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今週の小ネタ:座りっぱなしで寿命が縮む人と縮みにくい人、チアシード優秀かも、「脂肪肝」にオレンジが効くかも


ひとつのエントリにするほどでもないけど、なんとなく興味深い論文を紹介するコーナーです。

 

 

座りっぱなしで寿命が縮む人と縮みにくい人

「1日8時間以上座っている」って人は、現代社会では割と多め。仕事や移動時間などで座っている時間が多い現代社会では、運動不足が健康をむしばむ原因になるのはもちろん、たんに「座っている」って状態が寿命を縮める可能性があるんですよね。

 

この問題について、新しい研究(R)では、「座りすぎのリスク」を改めて掘り下げた上で、「そのリスクを和らげるにはどうするか」を調べてくれていて面白かったです。

 

これは糖尿病の患者さん6,335人(平均60歳)を対象とした前向きコホート研究で、以下のポイントに注目しております。

 

  • 座っている時間が寿命にどう影響するか?
  • 適度~強度の運動量(MVPA:Moderate to Vigorous Physical Activity)によって、座りすぎのリスクは下がるか?

 

このポイントを調べるにあたり、研究では対象者を以下の基準で分類したんですよ。

 

  1. 運動不足:週10分未満の運動しかしてない
  2. 運動不足気味:週10~149分の運動をしている
  3. アクティブ:週150分以上の運動をしている

 

研究の間、参加者には座っている時間や運動習慣をアンケートで報告してもらい、6年間の追跡調査を実施。そこでどんな事実が明らかになったのかと言いますと、

 

  • 「座っている時間」と「運動量」の組み合わせが寿命に大きく影響する。
  • 運動不足な人が1日8時間以上座っている場合、座っている時間が1日4時間未満の人と比べて、死亡リスクが73%上昇する。
  • 運動不足気味な人では、座っている時間が1日4時間未満の人と比べて、座る時間が8時間以上では死亡リスクが74%上昇
  • しかし、週に150分以上の適度な運動を行う「アクティブな人」は、座っている時間が死亡リスクにほとんど影響しない。

 

って感じです。要するに、運動習慣がある人は「座りすぎリスク」を打ち消す力を持っている可能性が高いってことですな。

 

ちなみに、糖尿病の患者さんは、一般の方よりも体内のインスリン抵抗性が高く、筋肉が血中の糖を取り込む能力が低下しているので、そのぶんだけ運動の効果も出やすいはずなのはのは頭に入れておきたいところです。

 

とはいえ、いま健康な人でも、座りっぱなしの生活は「インスリン抵抗性」を悪化させますんで、以下の対策を心がけておくと良いのは間違いないでしょう。

 

  1.  座り時間を減らす工夫:スタンディングデスクを導入しても良いし、1時間ごとに10分立つだけでも効果はある。また、通勤や電話中などに、1日5分の歩行を数回加えるだけでも座りすぎを緩和できる。

  2. 週150分の運動を目指す:週5回、1日30分の散歩ぐらいは習慣にしておきたい。それがクリアできた時は、軽いダンベルや自重運動で筋力アップも同時に狙うとよし。

 

とにかく、まずは週150分の超軽めな運動を目指しておけばリスクは下がりますんで、そこだけは押さえておきたいですねー。

 

 

 

チアシード優秀かも

「チアシード」と言えば、スーパーフードのように扱われる健康食材のひとつ。個人的には「そこまで優秀かなぁ……」って気もするわけですが、体に良い食材であるのは間違いないっすね。

 

では、そのメリットはいかほどかってことで、チアシードの効果を深掘りしたデータ(R)が出ておりました。

 

これは、チアシードに関する8つのランダム化比較試験をまとめたメタ分析でして、308人の男女(20~72歳)が対象。実験の参加者は、高血圧、肥満、2型糖尿病の方々がメインとなっております。

 

だいたいの実験では、参加者は1日25~50gのチアシード(粉末、挽いたもの、またはそのまま)を摂取。一方で、コントロール群には、ポピーシードやオートブラン、小麦ブランを摂取したり、何も摂取しない場合もあったそうな。おおそその実験期間は10~24週間なので、わりと短期的な検証になってますね。

 

メタ分析の結果を見てみると、チアシードを摂取したグループには、以下のような改善があったそうな。

 

  • 収縮期血圧(最高血圧)が平均で7.2 mmHg低下!
  • 拡張期血圧(最低血圧)が平均で6 mmHg低下!

 

ということで、どうやらチアシードは、血圧を改善する効果があるのかもしれないらしい。この血圧の低下レベルは臨床的に意味がある数値でして、例えば、最高血圧が5~10 mmHg下がると、心臓や血管にまつわる病気のリスクが大幅に下がることが知られていますからね。そう考えると、チアシードは「健康メリットがありそうだぞ!」と言えるでしょう。

 

チアシードが効く理由はよくわからんですが、普通に考えれば、

 

  • オメガ3脂肪酸が豊富なので、血管の炎症レベルを下げてくれる
  • 水溶性の食物繊維が多いので、血圧を調整してくれる
  • マグネシウムやカリウムといった血圧を調整するのに重要なミネラルも豊富

 

ってあたりになるでしょうね。ただし、面白いもんで、いくらチアシードを食べても、BMIや体脂肪率、血糖値などには変化が見られなかったそうな。つまり、チアシードってのは、特に血圧にフォーカスした効果を持つ食品なのかもですね。

 

そんなわけで、チアシードは健康食品として取り入れる価値がありそうなんで、1日25~50gを目安に、ヨーグルトやスムージーなんかに混ぜてみれば良いのではないでしょうか。

 

 

 

「脂肪肝」にオレンジが効くかも

脂肪肝にオレンジが効くかもよ!」みたいなデータ(R)が出ておりました。

 

脂肪肝というと「お酒を飲む人がなる病気じゃないの?」と思われるかもしれませんが、実際にはアルコールを飲まなくても肝臓に脂肪が溜まる「非アルコール性脂肪肝(NAFLD)」に悩む人も増えてますんで、知っておいて損のない情報ではないかと思うわけです。

 

この実験は、NAFLDと診断された62名(30~65歳)の男女を対象に実施されたもので、研究デザインは以下のようになっております。

 

  • 実験は4週間で、参加者をランダムに2つのグループに分ける

    • グループ1:1日400gの「ネヴェリーナオレンジ」を摂取
    • グループ2:1日400gの「他の非柑橘系フルーツ」を摂取

 

  • 両グループには、ビタミンCが豊富な果物(キウイ、マンゴー、いちごなど)は控えるよう指導する。

 

こんな感じで、オレンジの効果を調べてみたところ、4週間後には以下の結果が得られました。

 

  • 肝臓の脂肪が減少!:29%の被験者が「脂肪肝」の診断基準を下回るレベルまで脂肪が減少しいて、なかなか凄い。一方で、非柑橘系フルーツを食べたグループでは、このような改善は見られていない。

 

  •  GGT(肝機能指標)が低下:肝臓の健康状態を示すGGT値も、オレンジグループで改善が確認された。

 

  • 体重やBMIに変化なし:体重やウエストサイズに大きな変化は見られず、体脂肪率も両グループで同じぐらいだった。

 

文献を読む前に予想したよりも良い結果が出てまして、これが正しいのであれば、脂肪肝に悩んでいるなら試すべきレベルですね。ちなみに、オレンジを摂取したグループでは、ビタミンAやリボフラビン(ビタミンB2)など、健康に必要な栄養素のレベルも向上してまして、これも良い傾向っすね。

 

研究チームは、オレンジの効果について、こんなメカニズムを推定しておられます。

 

  • 抗酸化作用:ビタミンCが体内の炎症や酸化ストレスを軽減し、肝臓の負担が減った。
  • 代謝改善:オレンジに含まれる成分が脂質や糖の代謝を促進し、肝臓への脂肪蓄積を抑えた。

 

もちろん、この研究にも限界がありまして、例えば、対照グループが食べた具体的なフルーツの種類が明確じゃないため、どの程度のビタミンや栄養素の差があったのかは不明であります。また、研究期間が4週間ぐらいなんで、長期的な効果もよくわからんですしね。

 

といっても、軽い脂肪肝に悩んでいる方や、あるいは健康な肝臓を維持したい方は、とりあえずオレンジを試しても良いかもしれません(もちろん、重めの脂肪肝の場合は、先に病院に行ったほうが良いですが)。

 

この実験で採用された「400gのオレンジ」ってのは、だいたい中サイズ2個分ぐらい。これぐらいなら、手軽に始められてよろしいのではないでしょうか。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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