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なぜ『他人に説明する』だけで知識が飛躍的に伸びるのか?

 
 

「効果的な学習法ってなに?」って研究はめっちゃ多くあるんだけど、中でも効果が高いとされているのが「他人に説明する」って学習法であります。自分が学んだことを友人などに説明してみると、ただ一人で勉強するよりも、格段に知識が頭にたたき込まれるし、その知識を使いこなす力もつくというんですな。

 

なぜ「他人への説明」が有効な学習法なのかと言いますと、ざっくり以下のメリットを得られるからです。

 

  • 理解が深まる:他人に説明すると、自分がどの部分を理解していないかが明確になりやすい。そのため、説明している間にも知識の整理が進み、記憶にも定着しやすくなる。

 

  • 主体的な学びを促進する:「説明する」という行為は、単なる暗記や受動的な復習とは異なり、知識を自分の言葉で再構築する作業になる。このプロセスで、学習者自身が能動的に学びに関わることになる。

 

ここらへんは自分でも実感していることで、イベントなんかでお客さんに説明していると、そのテーマのことを明確に後から思い出しやすくなるんですよね。おもしろいもんです。

 

でもって、新しく出た研究(R)も「他人に説明するテクニック」に関する内容なんですが、ここで研究チームが掘り下げたポイントがどのようなものかと言いますと、

 

  • 他人に教えるのはめっちゃ効果的なのに、なんでみんな実践しないんだろう?

 

みたいな感じです。「他人に教えるテクニック」が効果的なのは間違いないし、その事実にみんなうっすら気づいているのに、なんか誰も実践まではしない傾向があるよねーって問題意識であります。

 

この研究は、まずは人々が「他人に教えるテクニック」を避ける理由を調べるところからスタート。参加者に「GPS(全地球測位システム)の仕組み」に関する動画を見てもらい、その後で、「好きな学習方法を選んでねー」と指示したんだそうな。

 

  1. 「他人に教えるつもりで説明を書く」(説明型学習法)
  2. 「動画を見直しながらメモを取る」(復習型学習法)

 

すると、ほとんどの参加者は「復習型」の学習法を選びまして、「自分の知識に自信がない!」と感じている人ほど、説明型の学習法を避けやすかったらしい。要するに、自信がない人ほど、自ら効率的な学習のチャンスを逃しているかもしれないわけっすね。

 

でもって、さらに次の実験では、説明型の学習法が「知識の自己評価」に関係なく有効かどうかを確認しまております。具体的には、さっきと同じようにGPSの仕組みに関する動画を見てもらった後、834人の参加者に、以下の手順を指示したらしい。

 

  1. 一部の参加者には、「他人に説明するつもりで書く」という課題を与える。
  2. 別の参加者には、まったく異なる内容について書かせる(コントロール群)。

 

その後、全員にGPSの仕組みに関するテストを実施してみたら、説明型の学習法を使ったグループの成績が、他のグループを大きく上回ったとのこと。この現象は、知識に自信がない人でも同じ傾向が見られたんだそうな。つまり、「他人に教えるテクニック」は、自信がある人だけでなく、自信がない人にとっても有効だってことですね。

 

ってことで、結論としては、自信がない人ほど他人に説明する学習法を避けるけど、この手法は万人に有効だから使わない手はないぞ!って結論ですね。おっしゃるとおりですなぁ。

 

では、自分の知識に自信がない人はどうすれば良いのかってことで、研究チームは、さらなる実験をもとに以下のテクニックを提唱しておられます。

 

  1. 簡単なテストで自信をつける:348人の参加者を対象に行った実験では、勉強をした後に「簡単な問題」と「難しい問題」の2つの条件に分けて内容のテストを行ったところ、簡単な問題に取り組んだグループのほうが、知識に対する自己評価が高まり、「他人に説明する学習法」を試したいモチベーションが高まったんだそうな。つまり、何かを勉強したら、まずは簡単なテストで自分の知識をチェックすると良いわけですね。


  2. 説明のメリットを頭にたたき込む:さらに別の実験では、「説明することは楽しくて効果的な学習法だ!」と参加者が知っただけで、参加者のモチベーションが上がることもわかったとのこと。また、この介入は、参加者の自己評価とは関係なく効果を発揮したそうな。

 

ってことで、これらの研究結果をふまえ、「他人に説明する学習法」を取り入れるためのポイントをまとめてみると、こんな感じになるんじゃないでしょうか。

 

  1. 成功体験を積む:学習の初期段階では、あえて簡単な問題を解いて自信をつけるのが大事。その後で、少しずつ難易度を上げることで、他人に説明する抵抗感を減らすことができる。


  2. 説明の価値を知る:「説明することで学びが深まる」という事実を知るだけでもモチベーションは上がるので、学習の前には「「他人に教えると勉強がはかどる!」のってなんでなの?」みたいなエントリを読んでみるのが吉。


  3. 自分に説明してみる:教える相手がいなくても、自分自身に説明するだけでも効果はある。ノートに書き出したり、声に出してみたりすることを習慣化してみるとよい。

 

知識への自信のなさが心理的なハードルになっている人は、ぜひこれらの対策をお試しください。説明するタイプの学習法は、知識を深めるだけでなく、自分の考えを整理し、表現する力も鍛えてくれますんで、どうぞお試しあれー。


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1976年生まれ。サイエンスジャーナリストをたしなんでおります。主な著作は「最高の体調」「科学的な適職」「不老長寿メソッド」「無(最高の状態)」など。「パレオチャンネル」(https://ch.nicovideo.jp/paleo)「パレオな商品開発室」(http://cores-ec.site/paleo/)もやってます。さらに詳しいプロフィールは、以下のリンクからどうぞ。

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