処理がスムーズであればあるほど、その情報が信頼できると感じる心理的メカニズムに基づいている。

 

  • この傾向は、フェイクニュースや広告において悪用されることがあり、例えばリズミカルなフレーズや目を引くデザインは、真実性を高めるわけではないが、私たちの無意識に影響を与えて信頼感を抱かせる。これを防ぐには、情報の見た目ではなく、その内容の裏付けに注目する意識を持つしかない。

 

 

ポイント 5. 感情が政治的な見解に影響を与える

  • 感情は、私たちの政治的な意見や判断に影響を与える。研究によれば、汚いものに対して強い嫌悪感を抱く人は、政治的に保守的な立場を取る傾向があることが分かっている。例えば、ゴミ箱の中の腐った食べ物や、不潔な環境を想像した際に嫌悪感を抱きやすい人ほど、性的自由や移民政策に対する態度が保守的になることが多い。

 

  • 嫌悪感のような感情は、脳の大脳辺縁系から出てくるので、多くの場合、意識下では意識されないが、私たちの反応や評価を誘導し、公平性を失わせるのだと考えられる。

 

 

ポイント 6. ネガティブな感情があると、難しいことがより難しそうに見える

  • 気分が落ち込んでいるときには、目の前のタスクや目標が、いつもより困難に感じられることがある。実験によれば、悲しい音楽を聴いているときには、目の前の坂が実際よりも急に見えやすくなる。これは、感情が視覚や認知に直接影響を与えることを示している。

 

  • 逆に言えば、ポジティブな感情を育むことができれば、困難に対処する能力が高まる可能性がある。たとえば、リラクゼーションや瞑想、楽しい体験を積極的に取り入れる、などである。

 

 

ポイント 7. 他人の存在が困難を軽くする

  • 社会的なつながりが、物理的および精神的な負担を軽減する効果があることは多くの研究で確認されている。たとえば、痛みがある時に誰かと手をつなぐと痛みが軽減されたり、重い荷物を運ぶときに他者と一緒だと負担が軽く感じられる。そのため、難しいことに挑むときは、まず社会的な関係にリソースを注いでみるとよい。

 


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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