「他人に教えると勉強がはかどる!」のってなんでなの?
「効率よく勉強するには人に教えるといいよー」って話は昔からあって、これはもうほぼ間違いのない話。なんせ1982年の時点でわりと精度が高いメタ分析が出てまして(1)、「他人に教えると理解は深まるし記憶に残りやすくなるぞ!」って結論が出てたりします。なので、とりあえず最強の学習法のひとつとして覚えておくといい感じ。
ただ、まだよくわかってなかったのが、「なんで他人に教えるといいの?」って問題です。効果があるのは確実だけど、そのメカニズムまではハッキリしてなかったんですよね。
もちろんメカニズムを知らずともメリットは得られるわけですが、いっぽうで仕組みを知っておいたほうが何かと応用しやすいのも確かでしょう。ってことで、新しい実験(2)では、そこらへんを深掘りしててくれていい感じでした。
これはシンガポール国立大学の研究で、124人の学生が対象。どんな実験かというと、まずは全員に10分だけドップラー効果について勉強してもらいまして、そのあとで全体を3つのグループに分けております。
- なんのノートも見ないまま、勉強したことを5分だけ他人に教える
- あらかじめ用意されたテキストを見ながら、勉強したことを5分だけ他人に教える
- 勉強したことを5分間だけ紙に書き出す(他人には教えない)
それから1週間後に抜き打ちでテストをしたところ、以下のような結果が出ております。
- ノート見ずに他人に教えたグループは、テキストを見ながら教えたグループよりも格段に成績がよかった(これは当然ですな)
- ただし、たんに記憶したことを紙に書き出したグループも、他人に教えたグループと同じぐらい成績がよかった
つまり、「他人に教える」って学習法の効果が高いのは、人に教えるのが重要なんじゃなくて、たんに「後から頑張って思い出す」って行為が効いてるからじゃないのか?ってことですな。うーん、そうだったのか。
ご存じの方も多いでしょうが、「後から頑張って思い出す」ってタイプの学習法は「検索練習」と呼ばれてまして、当ブログでも過去に「学習法の統一王者」として紹介したことがありました。要
研究者いわく、
「他人に教える」という戦略が有効なのは、検索練習のおかげだ。すなわち、もし「他人に教える」方法を使った場合でも、そこに「学んだことを思い出す」という側面がなければ意味がない。
とのこと。結局のところ、効果が高い学習法ってのは、すべて検索練習の側面を持ってるんじゃないの?って話でして、なるほどなーみたいな感じ。実際、この実験でも、テキストを見ながら他人に教えたグループは特に効果が出てませんからねぇ。
学んだことを確実に自分のものにするためには、他人に教える前に学習する素材を内面化しておかねばならない。ノートに頼りながら他人に教えても仕方ないのだ。
ってことで、いずれにせよどんな学習法でも必ず「検索練習」の要素は入れとかねばならんのかもですね。逆に言えば「検索練習」だけ意識しとけばOKって話なんで、シンプルでいいっすね。